さくらルート26
は~。
俺ってリア充だったんだな。
ギャルゲーのヒロインとトイレの個室で二人っきり。しかも俺の膝の上で身悶えている。頬を染めて。
これ、もう攻略済じゃね?
ギャルゲーより18禁ぽくはなってしまったが。
これでさくらちゃんを救えたのか?
ていうか、そろそろ俺の理性が限界なんだが……
「りっちゃん」
熱い息で俺を呼ぶ声。
「私、変かな?」
まだ少し興奮しているのだろう。
涙目のさくらちゃんと目を合わせる。
「変じゃないよ。こうやって甘えてくれるのは嬉しい。ごめんね。寂しかったんだよね」
俺はさくらちゃんを包み込むように両手で抱く。
「言ったでしょ。さくらちゃんが私を放さない限り、私は一緒に居るから安心して」
「……うん」
さくらちゃんが俺の胸に顔を埋める。
「りっちゃん、大好き……」
その言葉のあとに小さな寝息が聞こえる。
きっと安心してくれたのだろう。疲れて寝てしまったみたいだ。
「さくらちゃんがこんな行動に出る前に話しとけば良かったな~」
一線を越えることは阻止できたが、友野の言っていた痴女ルートに行ってしまうとは。
好感度七十億はヤバい。今度から気を付けないと
まあ、でも今はこれで良いだろう。
さて、帰るか。
「さくらちゃん、帰るよ~」
「むう、へへ」
何か嬉しそうに寝てる。
良い夢でも見ているのだろうか?
これは起こしづらいな。
まあ、まだ時間もあるしこのままでも良いか。
さくらちゃんに訊きたいことは山ほどあるけど、今はこの時間を大切にしよう。
ああ、俺も眠たくなってきた。欠伸が止まなくなる。
少し眠るか。
俺はさくらちゃんを胸に抱きながら目を閉じた。
何かの音が鳴っている。
それは俺の眠りを妨げた。
「何だ、さっきから?」
ボーッとする頭を少しずつ覚醒させていく。
どうやらポケットのスマホからみたいだ。
電話の相手は……麻衣。
「はい、もしもし?」
俺は欠伸を噛み殺して電話に出る。
『あああッ! やっと出た!? ちょっとお姉ちゃん、今何処に居るの!?』
麻衣の声が耳を貫く。
「そんな大声で喋らなくても聴こえるから」
『なにそれ? うるさいってこと!? 人がどんだけ心配したと思ってるの!? 全然帰ってこないし、電話も出ないお姉ちゃんが悪いんでしょ!』
「帰ってこないって……」
何をそんなに怒っているんだ?
俺は一度耳からスマホを離して時刻を確認する。
《20:00》
………………。
あー。
「ごめん。学校で寝てたわ」
『寝てた!? 学校で!?』
信じられないとでもいう声だ。
俺だって信じられない。
まさかこんながっつり寝てしまうとは。
『ちょっ、今迎えに行くから!』
「いや、良いよ。一人で帰れるから」
『何言ってるの! お姉ちゃんはボーッとすることがあるんだから悪い人にでも襲われたらどうすんの!?』
うう、そう言われると何も言えない。
ふむ。
「麻衣はお姉ちゃんのこと、信じてくれないの?」
『別に、そういうわけじゃ……』
お、これは。
「は~。そうだよね。お姉ちゃん、頼りないよね。ごめんね、こんなお姉ちゃんで」
『そ、そんなことないよ! お姉ちゃんは強いし、優しいし、頼りになるよ!』
「じゃあ信じて待っててくれる?」
『……分かったよ。気を付けてね?』
「ありがとう。すぐに帰るから」
俺は電話を切る。
ふう。
何とか乗りきった。
麻衣の優しさにつけこんだのには罪悪感があるが、さくらちゃんと一緒に居たとバレては小言を言われそうだ。
あとで謝っておこう。
しかし、二人の仲もどうにかしたいな。
………………。
「おーい、さくらちゃん」




