天ルート22
教室に戻ると友野が待ってくれていたので解散。
俺はさくらちゃんの委員会が終わるまで待ちたいので椅子に座り直す。
「……暇だな」
教室の皆はすでに帰るか部活に行ってしまい、俺は教室で独りぼっち。
さて、どうしようかな。
「ん?」
誰かが廊下を歩く音。
俺は扉に目を向ける。
するとーー
「……金剛?」
一年の後輩である金剛が扉の前を過ぎて行った。
それも何か大きな荷物を抱えて。
気になったので俺も廊下に出る。
「おーい、金剛〜」
俺が声をかけると、金剛はゆっくり振り返る。
「あ! 姐さん! お疲れ様っす!」
元気の良い金剛らしい挨拶。
だけど静かな廊下にはメチャクチャ響くな〜。
「私たち二人しか居ないんだから、そこまで声を張り上げなくて良いよ」
「す、すみませんっす!」
大きな身体で頭を下げる金剛。
やはり金剛の荷物が気になる。
「ねえ、金剛。その大きなダンボールは何?」
「ん? ああ、これっすか? これは演劇部の小道具とかっすよ。これを持って今から部室に行くところっす」
「演劇部? ああ、そういえば金剛は麻衣と一緒の演劇部に入ったんだっけ」
「っす。何も部活に入ってないならどうだって。なんだかんだで裏方も必要らしいんっすよ」
確かに金剛は見た目からしたら建築とかのとび職人が似合いそうだ。
釘とか、かんなで家を作りそうである。
それにしても演劇部か。
麻衣の部活だというのは前から知っていたが、見たことがないんだよな〜。
それならまあ。
「金剛、私も演劇部の見学しに行って良い?」
「え? あ、もちろん! 姐さんなら俺は大歓迎っすよ」
金剛の満面の笑み。
意外と可愛いな。
シェパードが懐いたらこんな感じかもしれん。
まあ、金剛は顔から恐れられてるが、性格は良い子だからあながち間違いでもないと思う。
「じゃあ行くっすよ。でもどうして見学なんか?」
「ん? ああ、さくらちゃんが体育祭の仕事で帰れないから待ってたんだけど暇でさ。そしたら金剛がベストタイミングで来てくれたから。それに演劇部も興味があるし」
「お! じゃあ、姐さんも入りますか?」
期待の眼差しを向けてくる金剛に俺は苦笑する。
「いや、それは良いかな。早く帰ってダラダラしてる方が性に合うし」
「そ、そうっすか……」
「ああ! そんなに落ち込まないで! 演劇部だから入らないってわけじゃないから」
金剛の大きな背中をポンポン叩いて慰める。
「……お姉ちゃん?」
声に前を向くと、そこには妹の麻衣が居た。




