天ルート 幕間14
「どうして私とあなたが? 遠慮したいんだけど」
「そっか。それは残念。だったらーー」
天は麻衣に一歩前へ。
「先輩の方に行こうかな〜。色々と話したいし。うん! そうしよう。それじゃあね、妹ちゃん♪」
「待ちなさい」
立ち去ろうとした天。
その右腕が強く握られる。
「お姉ちゃんに何する気?」
「うーん?」
天は笑みを深める。
「私と先輩って結構仲良しなんだよね〜」
「嘘を吐かないで。あなたとお姉ちゃんが会ったのは今年でしょ? それまでにそんなに接触はなかったはず」
「決めつけは良くないよ。私と先輩は“中学”からの仲なんだよ?」
「……は?」
険しかった麻衣の瞳が丸くなる。
「そんなはずはない。だって私は小学校からお姉ちゃんと一緒の学校に通ってるの。あなたのことなんか知らない」
「私は知ってたよ? だって同じ学年だったんだから。そういえば相島姉妹って有名だったよね。優しくて運動も勉強も出来る先輩。それに対して妹はーー」
「少し黙れ、お前」
その一言で天は硬直する。
冷えた硬い言葉。
まるで首筋にナイフを添えられたようだった。
冷えた汗が天の頬を伝う。
だけど。
いや、だからこそ天は嗤う。
「どうしたの、相島 麻衣さん?」
笑みを崩さない天。
麻衣は一度瞳を閉じると、表情を消す。
だけどすぐににっこりと微笑む。
その笑顔は天に向けたものではなかった。
「皆、ごめーん! 私、二階堂さんと用事があったんだった! 今から行かないといけないから適当に食べちゃって!」
振り返ってクラスメイトと話す麻衣。
クラスメイトは不思議そうにするが、麻衣が言うならと納得する。
「じゃあまた午後ね〜。ふう」
麻衣は一息を吐くと天に向く。
「それじゃ行こっか」
「流石は演劇部。とんだ女優だね?」
「何のことかな? 用がないなら戻るけど」
麻衣は相変わらずのにっこり。
だけどそれがただの仮面だと天は理解した。
「二人っきりになれるところに行こうか」
天も一緒に昼食を食べる予定だったメンバーに一言伝えておく。
そちらも特に怪しまれることはなかった。
そして二人はお弁当を持って校舎へ。
どちらも口を開かない。
階段を登り続けて、先を進んでいた天が扉を開ける。
「ここなら誰も来ないかな」
学校で天の落ち着ける場所。
屋上だった。
「今日は暑いから陰で食べようか」
天は陽に晒されない場所を探して腰を下ろす。
「ほら、隣に座って。一緒にお弁当を食べようよ」




