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かぐやルート12

 放課後になり、俺の腹の虫が盛大に鳴る。

「大丈夫、相島さん?」

「あー」

 友野に声をかけられるが、返事をする気力も湧かない。

 昼休み、かぐやと食堂で食べたが、コース料理は腹が埋まらない。

 しかもメインディッシュのローストビーフを食べる前にチャイムが鳴ってしまったから最悪だ。

「どっかで弁当食って帰るか」

 俺は力を振り絞って立ち上がる。

「そういえばどうだった? 八重橋さんとの食事は?」

「ん? あー他愛もない話をしただけだよ」

「それだけ?」

「それだけ」

「なーんだ」

 つまらなさそうに溜め息を吐く友野。

 こいつは何を期待してたんだ?

「りっちゃん」

 俺の袖が引かれる。

 振り向くとさくらちゃん。

「どうしたの?」

「臭い」

「えッ!?」

 好きな女の子からの衝撃の言葉。

 俺は脇や胸元を必死に嗅ぐ。

 ダメだ。

 自分じゃ全く分からない!

 臭いとかで、さくらちゃんに嫌われたくないんだけど!?

「友野ッ! 私って臭いの!?」

 さくらちゃんに直接訊くのが怖くて友野に確認する。

「ん~? 別に臭くは。あ、でも香水なのかな? うっすら花の香りがするね」

「香水?」

 さっきは焦って気付かなかったが、確かにつけたこともない花の匂いがする。

「なんだ~、香水か」

 臭いの原因が分かり、俺はホッと胸を撫で下ろす。

「ん?」

 さくらちゃんが後ろから腕を回してきた。

「な~に? 今日も甘えたなの?」

 可愛いな~と苦笑して、さくらちゃんの腕を外す。

「………………お?」

 外れん。

 少し力を込めてみる。

「………………さくらちゃん?」

 お腹を縛る拘束が解けない。

 え、何で?

 まさかギャグシーンでジャーマンスープレックスとかじゃないよね。

「………………」

 さくらちゃんは無言のまま動かない。

 この雰囲気って言うか、背後から感じるオーラ。

 すげえ嫌な予感がする。

「友野、今、好感度見れるか?」

「ああー、良いよ」

 事情を察してくれたらしく友野は例の好感度眼鏡で俺たちを見てくれる。

 そしてレンズがパキンと割れた。

「じゃあ俺帰るわ。また、明日ーー」

「ちょっ、待てやッ!」

 俺は逃げようとする友野の腕をがっしり掴む。

「逃がさんぞ! 友達だろ!?」

「痴話喧嘩は自分で解決してくれないか!?」

「私が性的に喰われても良いのかあああああッ!」

「恋人同士なら本望でしょおおおお!」

 周りから見たら滑稽にしか見えないだろうが、こっちは大事なものがかかってる。

 性的な意味でッ!

「りっちゃん」

「!?」

 さくらちゃんが俺の耳元で囁く。

「また、おトイレ行こう?」

 初めてさくらちゃんに襲われたことを思い出していた胸がドキリとする。

 これが興奮なのか恐怖か分からないがこのままではヤバい。

「あ、いや~。別に今は、大丈夫かな。あ、はは」

 逃れられないと分かっても小さな抵抗。

「ひゃん!?」

 右の耳朶に鋭い痛み。

「私の瞳、使っちゃうよ?」

 はい!

 やっぱり脅迫来ました!

「私はりっちゃんが居れば良いから、何人でも良いんだからね?」

「さくらちゃんは私に怒られたいの?」

 状況が変わったので友野の腕を離して、早く行けと目で訴える。

 こいつも察しが良いので無言のまま帰ってくれる。

 静まり返る教室。

 皆、帰ったようだ。

「ちゅ」

 さくらちゃんが俺の首にキスしてくる。

 そのまま舌を這わせる。

「んっ、ダメ……だよ」

 俺は声を抑えて訴える。

 だけどさくらちゃんは止めてくれない。

 どうすれば……?

 そう思っていたら急に解放された。

「ふふっ。これで私の匂いになった」

 さくらちゃんはとても満足げに微笑む。

「ごめんね。でも、香水の匂いを嗅いだら急に嫌な気持ちになっちゃって」

「はいはい。だけど今度からは先に言葉で、ね?」

 俺が身体を引き寄せてあげると、さくらちゃんは震える身体で泣き出す。

 ごめんなさい、ごめんなさい、と繰り返す。

 泣くくらいならしなければ良いのに。

 慰めるために俺はさくらちゃんの頭を撫でた。


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