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ゴーストハンター雨宮浸 ゴーストハンターVSゴーストテイマー! ~悪霊島の呪われた秘宝~  作者: シクル


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第六話「ゴーストハンターVSゴーストテイマー!」

 一方その頃、砂浜に残った露子は、悪霊達の動きが落ち着き始めたことに気がついた。

 先程まではかなり活発だったのだが、今はあまり勢いを感じない。統率されているように見えた動きも、今はてんでバラバラだ。

 そんな中、突如異様に細長い男が姿を現す。

「アレは……!?」

 黒いスーツを着込んだ、露子の倍以上の身長だが、それに反して手足や胴体は異様に細長い。3メートル越えの細長い男が、ジッと下を――こちらを覗き込んでいる。

 その顔は真っ白で、まるでのっぺらぼうのようだった。

「……っ!」

 その存在に、朝宮露子は本能的な恐怖を感じてしまう。

 今まで幾度となく悪霊と戦い、死線をくぐり抜けた露子が、だ。

 それは屈辱だったが、その感覚さえも恐怖心が少しずつ覆い尽くしてしまいそうになる。

 振り払うようにして首を左右に振り、銃を向ける露子だったが、その男は露子ではなく周囲の悪霊を右手で薙ぎ払った。

「……なるほどね」

「さあスレンダーマン。絶望を与えなさい」

 細長い男――スレンダーマンの霊力が周囲に充満していく。

 自我を失っている悪霊達ですら、スレンダーマンに対して恐怖心を抱き始めたのか動きを止めている。

 そんな悪霊達の霊魂が、スレンダーマンへと吸い寄せられていく。

 こうやって霊魂を取り込み、スレンダーマンは更に強大になっていくのだろうか。

 それから程なくして、周囲の悪霊は姿を消す。その場には、露子とヴァレリー、そしてスレンダーマンだけが残った。

「そいつキモいけど助かったわ。悪いけどはやく引っ込めてくれない?」

 なんとか澄ましてそう言う露子だったが、ヴァレリーは応じるどころかニヤリと笑う。

「あなた、スレンダーマンが怖いんじゃない?」

「……は? 喧嘩売ってんの?」

「スレンダーマンは相手の本能的な恐怖心やトラウマに訴えかける。それはあなたに対してもそう」

「……どういうつもり?」

 ギロリとヴァレリーを睨みつける露子だったが、その両足は僅かに震えていた。

「悪いけどあなた達……邪魔なのよ」

 ヴァレリーがそう言った瞬間、スレンダーマンはグッと腰を曲げてその顔を露子に近づける。

 真っ白な顔が眼前へ迫り、露子は思わず竦み上がった。

(嘘でしょ……!? このあたしが……こんな奴に怯えてる……!?)

