交錯する生者 3
(前ページより)
*
授業の終了チャイムが鳴り、礼をして担当の教師が教室を出てすぐに、
「ねぇねぇ、罰ゲーム何にする?」
早速ジャスミンがソミアの席に来た。
「変なものは考えないで、お願いだから。恥ずかしいのは絶対にイヤだからね」
「でも、それじゃあ罰ゲームになんないよ」
「そうそう。こういうのは、もう二度とやりたくない!っていう心の叫びが聞きたいがためにやるようなモンなんだから」
いつの間にかローレンスとアナリアが私の後ろにいた。
これはある意味いじめのような気がする、と思った。
正直、罰ゲームなんてしたくなかった。確かに合意の上で決めたことではあったが、いざ自分に降りかかることになった今では気が進まない。あくまで遊びとはいえ、とにかくイヤだと思うのは変えられなかった。
しかし、いつまでも憂鬱になっていても仕方がないので、覚悟を決めた。それに、黙って聞いているうちにとんでもないほうに進まれたらたまったものではないので、そろそろ会議に参加することにした。
「やっぱりイケナイ本とかかなあ?」
予感的中。
「いやいや、屋上から街に向かって大声で自己紹介でしょ」
「それはダメだよ。ソミー、声小さいから意味ないよ。ストロー何本まで口に入るか、くらいじゃない?」
どれもこれもイヤだ。
それに、なんでこんな短時間でここまで発展できるの?
自分の勘に従って良かったと本気で思った。
「ちょっと! 勝手に話を進めないで!」
自分ではかなり叫んだつもりだったが、普段の声よりも若干小さく、はっきりともしていなかった。もし大声を出したら周囲から注目を浴びてしまう。そういうのは慣れていないため、できる限り避けたかった。だから自然と声が小さくなってしまっていた(テストのほうは実力を抑えるわけにはいかないし、言われるとしても陰口同然だからまだ気が楽だった)。
そんなソミアの胸中は友人達には全く悟られず、友人達からすれば普段通りの口調で抗議してきたソミアに言い返す。
「だって、ソミーぜんぜん話に参加してこないんだもん」
「ずっと黙ってたから、私たちで決めちゃっていいのかと思ってたよ?」
「それとも何か意見ある?」
三人は私の意見を聞くべく、無言の集中視線を向けてきた。三人にとっては何気なく送る視線なのだろうが、私にとってはそれでもたじろいでしまう。なんとか頭を動かして、私は自分にとって不快ではない、むしろプラスになる意見を提案した。
「じゃあ…夏の長期休暇の宿題を引き受ける…じゃ、だめ?」
「「「だめ」」」
三人は同時に答えた。
「なんでよー? みんな夏休みに思いっきり遊びたいんじゃないのー?」
「そりゃそうだけど…けど、それじゃあソミーにとっちゃあ罰ゲームになんないでしょ」
「そうそう。イヤなことじゃないじゃん」
「むしろ、がっつくよね」
「が、がっついてなんか…」
私は呟くように言った。自分では普段のように勉強しているつもりなのだが、周りからすればそう見えるのだろうか。
自分勝手な妄想は時を積むごとに同じく積もってゆくが、そんなことはできるだけ考えないほうがいいと思うし、今はそんなことを考えている暇はないと、無理矢理頭から振り払った。
その後も幾つか意見が挙がったがことごとく却下され(あるいは、して)、話し合いを進めていき、気づけばいつの間にか教室には私たちしか残っていなかった。