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彼方ルート 幕間5

 薄暗い廊下。

 壁も床も天井も石の廊下。

 天井から吊り下がった小さな電球だけが、光源だった。

 鉄柵の牢屋の道を通り過ぎていく。

 他の牢屋は空だからだ。

「…………」

 突き当たり。

 手に持っていた鍵束がジャラリと鳴る。

 鉄の扉に取り付けられた三つの錠前を上から外していく。

 扉に手を掛けるとギギギと擦れる嫌な音。

 開かれた扉の先。

 湿気と埃が肺を侵す。

 この部屋には灯りがなかった。

「…………」

 目を凝らす。

 目が慣れていくと暗闇の中で目当てのものを見つける。

 それに近づいても相手は動かない。

「朱乃宮の札は強力だな。鬼を何日も眠らせているのだから」

 相手に合わせて跪く。

 手を伸ばす。

 そして相手の額に貼ってあった札を剥がす。

 瞬間ーー

「ガルルルッ!」

 鬼の少女ーーアカメが噛みついてきた。

 寸前で彼女の歯をかわす。

「クロハめ。躾が出来てないぞ」

 巫女服の“神様”は嗤う。

「威勢の良いことだ。私のことを忘れたか、鬼の子? お前たちの神だぞ?」

「グルルルル。うが?」

 アカメの焦点が神様に合う。

「かみ、さま?」

「そうだ。少しは落ち着いたか?」

「クロハ様はッ!?」

 アカメが神様に詰め寄る。

 ガチンとアカメを縛る鎖が音を発てる。

 幾つもの鎖が彼女を石の壁に捕らえている。

 こうまでしないと鬼は縛り付けておけない。

「安心しろ。無事だ」

 神様はアカメの黒髪を左手で掴み、引っ張る。

「前回のようにお前が勝手をしなければ、な。余計なことをされたから私の策は台無しだ。神でも、いや神だからこそ苛立ちは大きい。妖怪の分際で、人間に追われた身であるというのにふざけるなよ?」

 懐から取り出した短刀。

 鞘から引き抜くと、刃をアカメの首に押し当てる。

「忘れるなよ? あくまでお前たちは協力者だ。使えないと分かれば、お前も、お前が慕っているあのカラスも斬り捨てる」

 アカメの首から刃へと血が流れていく。

 鬼の血も人間と等しく赤い。

「クロハの代わりに私が躾けてやろう。私の目を見ろ」

 神様は抵抗するアカメに無理やり目を合わさせる。

 そして仮面の奥の瞳が赤く光る。

「うぐッ!?」

 アカメは胸から込み上げたものを嗚咽と共に吐き出した。

「げほッ、がほッ、うっ、ごはッ」

 口から血と泡が溢れてアカメに苦しみを与える。

 ぼた。

 ぼた。

 ぼたたた。

「はッ! だいぶ吐いたな。だが、鬼はこのぐらいでは死なないだろ?」

 神様が髪を離すと、アカメの身体は力を失い、だらりと頭を垂れる。

「もう少し寝ていろ。だが、サボっていた分は働いてもらう」

 神様はアカメに背を向け、牢屋を出た。


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