V闘技の支配者
少しでも楽しんでいただけたら幸いです
専門用語や意味の分からない単語などがありますが、プロローグ的なやつなのでご理解ください
観客の歓声で会場が揺れる。
選手が攻撃を当てる度、そして倒され倒す度に怒号にも似た歓声が響く。
僕もそんな観客の一人だった。
目まぐるしく変化する攻防、手に汗握る闘いに胸が熱くなる。
観戦しながら食べる用に買っていたソフトクリームが溶けて、ジーパンに染みを作っていたことにも気が付かず、僕はただただ巨大ディスプレイの映像に釘付けになっていた。
「あぁーーっと、ここでチーム【シュヴァルツシュヴァイン】のサンドラ選手が脱落ぅーー!この勝負、まだまだわからないぞぉーっ!!」
実況の声にも熱が入る。
試合前の下馬評では圧倒的な支持を集めていた【シュヴァルツシュヴァイン】だったが、【紅蓮火】のメンバーも負けてはいなかった。構成は【シュヴァルツシュヴァイン】側が、火剣・水斧・風弓・風魔・癒魔のオーソドックスなパーティなのに対して、【紅蓮火】はパーティ名を冠するかのように、火刀、土槍、火魔、火魔、癒魔の火属性偏重のパーティになっている。今は【紅蓮火】が相手の風魔のサンドラ選手の隙を見て魔法のデュアル攻撃によって仕留めたことによって、やや優勢になっている。しかし、少しでも油断をしたら最後、すぐにひっくり返されるであろうことは明らかである。
「どうだ!? 来てよかっただろ?」
隣で友達の武志が、周りの声にも負けないくらいの大声で僕に話しかける。
「うん、そうだね…思っていたよりも何倍もスゴいし、何倍も楽しい!」
「そうだろ、そうだろ」
武志から”闘技”の試合の観戦チケットが送られてきたときはどうしようかと迷ったりもしたが、ここに来てこの風景を見て肌で感じた今なら確実に言える。来てよかった、と。
「僕にも…出来るだろうか…」
自然と言葉がこぼれた。
あの世界に入ってみたい。
あの熱い闘いをしてみたい。
そしてもっと闘技を知りたい。
「ここで、【シュヴァルツシュヴァイン】のリーダー、トントン選手がギブアップを出したーっ! V闘技大会日本選手権社会人の部、第十三回覇者は【紅蓮火】に決定です!!」
ボーっとディスプレイを見ながらそんなことを考えていると、決勝戦の勝敗がついていた。両者お互いの健闘を讃え合いながら握手を交わす。
「もちろん出来るさ!」
武志はそう言ってくれる。
普段だったら、そんなことできない、そんなことしない、そう言っているはずの口が、いつもとは真逆の言葉を紡ぎだした。
「やって…みようかな」
静かにつぶやいた言葉だった。
だが確かに強い意思の感じられる言葉であった。
「俺とお前で全国を目指そうぜ!」
誰がどう聞いても夢物語だと言われそうなこんな話に、僕は。
「ああ!」
ワクワクを止めることが出来なかった。
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