彼方ルート 幕間2
相島たちの戦いから戻ったクロハは地面に降り立つ。
戦闘の傷はないが、力を使いすぎたため疲れていた。
それと共にアカメが囚われてしまって気が気ではない。
「もうすぐ陽が昇る。助けにはいけない……」
悔しげに歯噛みする。
彼女たち妖怪は闇の中で生きる者。
力を十分に出せない今は、戦えない。
「返り討ちにあったか」
声にクロハは身構える。
だが、正体を知ると苦笑する。
「何だ、“神様”じゃないか。何の用かな?」
クロハに相対したのは巫女服の少女。
顔の上半分を骸骨のような白い仮面で隠している。
「せっかく私が結界に穴を開けてあげたというのに。大事な戦力を失って逃げてくるとは」
「おいおい。私たちの本隊は健在だよ」
「アカメを失ったではないか」
「それはーー」
反駁しようとしてクロハは口をつぐむ。
神様は深く嘆息する。
「まあ、良い。作戦を変更する」
「……アカメを見捨てる気?」
錫杖を握る手に力が籠る。
「元々、利用するために拾ったのだろう?」
神様の言う通り、山で死にかけていたアカメをクロハは拾った。
そして刀を握らせた。
自分の悲願のために。
「だとしても今は家族だ。そして打倒朱乃宮を掲げる戦友だ」
「家族? 甘いな、お前は。妖怪くせに人の心などあるから人間に負けるんだ」
「何だと?」
クロハは怒りを隠すのを止めた。
錫杖の頭を神様に向ける。
「負ける? 私たち妖怪が負けるだって? 偽りの神が何をほざく!」
「負けているではないか。お前の親もその前の妖怪たちも朱乃宮に駆逐され、終いには住処であった、この山に居座られる始末」
神様が言っているのは、朱乃宮家初代当主が祀られている神社のことだ。
あれのせいでクロハたちは自由を奪われた。
「今の朱乃宮なんて常人と変わらない。私たち全兵力を投入すれば滅ぼせる!」
「ならばーー」
神様は仮面の奥の瞳を細める。
「どうして殺さなかった? 本殿を守っていた二人の少女は生きてるぞ?」
「ああ、そうなのかい。加減をした覚えはないけど」
「……しらばっくれるつもりか?」
神様の声にも怒りが混じる。
「お前とは利害が一致しているから手を貸しているのだ。忘れるなよ? 妖怪にも私の瞳の能力は効くのだからな」
「そっちこそ。その仮面の下が暴かれないようにしなよ、偽りの神?」
クロハが嘲笑うと、神様は不機嫌そうに鼻を鳴らす。
「近々、また作戦を送る。そのときにアカメを利用させてもらう」
「それまでは命の保証はしてくれるんだね?」
「ああ。今は牢の中で寝ている。彼女を起こすのはその作戦のときだ。今度は失敗するなよ?」
神様は踵返す。
その背にクロハは言葉を吐く。
「妖怪が神に従順だと思うなよ?」




