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水鏡
青い泉をのぞき込み
ムネーモシュネーの呪文を唱えれば
揺れる水面がはたと止まる
老いた顔と光るパール
銀の鏡に見えてくる
その顔はあなた
最後は会いに行けたのに
理由をつけて会わなかった
去年も届いたスプレッドが
まだ氷の中に残ってる
そのパールはあの日
喪服のあなたの首元で
乳白色に輝いていた
繰り返される悲しみの姿を
やっと見た気がした
私がなくしてきたものは
今どこを漂うのでしょう
何も知らずに手放した
すべてのものを映させて
澄んだ水面が映すのは
いつでも冷たい静かな真実
あなたは私 パールは月
涙で波紋が広がって
昨日も夢もとけてゆく
私が霧になったとき
ほんのひとときでいいから
揺れる水面を閃かせ
いとしい人を映させて




