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雨の降らない湖
雨の降らない湖は
枯れてしまうと思うでしょ
何も知らない雲たちが
眉をひそめて去っていく
雨の降らない湖は
不思議と枯れることはない
誰かがこぼした涙が
今日もここまで流れ着く
ひとつずつだったいとしい雫が
やっと出会えて湖になった
痛さを知らない雨粒が
降ったところで濁らない
雨の降らない湖は
見える雲には見えるだろう
地上を覆う霧たちの
正体を見破れたとき
ひとつずつだった悲しい雫は
生き抜いたから湖になれた
怖さを知らない雨粒が
闘ったって無駄と言う
雨の降らない湖は
ずっとそこにあり続ける
笑う雲があるかぎり
こぼれる涙あるかぎり




