外伝ルート 朱乃宮武術大会 桔梗3
後ろに跳ぶ。
「ふんッ!」
刹那に丸太の一撃。
闘技場の地面が削れる。
私を馬鹿にした。
だけど良太“さん”は私を馬鹿に出来るほどの実力があるんだ。
だったら私も全身全霊。
此方との戦いのために余力は残せない!
「すーふうー」
息を整える。
両手の木刀を構える。
左は切先を突き出し、右は自分の頭を守るように。
攻守の構え。
対して良太さんは右肩に丸太を乗せる。
何もかもを叩き潰す狙い。
先に動いたのは良太さん。
一歩、また一歩と近づいて来る。
間合いに入った瞬間、あの丸太が来る。
大振りの動き。
空振りさせれば私でも打ち込める。
だけど問題は狙いだ。
全身を守る甲冑に打ち込んだって意味ない。
一番狙いやすいのは太腿の内側かな?
「おらッ!」
掲げられた丸太。
良太さんの間合い。
私は突撃する。
「っ!」
振り下ろされる軌道を予測して右に避ける。
丸太が私の左腕を掠めていく。
痛い。
腕が抉れたかのような感覚。
だけど確認している暇はない。
まだ左手の木刀が私の視界に入ってるんだから腕はくっついてるはずだから大丈夫!
身を屈めて良太さんの左内腿を狙う。
この間合いなら丸太は振れないよね!
……え?
わけが分からなかった。
気付けば私は倒れていた。
ゆっくりと頭の痛みが来る。
もしかして殴られたの?
「神職。数えてやれ。脳震盪を起こしてるかもしれない」
「そうですね。それではーー」
カウントが始まる。
身体が、動かない。
意識はあるのに力が入らない。
「桔梗様っ!?」
楓の声が聞こえる。
立ち、あがらないと。
歯を食い縛る。
まだ顔には力が入った。
「ぬぬぬ、おおおおおっ!」
腕にも力が戻り、腕を立てる。
「ほう。起き上がるか」
嬉しそうな良太さんの声。
膝を立て、立ち上がる。
頭がくらくらする。
でもまだ戦える。
「神職、仕切り直しを」
楓の声。
神職が頷く。
「よろしい。ですが一本とさせていただきます。良太様に一本!」
周りの歓声が頭に響く。
抱き締められて無理やり歩かされる。
「桔梗様、お座りください」
しょうぎに座らされる。
楓と目が合う。
辛そうな目だ。
「かえ、で」
「私が見えますか?」
「う、ん」
「兜を外しますね」
顎紐が外され、涼しくなる。
「血は出ていませんね。なによりです」
「わたし、どうして?」
「良太様の拳がまともに入ったんです。兜の上からじゃなかったら気絶していたと思います」
そっか。
良太さんは丸太から手を離し、直接、私を拳で狙ったのか。
なら納得だ。
「うっ、ん」
頬がひんやりする。
楓が濡れたタオルで汗を拭いてくれた。
頭が少しずつ冴えていく。
「桔梗様。これでお分かりですか? 朱乃宮武術大会の危なさを」
「うん。怖いね」
苦笑してしまう。
運良く、私は動けている。
もしかしたら本当は病院送りだったかもしれない。
「ここで終わりでもかまいません。いかがしますか?」
「楓はどう思う?」
「私はーー」
楓が俯く。
「無理を、していただきたくないです」
楓の言葉。
辛そうに絞られた言葉。
「分かった」




