外伝ルート 私たちの冬休み13
「…………」
俺は歩く。
廊下をぐんぐん進む。
見た。
見てしまった。
俺は今、非常にドキドキしている。
まさか麻衣と天がそういう関係だったとは!?
「こ、これは祝福した方が良いよね?」
だけどいつから?
前から仲は良いな〜って思ってたけど、まさかあんなえっちぃラブチュッチュをするまで進んでいるとは、お姉ちゃんびっくりである!
「落ち着け。落ち着け、私。ふう〜」
廊下の曲がり角を曲がって深呼吸。
さて、居間に戻るか。
天に用事があったけど、後で良いだろう。
「……ここ何処?」
俺は周りを見回す。
柱に廊下に襖。
全部同じに見える。
曲がってきた角を曲がる。
景色は変わらない。
何これ?
こういう迷宮なの?
「ヤバい」
どうやら二人のラブチュッチュでパニクっていたらしい。
人の家で道に迷った。
広過ぎませんか、船渡姉妹よ。
「ううっ」
そういえばこういうホラゲーを最近やった気がする。
目を覚ましたら見知らぬ古い屋敷に居て、白い仮面の化け物に追いかけ回されるってやつ。
「……」
一気に足が竦む。
広いとはいえ、彼方先輩たちが居るのだから声ぐらいはするはずなのに、何の物音もしない。
こ、怖い
怖過ぎるっ!
「さくらちゃーん、かぐや〜、麻衣〜」
動けなくなったので皆の名前を一人ずつ呼ぶ。
「優子さーん、秋山さーん、天〜」
「どうしたんですか?」
「ぎゃああああああっ!?」
突然、背後から声を掛けられてびっくり。
俺はそのまま床にぶっ倒れる。
「だ、大丈夫ですか?」
「へ? そ、天?」
聞き覚えのある声。
それは天だった。
「怪我してないですか? 思いっきり顔面から行ってましたけど」
「う、うん。大丈夫」
うわ、めっちゃ気不味い。
さっきまで我が妹とラブチュッチュしていた天。
「大丈夫じゃないですよ!? 顔が真っ赤!」
「あ、いや、これは」
二人のラブチュッチュを思い出したとは言えん!
「ちょっと居間に戻りましょう。腫れたりしたら大変です」
天に腕を引かれて立ち上がる。
天の手から伝わる熱。
俺の身体も熱くなる。
「それにしても何してたんですか? あっちは何もないですよ?」
「ああ、うん。天に渡したいものがあって」
「渡したいもの?」
俺はポケットから小さな包みを取り出す。
「ほら、夏休みは会えなくて、その後もなあなあになってたけど、やっぱりこういうのは大事かなって」
包みを天の掌へ。
「お誕生日おめでとう、天。四ヶ月ぐらい遅くなっちゃったけど」
「…………」
「天? わっ!?」
天に抱き締められる。
「ありがとうございます、先輩。大好きです!」




