さくらルート8
いつも通り妹の麻衣と登校し、自分の教室に入る。
少し違うと言えば、今日はさくらちゃんが学校を休んでいた。
珍しいことのようでクラスメイトたちはざわざわと騒ぎ出す。
だがそれも授業が始まれば収まり、放課後には誰も話題に出さなかった。
「相島、すぐ帰るか?」
帰り支度をしていた俺に担任の森先生から声をかけられる。
「お前ら家が近いんだよな? 悪いが手紙届けてくれるか?」
「あー良いですよ」
さくらちゃんと顔を会わせるのに少し俊巡したが、心配なので手紙を受け取る。
それを鞄に閉まって学校を出た。
「……ここで合ってるよな」
幼馴染みの家とはいえ、俺はさくらちゃんの家の場所を知らなかった。なので、一度家に戻って母さんに地図を書いてもらって辿り着いたのは普通の一軒屋。表札を確認すると『神崎』とあるので間違いないと思うが。
意を決してインターホンを押す。
ピンポーン と小気味良い音が響く。
「……………………あれ?」
待ってみたが返事がない。
もう一度鳴らしてみる。
ピンポーン
「……………………留守なのか?」
誰も居ないのなら手紙はポストに……。
「でも、さくらちゃんは風邪で休みだったはず。病院に行ってるのか?」
気になったので俺は直接扉をノックする。
「すみませーん! 相島 立花です。学校の手紙を届けに来たんですが!」
やはり返事はなかった。
「仕方ない。帰るか」
俺は踵を返す。
「ーーちゃん」
「!?」
声が聞こえた。
俺は扉に駆け寄る。
「さくらちゃん? さくらちゃん居るの? 私だよ! 相島 立花だよ!」
「……りっ、ちゃん」
か細い声が扉を挟んで届く。
間違いない。さくらちゃんだ。
きっと風邪で弱っているんだ。
俺はドアノブを握る。
「くそッ!? 鍵がかかってる!」
ガチャガチャとドアノブは俺に抵抗する。
「さくらちゃん聞こえる? ドアの鍵を開けて!」
バンバンと扉を叩いてさくらちゃんに呼びかける。
ガチャリと鍵が開く。
俺はすぐに扉を開く。
「さくらちゃん!」
さくらちゃんは玄関で座り込んでいた。
「りっちゃん……」
さくらちゃんはとろーんと溶けた瞳で微笑む。
「大丈夫? 風邪が酷いの?」
パジャマ姿のさくらちゃんの頬は赤く、息が荒かった。
「わーい。りっちゃんが私の家に居る~」
「さ、さくらちゃん!?」
風邪の状態を確認しようとしてしゃがんだ俺にさくらちゃんが抱きついてくる。
むわっと汗の匂いがしたが、美少女の汗は臭いどころか鼻腔を擽る甘い匂いがする。
暑いのかパジャマは乱れて胸元が見えている。
正直言ってエロい。
俺が男のままだったら今にも抱き締めたくなってしまう。
「さくらちゃん休まないと! へ、部屋は何処?」
ギリギリのところで理性を保ち、さくらちゃんに肩を貸す。
「にか~い」
間延びした声。おそらく二階だと言っているのだろう。
だけどこの身体でさくらちゃんを二階まで運ぶのは困難。
仕方ないので一階のリビングにお邪魔する。
ちょうどソファーがあったので、さくらちゃんをそこに寝かせる。
「さくらちゃん、ご両親は?」
「おとうさんとおかあさんはおしごと~」
「どうりで居ないわけだ」
さて、どうしたものか。




