かぐやルート16
学校からだとさくらちゃんの家の方が近いのでそこで金剛に下ろしてもらう。
「ありがとう、金剛。助かったよ。あとは歩けるから」
「良いんっすか? 姐さん家はすぐそこですよね?」
「まあ、そうなんだけど……」
俺は隣を見る。
俺が金剛に運ばれている間、ずーっと苦しさを押し殺しているかのような表情だったさくらちゃん。
そばに寄って上げると壊れ物を扱うように俺の手を取って黙ってしまっている。
こんなに辛そうな彼女を放っておきたくなかった。
「私、さくらちゃんに用事があるから二人は帰ってて」
「まだ辛いんじゃない? 待とうか?」
俺の身体を心配してくれる麻衣。
それに俺は首を振る。
「もう大丈夫だって。それに無理そうだったら連絡するから」
「……分かった。さく姉、お姉ちゃんをよろしくね」
麻衣の言葉にさくらちゃんは静かに頷く。
二人を見送って俺はさくらちゃんに微笑む。
「上がって良い?」
さくらちゃんは俺から離れて玄関の鍵を開ける。
「おじゃましまーす」
静けさから、さくらちゃんの両親は仕事だと分かっていたが、念のために挨拶。
「さくらちゃん……?」
家に入ってから一歩も動かないさくらちゃん。
俯いたまま何も言わない。
俺は床に座り、手を伸ばす。
「ほら、おいで」
さくらちゃんは靴を脱いで俺の腕の中に収まる。
「どうしたの? 元気ないね?」
「………………」
何も言ってくれないと困ってしまう。
相当落ち込んでるな。
「私が倒れたこと? あれはさくらちゃんのせいじゃないよ」
「でも……」
さくらちゃんが声を出したので促すように背中をポンポン優しく叩く。
「私が瞳の力を使う、なんて言ったからバチが当たったんだ。だから、りっちゃんが」
「そうだね。人を脅すなんて悪いことだ。今度からしちゃダメだよ?」
俺はわざとらしく頬を膨らませる。
「……うん。ごめんなさい」
「分かったらよろしい」
さくらちゃんは責任感が強い。
何か過ちをしてしまったときに無罪で赦されることを望まない子だ。
だから、ちょっと怒って罰してあげる。
そのうえで赦してあげる。
「だけど本当に今日はさくらちゃんのせいじゃない。ね?」
さくらちゃんの心が落ち着くまで、俺は幼子にするように背中を叩いてあげたり、抱き締めてあげた。
すると、唐突にさくらちゃんの身体が重たくなった。
「さくらちゃん?」
不思議に思い、様子を窺うと小さな寝息が聞こえた。
どうやら寝てしまったようだ。
「いつも私のことを想ってくれてありがとう」
俺はさくらちゃんの頬に口づけした。
「おやすみ、さくらちゃん」




