外伝ルート 私たちの夏休み 幕間1
そこは真っ暗な空間。
だけど目を凝らすと、遠くが光っている。
その光源は地面に散らばる虹色の結晶の欠片たち。
「さて、仕事を続けますか」
立花は腰に手を当てると、そう言って意気込む。
彼女の仕事は相島 立花の身に起きたことをリアルタイムで記録すること。
そして魂の方から依頼があれば記録を提示すること。
だけど記録の提示は難しい状況にある。
「…………」
立花は虹色の結晶の欠片をひとつ拾う。
「ここから探すなんてやっぱり無理だよね」
地面に散らばる欠片ひとつひとつに相島 立花の記録がある。
これらは本当はひとつの大きな結晶なのだが、あるときに粉々に砕け散った。
その影響で確認作業が滞っている。
「魂の方には悪いけど、時間がかかりそうだな。記録もしなくちゃいけないし」
立花は少し歩き、それの前に立つ。
彼女の目の前で宙に浮かんでいるのは、人の頭ほどある虹色の結晶。
これが今の魂が育てている《絆の結晶》だ。
「短い期間でよくここまで大きく出来たよね」
立花は虹色の結晶に触れる。
わずかに熱を帯びているそれは、ここ数ヶ月で起こった全てを記録している。
膨大な情報が詰まっている。
「いやしかし、どうして今の魂はこんなにも事件に巻き込まれるんだか」
神崎 さくらのいじめの件。
八重橋 かぐやの家族の件。
朱乃宮 彼方の大きな争いの件。
どれもこれも立花は全て記録している。
傷つきながらも。
「…………」
立花は自分の右の瞼に触れる。
ついに立花は重症とも言うべき傷を負った。
話によると、これは代償であり、治る保証はないと。
本来なら他人の『瞳の能力』なんて拒絶すべきだった。
だけど、立花は受け入れた。
だって魂とは別の存在だとしてもーー
「目の前で泣いてる子は助けたいと思ったんだから。仕方ないか」
魂と身体の心は同じなのだ。
もう今の魂と付き合っていく覚悟も出来ている。
大袈裟な言い方かもしれないが、一心同体。
もし、魂がダメになったら自分も機能を停止しようと立花は決めている。
前の魂には悪いけど、と。
「だから諦めないでね、魂の私」
立花は自分の役目を果たす。




