外伝ルート 決戦の地は朱乃宮! 朱乃宮の乱2
朱乃宮家。
千年続く歴史ある名家。
国を脅かす妖怪を滅ぼすために『瞳の能力』を操り、巫女として、陰陽師として、そして武士として戦って来た一族。
春陽はそんな家の娘として産まれた。
だけど朱乃宮は現代になっても男子を求めた。
朱乃宮の当主は男にすべきだと。
そのため朱乃宮に連なる家の男の中から婿に迎え入れて次期当主にする予定だった。
春陽もそれに不満はなく、花嫁修行に励んでいた。
だが、朱乃宮が迎え入れたのは余所者の男だった。
現当主の朱乃宮 元治は外の仕事をしたときに親しくなった男を気に入って春陽の婿にさせたのだ。
これに反対した家は多くあったが、家臣の中で一番力を持つ守羽家が従ったため、沈静化した。
そして春陽は余所者の男ーー大輔と結婚して二人の子供を儲けた。
双子の彼方と此方。
だが、せっかく産まれたとしても、春陽の父であり、大輔に当主を譲った元治は良い顔をしなかった。
わざわざ余所から男を入れたというのに男の世継ぎを産めなかった春陽を批判までしたのだ。
それでも春陽は負けなかった。
二人の娘を愛し、家を守ろうと決心した。
その頑張りは数年後に裏切られる。
「その方は?」
部屋に呼び出された春陽が見たのは上座で胡座をかく夫の大輔。
そしてその隣で正座する知らない女性。
春陽よりも若く、垢抜けても可愛い女性。
「瑞稀だ。今日から俺の二人目の妻にする」
それは春陽にとって裏切りのようなものだった。
このとき、父の元治が病で床に伏せることが多くなっていた。
今日、明日はないにしても長くはないだろうと。
そのタイミングで新しい妻を娶るなどあり得ないことだった。
さらに大輔の横暴は続いた。
春陽の自室を新しい妻である瑞稀に譲るように強制したり、勝手に朱乃宮にレジャー施設を招致したり。
大輔はその手腕で朱乃宮を豊かにしていったが、その反対に家や土地を重視する家臣たちからは反感を買っていた。
そんな中でも春陽は大輔のやることを信じ、家臣たちの怒りを抑えるように奔走した。
朱乃宮がより良くなることを信じて。
だが、たったひとつのことで春陽の努力は全てが崩れ去った。
大輔と瑞稀の間に男の子が誕生。
初めは祝福されたが、大輔の一言。
「次の当主はこの子だ」
これが戦争の引き金となった。
『当主は男がなるべき』という家と『あくまでも当主は朱乃宮の血を継いだ者』という論争から始まり、ついには対立。
大輔に従う家と春陽を擁立する家。
朱乃宮は一触即発。
だけど春陽は戦争を望んでいなかった。
あくまでも春陽は巻き込まれただけ。
朱乃宮が争うぐらいなら当主は大輔と瑞稀の子供でも良いと考えていた。
そんなときだった。
朱乃宮 彼方 齢五歳。
その身に初代朱乃宮当主である無限を宿したのは。




