天ルート36
リビングのソファーに身体を沈める。
最近は体育祭の練習があるので身体が重い。
こんなにも運動したのなんて何年ぶりだろう。
「そう考えると学生って凄かったんだな〜。勉強をして、運動もして」
“製造”という仕事に関わってきた。
重たい物をたくさん運ぶからメチャクチャ重労働。
働いているときはそう思っていた。
だけど学生も重労働である。
こんなのをほぼ毎日出来るなんて若さって凄い。
顔を天井に向けたまま、そんな考えを巡らせていると、次第に瞼が重たくなっていく。
眠い。
とても眠い。
ちょっと、目を瞑るだけ。
俺は自分にそう言い聞かせて左瞼を閉じる。
そしてすぐに抗えない眠気に引っ張られた。
ん?
んう♡
耳がとてもくすぐったい。
何か濡れたもので耳を撫でられている。
これは左耳か?
ゆっくりと覚醒していく意識。
くちゅりと左耳から音がする。
「ふふっ。りっちゃん、ビクンってなった。寝てるのに感じてるんだ♡」
左からさくらちゃんの甘い声。
「ほーら、早く起きないと、りっちゃんの初めて貰っちゃうよ?」
下半身が触れられる。
温かい何かが俺の下腹部を這い、そしてーー
「……さくらちゃん、何してるの?」
「ん? ふふっ。あーあ、起きちゃった」
左目を開けると、さくらちゃんと目が合った。
さくらちゃんは艶かしく笑ってる。
「あと少しでりっちゃんの初めてを奪えたのに」
「さくらちゃんのえっち」
「私の目の前で無防備に寝てるりっちゃんが悪いんです〜。私は何度も起こしたもん」
「え?」
リビングの壁の時計を見る。
俺にとっては一瞬だったが、最後に意識があったときから四十分ほど経っていた。
「あ、ごめん。ぐっすり寝てた」
「大丈夫だよ。疲れてただけでしょ? 今、カレー持ってくるから待っててね」
さくらちゃんがほっぺにキスをしてくれる。
それで俺の頭は完全に覚醒していく。
「ん〜。寝たな〜」
両腕を上げて背筋を伸ばす。
この時間だと何かバラエティー番組がやってそうだな。
俺はテレビ前にあったリモコンを手に取り、再びソファーへ。
テレビを点けると、ちょうど毎週見ている番組がやっていた。
ん?
カレーの良い匂いがする。
「お待たせ。はい、どうぞ」
テーブルの方にカレーが並べられる。
そして彩り豊かなサラダもセットだ。
ひと手間加えるのはやはりさくらちゃんらしい。
「ほら、りっちゃん早く」
「はーい」
俺はソファーから立ち上がると、テーブルの席に着く。
「それでは。いただきます」
「いただきます」
さくらちゃんに続いて俺もカレーに挨拶をした。




