外伝ルート 決戦の地は朱乃宮!40
「止まれッ!」
朱乃宮の兵士たちが刀を手に向かってくる。
阿笠さんが倒してくれるが、次々に現れて行方を阻まれる。
「くッ!」
数が多過ぎて阿笠さんだけでは抑えられなくなる。
「お二人は先へ! 紫織様をお願いします!」
「でも阿笠さん!」
「行ってください!」
「ーーくっ! 分かりました!」
ここで阿笠さんを助けに行こうが、迷って立ち止まろうが、戦えない私は足手纏いだ。
さくらちゃんと一緒に廊下を走る。
「居たぞッ!」
廊下の角からまた朱乃宮の兵士たち。
くそッ!
どれだけ私たちの邪魔をするんだ!?
「あ、がッ!?」
朱乃宮の兵士たちが自分の胸を押さえ出す。
まさか!?
「ごめんね、りっちゃん」
さくらちゃんが苦笑する。
「殺さないから、私にも手伝わせて」
「……くそッ!」
いつもは使わないでなんて言ってるくせに!
私は結局、誰かに頼らないと何も出来ないのか!
愛してる女の子を利用するだけなのか!
「……さくらちゃん。私のために人を傷つけて」
「……うん」
私は選ぶ。
大好きな恋人を道具にすることを。
私は将来地獄行きだな。
「何者だ! ここから先は立ち入り禁止だぞ!」
「さくらちゃん!」
「退いて!」
さくらちゃんの『魅了の瞳』が発動する。
目を合わせた対象の心臓の行動を操る。
鼓動を早めてドキドキさせることも出来るし、止めたり破裂させることも出来る。
人殺しとしては最強の能力。
私はそれを使わせてしまっている。
だったら報いないといけない。
必ず守羽さんを助けないといけない!
苦しげに胸を押さえて倒れる朱乃宮の兵士たちの間を走る。
そしてついにーー
「守羽さんッ!」
「っ!」
寒い寒い砂利の庭。
そこに求めていた人が居た。
守羽さんが何かを言う。
小さい声でよく聞こえない。
守羽さんが私を見て、クシャっと顔を歪める。
守羽さんをやっと助けられる!
「こいつッ!」
「うぐッ!?」
追ってきた兵士に捕まり、廊下の床に組み伏せられる。
「放せ! 放せよッ!」
「りっちゃん!?」
姿が見えないが、さくらちゃんも捕まったしまったらしい。
私は暴れる。
だけど複数人に抑えられてしまっているようで抜け出せない。
「またあなたですか。浩信、早く斬りなさい」
私を睨み下ろすのは春陽さん。
そして守羽さんの頭が黒ずくめの人物によって無理やり下げられる。
ああ、そんな。
ここまで来て助けられないなんて。
恋人を道具にしてまで来たのに、守羽さんを取り戻せないなんて。
「守羽さんッ!」
→《やり直す》
《諦める》
そんなの決まってるだろ。
私は諦めるのを諦めたんだ!
《今やり直したら左目も失うよ》
「っ!?」
立花の声。
《両目を失い、真っ暗な世界で生きることになるけど良いの?》
身体の管理者である立花が言うなら私は本当に目が見えなくなるんだろう。
「ずるいよ、立花」
私は目を閉じる。
最後ぐらい、さくらちゃんの顔を見たかった。
「さらばだ、守羽」
「……は?」
目を開けると、守羽さんの首に刀が振り下ろされた。




