かぐやルート4
放課後になり、矢沢さんがさくらちゃんも是非と言ってくれたので呼びに来たのだが……
「はあ~」
さくらちゃんが机に突っ伏して思いっきり沈んでいた。
何か黒いオーラでも見えそうだ。
「どうしたの?」
「うう。りっちゃん」
俺を見るなり、涙目のさくらちゃんが抱きついてくる。
「この後、急に委員会の集まりだよ~。りっちゃんと帰れないよ~」
「ああ、そうか。残念だね」
よしよしと頭を撫でる。
「行きたくないよ~。学級委員辞めたい」
「それがお仕事でしょ。頑張って!」
俺は苦笑する。
さくらちゃんはこう言ってるが真面目な子だ。
本当に辞めるつもりはない。
だからこそ俺が応援してあげないと。
「じゃあ、ぎゅーして」
さくらちゃんが俺のお腹に顔をスリスリ。
「今日は甘えただね」
「りっちゃん成分が足らないんだもん」
本当に可愛いな俺の彼女。(真顔)
「はい、ぎゅー」
俺はしゃがんでさくらちゃんを抱き締める。
鼻腔に優しい、ふわりとしたシャンプーの香り。
長い桃色の髪を指で梳いてやると、さらに良い香りがする。
「スンスン」
あ、ヤベ。
思いっきり嗅いでたわ。
変態だと思われる前に止めないとーー
「スンスン。ん~、りっちゃん、良い匂い。スンスン」
………………。
うん。
嗅いでるの俺じゃねえわ。
「さくらちゃん」
「スンスン。はあ、はあ……何?」
「怖いから離れて」
「何で!?」
「いや、何か性的に喰われそうだから」
「食べないから、イチャイチャしてよ~」
スリスリ、スリスリと甘えてくれるのは嬉しいんだけど……
「続きは二人っきりのときでね。皆、見てるから」
「へ?」
放課後になったばかりなのでクラスメイトは結構残っている。
その視線の全てが俺たちに注がれているのだ。
微笑ましく見てくれている女性陣は良いのだが。
おい! そこの鼻の下を伸ばしてる野郎ども散れ、散れ!
「い、行ってきます!」
ボン! と頭から蒸気を噴き出させたさくらちゃんは走り去っていった。
本当に可愛いな俺の彼女。(真顔)
本当に可愛いな俺の彼女。(真顔)
本当にマジで可愛いな俺の彼女。(真顔)
大事なことなので三回言った。(真顔)
「委員会終わるまで待ってあげるか」
さくらちゃんが頑張っているのに俺だけ遊びに行くのも悪いしな。
さて、それまで何をするか。
教室で待つか、それとも矢沢さんたちと一緒に先に何処かに寄ってるか。
「ん?」
視界の端に金色。
そんなもの彼女しか居ない。
俺は矢沢さんに少し待ってもらうと後を追った。