 今更少し強いくらいの悪霊に怯える程、露子は弱くないハズだった。

 だが奥底から湧き上がる恐怖心が、露子のプライドさえも侵食する。

 スレンダーマンという恐怖が、朝宮露子を包み込んだ。





 その頃洞窟では、絆菜とダリアが睨み合っていた。

「何が目的だ? お前達も天幻の再封印が目的ではないのか?」

 絆菜の問いを、ダリアは鼻で笑う。

「むしろその逆よ。私達は大怨霊、テンゲンを復活させる」

「……何だと!?」

「私達はゴーストテイマーよ! 強い悪霊が欲しいのは当然のことでしょう?」

 ダリアがそう言った瞬間、絆菜はバッキンガム三姉妹の目的を大体察することが出来た。

 彼女達がこの島へ来た理由は、最初から天幻を自分達のものにするためだったのだ。

 だがそこに、絆菜達やカレンが現れたことで予定が狂ってしまったのだろう。

「なら何故私達に協力するフリをした?」

「教える必要はないわ。だったあなたここで消えるもの」

 次の瞬間、水たまりからブラッディマリーが顔を出す。

「くっ……!」

 ナイフでの攻撃が簡単に避けられてしまう以上、絆菜にブラッディマリーをどうにかする術はない。

 反射する光の中に隠れた相手を、どう捕らえれば良いのかずっと考えてはいたがまるで思いつかなかった。

 喉元に噛みつこうとするブラッディマリーをなんとか回避し、反撃に出る絆菜だったが、ブラッディマリーはすぐに水たまりの中に消えていく。

「あなたではブラッディマリーをどうにも出来ない。黙って消えなさい」

「……どうかな? やってみなければわからんぞ」

「そう。ならやってみせなさい!」

 ダリアが語気を強めると同時に、ブラッディマリーは高速で移動を始める。

 そこら中の水たまりや、落ちてくる水滴を高速で飛び回り、最早目で追うことすらかなわない。

「スピードには自信があったんだがな……。完敗だよ」

 飛び跳ねるようにして現れたブラッディマリーが、絆菜に再び噛み付いた。





 ヘッドライトの明かりを頼りに、四人は薄暗い洞窟の中を進んでいく。

 和葉は先頭に立って霊力を探知し、次第に強まる天幻の霊力に身を震わせていた。

「……すごく強い力ですね」

「そのようですね。どうやら天幻は、私達の想定以上の怨霊でしょう」

 もし復活してしまったらと思うと、和葉は恐ろしくてならない。これだけ強大な霊力を持つ怨霊が相手となると、和葉の霊盾でも守り切れない。

「……あ、見てください!」

 しばらく進んでいると、薄っすらと赤い色が見えてくる。それは鳥居だった。

 そしてその向こうには祭壇があり、透き通った水晶玉がしめ縄と紙垂で囲まれていた。

 よく見ると水晶玉はひび割れており、そこから負の霊力が漏れ出している。間違いなく、あの水晶玉こそが天幻の封じられている水晶玉だ。

 場所はかなり開けており、天井も崩れていて月明かりでかなり明るかった。

「……まだ封印は解かれていないようね」

「ええ、ですがかなり危険な状態です。早坂和葉、お願いします」

 浸の言葉に頷き、和葉は恐る恐る水晶玉へ近づいていく。

 しかしその瞬間、そばにいたジャネットが和葉を突き飛ばした。

「えっ……」

「早坂和葉!」

 慌てて駆け寄り、浸はジャネットを睨みつける。

「どういうつもりですか!?」

「もう役目は終わりましたもの。お猿さんとインチキさんはさっさとお帰りなさい。死にたくないのならねぇ」

「なんですって……!?」

 睨むカレンに、ジャネットは嫌らしい笑みを浮かべる。

「テンゲンのゴーストはわたくし達バッキンガム三姉妹がいただくわ。日本の僻地に伝わる伝説のゴースト、テンゲン……想定以上の上物ですわ!」

「最初からそれが目的だったのですか!」

「ええ、そうよ」

 バッキンガム三姉妹の目的は、最初から天幻を自分達のものにすることだった。和葉達はまんまと騙されていたのだ。

「それなりに強い霊力の子供に、半霊の女、くわえてあなたとそちらのお嬢さん。正面から同時に相手取るのはわたくし達三姉妹でも手こずるでしょうから。なので少し悪霊達を操って分断させていただきましたわ」

 まあ、と付け足し、ジャネットはそのまま語を継ぐ。

「そちらのインチキ眼鏡は居ても居なくても一緒でしたけどねぇ!」

 ジャネットの言葉に、カレンは歯を軋ませる。

「そういうわけですので。テンゲンはいただきますわ……ジャック・オ・ランタン!」

 ジャネットが叫ぶと同時に、どこからともなくジャック・オ・ランタンは現れる。すぐに浸はジャネットに迫ったが、まとわりつくジャックを振り払うことが出来ない。

「戦うしかありませんか……!」

 苦々しい顔で青竜刀を構え、ジャックに斬りかかる浸だったが、そこに突如、ジャネットが割り込んでくる。

「――――っ!?」

 突然のことに驚き、浸は手を止める。すると、ジャネットは浸を思い切り蹴飛ばした。

「やぁっぱりぃ」

「卑劣な……!」

「あなたのような方はみんなそう。生身のわたくしが相手だとどうしても動きが鈍りますのねぇ!」

 その瞬間、ジャックの放った炎が浸に迫る。

「浸さん!」

 すかさず、和葉の張った結界がジャックの炎を防いだ。

「ダメです早坂和葉! 霊力を消耗しては!」

「でも……!」

 しかし結界が解除された瞬間、ジャックのランプが浸を殴りつけた。

「ジャネットォォォォっ!」

 怒りのあまり、カレンは闇雲にカレン砲を放つ。しかしその光線は、ジャックにあたっても何のダメージも与えられなかった。

「ほぉらインチキ発明! なんの意味もありませんわぁ!」

 何度撃っても結果は同じだった。カレン砲では、ジャックにダメージを与えることが出来ない。

「やっぱりジャックには、インチキ発明は効きませんわねぇ!」

 嘲りながら嘘つきドーソンと口にして、ジャネットはニヤニヤとカレンを見る。

「……やっぱり……?」

「……あの夜もそうでしたわ」

「まさか……っ!」

 理解が追いつかず、カレンは思わずカレン砲を取り落とす。そんな彼女を一瞥し、ジャネットは口角を釣り上げた。

「カカカカカカカカカカッ!」

 ジャネットに呼応するように、ジャックまでもがカタカタと不気味に笑う。

「そんな……じゃあ、あなたが……っ!」

「嘘つきドーソンはねぇ。わたくしにハメられましたのよ」

 下卑た笑みが真実を告げる。

 カレンの頭は、一瞬で真っ白になった。

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