さくらルート45
今日の夜はカレーだった。
さくらちゃんが来ても良いように人数に関係なくまとめて作れるもの、と母さんが言っていた。
「お姉ちゃん、お風呂沸いたよ~。先入ったら?」
「ああ、ありがとう」
腹を満たしてくつろいでいると麻衣がリビングに戻ってきた。
さくらちゃんを捜すために走り回ったし、さくらちゃんをおぶって帰ってきたし。
めちゃくちゃ汗で気持ち悪い。
「ごめんね、さくらちゃん。先入る」
「うん。気にしないで」
一応、客人のさくらちゃんを、と思ったが大丈夫そうだ。
一度、自室に戻って着替えを用意し、脱衣所で一息吐く。
「慣れって怖いな」
女の子の身体になったばかりの頃はこの時間が一番ドキドキしていたが、今は何も感じない。
相島 立花の裸だが、自分の裸と思えばなんともないものだ。
服を脱いで風呂へ。
慣れた手つきで身体を洗っていく。
そしてーー
「ふひぃー」
やっぱり湯船に身体を沈める瞬間は最高だ。
疲れが湯に溶けていくようで、風呂に入ったまま生活したいとさえ思えてくる。
極楽極楽。
あー、ごくら
「りっちゃーん」
ん?
風呂の外からさくらちゃんの声がする。
脱衣所に居るらしく、擦りガラス越しにさくらちゃんのシルエットが見える。
「な~に? ……をしてるの?」
変な言葉遣いになってしまったが、俺が見ている光景がおかしいのだから仕方ない。
擦りガラス越しだというのに俺には分かった。
明らかにさくらちゃんが服を脱いでいる。
ガラッと扉が開いたので俺は一瞬で顔を逸らす。
「どうしたの、りっちゃん?」
「いやいやいや!? 何で入ってきたの!」
とても不思議そうな声のさくらちゃんが不思議だよ!
「平気だよ? だって女の子同士だし」
俺は平気じゃないんだなんかごめん童貞だから。
俺がずっと顔を逸らし続けていたからか、さくらちゃんは何も言わなくなって、湯が流れる音だけが俺の耳に届く。
「りっちゃん、隣入れさせて」
「じゃあ私出るよ!」
水飛沫をあげて立ち上がると後ろから抱き締められる。
「私の瞳のことを話したいから」
その言葉で俺の頭が冷める。
「……分かったよ」
俺は湯船に戻る。
隣にさくらちゃんが入る。
一人でも広いとは言えないのに、二人並んで入ると身体が密着していろんなとこが当たってる。
「……………………」
「……………………」
話したいと言っていたのにさくらちゃんは黙ったまま。
「ねえ、りっちゃん」
数分経った後にさくらちゃんがやっと口を開く。
「何?」
「舌、入れて良い?」
「……………………………………は?」




