☆1 俺、勇者PTをクビなる。
「悪いがシンノスケ!お前は今日限りでこのパーティーを抜けてもらう!!」
PTリーダーのシグルドにそんな事を唐突に言われ、固まってしまう俺。
おいおいおい。
いきなり何を言い出すんだこのオッサンは?
冗談はその変な髪型と、無駄に長く反り立った髭(アレどうなってんの?)だけにしてくれよ。
あとその加齢臭も。最近ますます酷くなってるぞ!
それから相変わらず声がデカい!
もう少しボリューム下げろよ。
他のお客さんの迷惑になるだろう?
俺は先日終えたばかりのクエストの書類まとめと、王国に提出する『勇者活動記録』の報告書を作成しながら、ヒゲルド…じゃなくてシグルドに言葉を返す。
「シグさん、俺は今忙しいんだ…。そんなバカみたいな話は後にしてくれないか? 第一、何で俺がクビなんだよ?」
シグルドを軽く配い、せっせと作業を進めていく。
そんな俺の対応に青筋を立てながら、更に声を上げて迫るシグルド。
「バカな話などではない!私は本気で言っているのだ! それにこれは私だけの意向ではなく、此処に居る全員の総意だッ!!」
「……なんだって?」
俺は周りを見渡す。するとどうだろう。
さっきまで楽しそうに談笑しながら酒を酌み交わし、見た目にも美しい旨そうな料理を、まるで豚みたいに散々食い散らかしていたPTメンバーのみんなが一斉に俺の方を見ていた。
(因みに。俺の席には当然が如く何も置かれていない…。)
怒りの籠った眼で俺を睨む者。
心底軽蔑した冷ややかな目で見る者。
顔を伏せ、チラチラと様子を伺う者。
「端っからお前なんて仲間でも何でもねぇーよっ!」って言いたそうな顔をしている者。
頬杖をついて、興味ゼロの瞳で無気力に見つめる者。
様々な視線が俺を貫いていた。
その視線の集中砲火に一瞬たじろぐが、直ぐ様見つめ返し、少し怒気を含ました声でシグルドが言った事を確認する。
「今シグさんが言った事……本当なのか?」
誰一人俺の問い掛けに答えず、なんの反応も示さない。
黙って俺を見続けている…。
俺はそれを肯定と捉え、ほんのちょっとため息を吐いて再度メンバーに問う。
「本気なのかよ…。 ……それで? 何で俺がクビなんだ? 俺が何かしたか? 悪い所があったのなら治すから、頼む誰か教えて━━━」
「いい加減にしてっ! もうウンザリなのよぉッッ!!」
バンッ!! っと激しくテーブルを叩いて立ち上がり、声を荒げながら此方を睨む少女。
先ほどから俺を冷たい目で見ていた少女だ。
少女は席を離れ、俺の方に近付く。そして━━━━。
バッ…チィィイインンッッッ!!!!
乾いた大きな音と共に、俺の頬に激痛が走る。
一瞬何が起こったのか分からず、頬を抑える俺。
しかし直ぐに理解し、頬を叩いた張本人を睨み付ける。
「なっ…何するんだよ、レーネッ!」
「うるさいっ! もうアンタの指図なんて受けない! 私たちは好きな様にやらせてもらうわッ!!」
「いきなり何の話だよ……」
「アンタ…私たちの中で一番レベルが低いクセにいちいちうるさいし、戦闘中も何の役にもたたないで」