外伝ルート 瞳と宴と 幕間6
「大したことないわね!」
ジングウが彼岸花に跪くアカメを嘲笑う。
「さあ、次はどっち? 烏? それとも狐?」
ジングウの瞳がクロハたちを捉える。
二人を殺すために一歩、また一歩と威圧するように近付く。
「ジングウ」
此方が呼び止める。
「君は他人を見下すきらいがある。相手の力を知らないなら警戒を怠るのは愚策だよ」
「は? 何言ってーー」
苛立たしげに振り返るジングウ。
目の前に立っていたのはーー
「な、何で立っていられるのよ!?」
アカメだった。
肩から左腕を失っても平然としているアカメの姿に、さすがのジングウも戦慄する。
「だって死ぬ怪我じゃないし」
小首を傾げるアカメ。
右手で折れた刀を拾う。
そして捨てる。
「ちっ!? 化け物」
自分のことを恐れもしないアカメにジングウは恐怖よりも怒りを覚えた。
「私を馬鹿にして! あなたもあいつらみたいに骨を砕かれて泣き叫べ良いのよ!」
歯を強く噛み、ジングウはアカメに手を伸ばす。
アカメはそれを身体を捻って躱す。
前のめりになるジングウ。
転びそうになるのを堪える。
「ふざけるなッ!」
歯を剥き出しにしてアカメに右手を伸ばすジングウ。
アカメはそれも躱す。
「ははッ! 避けてばかりじゃない! そんなに私が怖いの?」
アカメを煽るジングウ。
「別に?」
だが、アカメには何の意味もなさない。
「恐れてるのは、あなただよ?」
「ッ!?」
その言葉にジングウは激情を抑えられなかった。
「どいつもこいつも私を、馬鹿にするなぁッ!?」
「!?」
アカメは気配に飛び退く。
「…………」
アカメが立っていた場所に見知らぬ人物。
その姿はもう一人のジングウ。
「ふた、ご、なのか?」
困惑するクロハたち。
「あら? 避けられちゃった。ふふっ」
もう一人のジングウがクスリと微笑む。
「そいつを殺して、私!」
「りょうかーい、わ、た、し♡」
もう一人のジングウが右手で拳銃を作る。
「怖〜い、怖〜い、鬼さんも死んじゃえ♡」
ばーん♡ と可愛げのある声。
だが、その効果はーー
「ねえ、刀を下ろして欲しいんだけど?」
もう一人のジングウが唇を尖らせる。
「何のつもりよ」
刀を首筋に添えられていたのは元のジングウ。
「どっちの君も止まれ。私の前で争うのは止めてもらおうか」
此方はジングウを脅しながらクロハを睨む。
「クロハ、ここは退いてもらおう。互いに得た幸せを失いたくはないだろう?」
「……分かったよ。アカメ、もう良い」
「分かった」
もう一人のジングウの横を通り過ぎてクロハの隣へ。
「クロハ、私のことは信じられないかもしれないが、これだけは約束する」
「何だい?」
「君たちがこの山で大人しくしてる限り、君たちの幸せを壊さない」
「……言われなくても」
クロハたちは去っていく。
「え〜、あの妖怪たちは何をしに来たのさ〜」
わけが分からないというようなゲンム。
「オロチ……!?」
刀一振りで動きを封じられているジングウは拳を強く握る。




