外伝ルート 瞳と宴と4
「じゃあどうするんですか?」
「簡単で誰でも出来る役にするわよ」
「役? 此方先輩は何の役なんですか?」
「オロチ」
ざわっと俺の背中に何かが奔る。
オロチって。
「皮肉なものよね。まさか、本当に蛇の神になるなんてね」
朱乃宮と妖怪の戦争を利用して全てを滅ぼそうとした此方先輩。
彼女は自分はかつてこの山を治めていた毒蛇の神を名乗っていた。
その名がオロチ。
「演目は、ね。千年以上前の朱乃宮の話をやるのよ」
「千年前、ですか?」
「悪さをしていた毒蛇の神であるオロチを朱乃宮一族が封印するまでの話。そのオロチ役だからかなり重要な役なのに。あいつは全く酷いもんだわ」
やれやれと守羽さんは首を振る。
「さて、着いたわよ」
守羽さんと話していると時間はあっという間だった。
一番大きな鳥居の下。
俺たちは朱乃宮の神社に辿り着く。
「し、静かですね」
神社には主人だった朱乃宮 無限は居ない。
無限さんも彼方先輩も居なければ、彼女たちを守る巫女さんたちも居ない。
真夏でも少しだけ涼しい世界。
とても静かだった。
「なんか神秘的ですね」
麻衣が言葉を漏らす。
「神秘的? 何が?」
「蝉の声が聞こえなくなった。鳥居を潜ってから」
「え、ああ」
麻衣の言う通りだった。
ずっと鳴いていたから気にもしていなかった蝉の声が消えていた。
だからこんなにも静かなんだ。
「社務所に案内するわ。こっちへ」
守羽さんに連れられて社務所へ。
「部屋は二人で一部屋。食事やお風呂は準備させておくから。貴重品はそこの金庫でーー」
守羽さんが部屋の説明をしていく。
と言っても俺は一ヶ月居たから勝手を知ってる。
他の皆のために説明してくれてるんだろう。
「なんか雰囲気があって良い部屋だね。まるで旅館みたい」
麻衣は和を感じさせる部屋に感動してるみたいだ。
「私は早くお風呂に入りたいわ〜。どのぐらいで準備出来るのかしら?」
道中、ずっと黙っていたかぐやが畳の床に尻餅をつく。
かぐやにとって荷物を背負いながらの長い階段は辛かったのだろう。
ヘトヘトそうだ。
「そんなすぐに沸かないわよ。まずは釜の火を起こさないと」
「か、釜?」
呆ける、かぐや。
守羽さんが溜め息を吐く。
「今みたいに便利じゃないの。早く汗を流したいなら井戸の水でも被ってきなさい」
そういえばここのお風呂は井戸の水を何度も沸かして浴槽に溜めるタイプだった。
そりゃあすぐには出来ないな。
「嘘でしょ!? 井戸の水なんて私を殺す気なの!」
そしてやはりお嬢様のかぐやはご不満だ。
「火焚きも湯を沸かすのも時間が掛かるのよ。嫌なら我慢しなさい」
「そんな〜」
ガックリとかぐやは肩を落とした。




