天ルート 幕間4
「きゅ、急に何!?」
「良いよ。私は神様として君の願いに力を貸そう」
「……良いの? いっぱい悪いことをして先輩を手に入れるかもよ?」
ゲンムは腕に力を込める。
「言っただろう? どんな使い方をしても良いって。その『瞳の能力』はもう君の物さ。好きに使いなよ」
「……ありがとう、ゲンム」
「ふふっ。ここはどういたしましてで良いのかな?」
ゲンムは腕の力を緩めると、天から離れる。
「まあ、何にしても作戦を考えないとね。君の先輩を手に入れる方法の、ね」
「でも、先輩は《絆の結晶》を二度も奪っても私を好きになってくれなかった」
「それならもっと奪えば良い。今の君ならあの人の《絆の結晶》を全て奪えるよ」
ゲンムの言葉に天は不安そうにする。
「え、でも《絆の結晶》を全部奪っちゃって良いの? あれって人間に取って大切なんでしょ?」
「ああ、大切中の大切さ。なにせ、その人の記憶が保存されているようなものだからね」
「それは、なんだか嫌だな」
苦笑する天。
ゲンムは仮面の下の目を丸くする。
「おや、どうしてだい?」
「だって、それって先輩を記憶喪失にしちゃうってことでしょ? 確かに先輩には私だけを見てほしい。だけど、いろんな記憶があっての先輩だもん」
「……はあ〜」
ゲンムは深く溜め息を吐く。
「なんだかんだ言いながら君は優しいね。いや、今回の場合は甘いと言った方が良いかな」
やれやれとゲンムは肩を竦め、笑みを歪ませる。
「そんなんじゃ一生、あの人を神崎 さくらから奪えないよ?」
「じゃあ先輩の記憶を消さずに私を愛してもらえるような方法を教えてよ」
ムスッとする天にゲンムは再びの深い溜め息。
「そんな簡単に言わないでよ。君の『瞳の能力』でそんなこと出来るわけがーー」
「……ゲンム?」
言葉を止めたゲンムを天は心配そうに見る。
「どうしたの? まさかこの暑さで頭がやられちゃった?」
「……君は本当に口が悪いね。私の頭は今日も冴えてるさ」
ゲンムは口角を上げ、笑みを深く刻む。
「あるよ。あるんだよ。あの人を記憶喪失にしないで手に入れる方法が」
「え、嘘。教えてよ」
「まあまあ、準備に時間がかかるし、タイミングが必要なんだよ」
「タイミング?」
「ああ、そうさ。これには大量の人間が必要だ」
ゲンムの両目が仄かに赤く光る。
「二学期は体育祭も学園祭もある。人間が集まる絶好の機会さ」




