外伝ルート 決戦の地は朱乃宮!
拝啓、父さん母さん。
私の誕生日にプレゼントをありがとうございます。
そのままクリスマスも一緒に過ごしたかったのですがーー
「はあ。まさかまたここに来るとは」
相変わらず寂れた駅。
そして何もないロータリー。
当たり前だがクリスマスツリーもイルミネーションもない。
とてもではないがクリスマスを過ごせるような場所ではない。
「寒いね〜」
隣で震えるのはコート姿の、さくらちゃん。
「ここまでで良いわ。ありがとう」
専属の運転手さんに別れを告げる、かぐや。
「さっむ! 雪でも降りそ〜」
空を見上げる、天。
「せっかくの冬休みなのに」
溜め息を吐いて座り込む、麻衣。
計五人の美少女(もちろん私を含めた)がクリスマスに居て良い場所ではない。
「りっちゃん〜。寒いからぎゅーして〜」
「はいはい。ぎゅー」
恋人のさくらちゃんと暖をとる。
「着いたは良いけど」
かぐやがスマホを見る。
私も自分のスマホを見る。
時刻はもうすぐ午後の五時。
私たちの世界はすでに薄暗く、あと十数分で夜が訪れるだろう。
振り返る。
唯一の光源として駅の蛍光灯があるが、チカチカ点滅してるから怪しいものだ。
もしあれが無くなったら真っ暗になってしまう。
「まったく急過ぎるのよ。クリスマスだっていうのに、こんなド田舎に呼び出して」
愚痴る、かぐや。
だけどそれは私たちの心の代弁だ。
突然、此方先輩からの呼び出し。
昨日のお誕生日会で会ったばかりだというのに、翌日にはここに来いだなんて。
「あー。太陽沈んじゃいましたね」
天の言う通り、夕日は山に隠されて見えなくなる。
それはつまりーー闇の訪れ。
「りっちゃん?」
私は、さくらちゃんを抱き締める力を強くする。
「皆、もう少し駅に近付こう」
「……そうね」
かぐやも何かを感じたのかもしれない。
荷物を持って駅へ。
「行くよ」
「え? ちょっ」
天も麻衣に手を引かれる。
私も、さくらちゃんを胸に後退る。
駅の明かりのおかげで私たちの周りは明るい。
だけど、そのせいで駅の外は何も見えない。
それがとても恐ろしい。
「どうする? 今ならまだ迎えを呼べるわよ?」
かぐやの提案。
だけど私は暗闇を見ることに必死だった。
その緊張が伝わったってしまったのか、さくらちゃんの身体も強張る。
「もう。皆さんどうしたんですか? 顔が怖いですよ?」
一人だけ困惑する天。
天は知らないのだ。
この辺りにはーー
「何か居る」
かぐやの呟き。
暗闇に赤い火の玉。
それに赤い瞳。
バサリという音と共に顔に風が掛かる。
「うらめしや〜」
この辺りには妖怪が存在することを。




