彼方ルート31
俺が褒めれば褒めるほど顔を赤くする彼方先輩。
メチャクチャ可愛いな。
『さつかそ』でも後輩の主人公に褒められてすぐに照れるところが人気だったし、この世界でもこういうキャラなのだろう。
それに彼方先輩は……巨乳だ。
さくらちゃんよりも大きい。
ゲームで制服ブレザー姿だったときもそうだが、今の巫女服も彼女の胸を強調してしまっている。
同人誌で彼女の作品が多かったのも頷ける。
鎖や枷ばっか目に入ってしまっていたが、プロポーションは『さつかそ』で一番の彼方先輩の胸を見てしまうのは仕方ないことだ。
決して変態だからじゃない。
彼方先輩の同人誌を見ながら一人でしたことはあるが、俺の推しはさくらちゃんだ。
勘違いしないように。
ああ、ムラムラする。
「おいおい。なーに、いやらしいことを考えてるんだ?」
「……え?」
顔をあげると、彼方先輩がニヤリと笑う。
まさかーー
「初代当主の無限さん?」
「ああ、そうだ。昨日ぶりだな」
ずいっと顔を寄せてくる。
「船渡が呼んだみたいだが、特別な者には見えないな。朱乃宮に連なる者でもないだろう?」
無限さんの手が俺の頤に触れる。
「見目は良さそうだな。恋人は居るのか?」
「は、はい。居ます、けど」
雰囲気が変わった彼方先輩。
無限さんになると急にSっ気が出て来てドキドキしてしまう。
まさかこれがギャップ萌え?
「ほう。男が居るのに、こんな死地に来るなんて阿呆だな」
「あ、いや。お相手は女の子です」
「くふっ」
無限さんが口元を袖で隠して笑う。
「だから彼方を襲いそうな目で見ていたのか。変態め」
「ひ、酷い」
無限さんのときは結構言ってくるんだな。
「まあ、面白そうだから良い。彼方にはこういう相手も必要だろう」
そして一人で納得する。
「あ、あの」
「何だ?」
「どうして彼方先輩に取り憑いているんですか?」
「我は彼方に助けられたからだ」
無限さんは柔らかい微笑む。
「助け、られた?」
「ああ。今の朱乃宮は神というものを奉じてないからな」
今度は悲しげに笑う。
「我が朱乃宮は妖怪退治と神事によって名を馳せた。だが少しずつ。決定的になったのは大きな戦の後か。妖怪の力は衰え、人は神に縋らずに自らの手で生きるようになった。そんな世に我が朱乃宮は必要なくなったのだ。そして、この社には誰も来なくなった」
確かに現代人は妖怪や神などを知ってはいるが、見た人や心の底から信じている人は少ないかもしれない。
それはそういう時代になったというしかない。
だけど便利な世の中は今まで頼って来た人を追放する世界でもあるのかもしれない。
「あれは、何年前だったかのう」
無限さんがポツリと呟いた。




