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彼方ルート5

 馬車に揺られて一時間ほど経っていたのだろうか。

 此方先輩と互いのことについて話していると、馬車が止まった。

「到着しました」

 扉が開かれ、此方先輩に続いて俺も降りる。

 景色が一気に開けて、再びセミの音が喧しく響く。

 どうやら森に入ったようで周りには木しかなかった。

 だが、見るべきところはそこではない。

 目の前に建っていたのは木目の美しい大きな門。

 そして左右を見ると大人二人分ほどの高さのある石垣の壁が森を貫くように続いている。

 こんなものが森の中に存在するなんて。

「す、すっごいですね」

 語彙力に乏しい俺からはそれしか出ない。

「船渡だ。誰かそこに居るか?」

 此方先輩が門に向かって声を上げた。

 するとーー

「お帰りなさいませ」

 門に付いている小さな扉ーー潜り戸から現れたのは此方先輩と同じ巫女服の少女。

 驚くことに腰に刀を差している。

「門を開けてもらって良いかな?」

「分かりました」

 静かな雰囲気の少女は潜り戸から中へと戻る。

 そして門の扉が向こうへと開かれた。

「私の刀は?」

「ここに」

 先ほどとは別の少女が中から現れ、此方先輩の前で跪いて刀を差し出す。

 此方先輩は少女に軽く礼を言うと、それを受け取って腰の帯紐に差した。

「すまないが、ここからは歩いていく。君は体力がある方か?」

「まあ、人並みには」

「ならばよろしい」

 此方先輩は俺の回答に満足すると先を行く。

 俺も彼女の後を追う。

 大小様々な石が並べられて出来た道を行くと、風景は少し変わり、左右には竹藪と教科書でしか見たことない造りの木造建築になった。

 これじゃ平安時代にタイムスリップしたみたいだ。

「珍しいか?」

 俺が視線をあちらこちらに動かしていたからだろう。

 此方先輩が振り返って苦笑する。

「まあ、そうですね。平安時代みたいです」

「実際、この辺りの建物は平安時代から何度も作り直しているからあながち間違いではないかな」

「え、マジですか。こんなところじゃ暮らすのに不便じゃ?」

「ん? ああ。私は普段住んでないよ。あくまでここは私の姉さんの朱乃宮家とその従者が暮らしているんだ」

「……苗字とか、住んでいる家が違うことは訊いて平気ですか?」

 明らかに此方先輩と彼方先輩の関係が複雑なのは分かる。

『さつかそ』では生き別れた二人。

 だけどこの世界は俺の知っているものと違う。

 この世界の二人のことを知りたい。

 でも他人の家の話にズカズカ入るほどの度胸はない。

 だから此方先輩から語って欲しかった。

「…………そうだな」

 一度足を止めて黙っていた此方先輩が口を開く。

「まだ歩く。だから歩きながら話そう」

「はい。それでかまいません」

 再び俺たちは前へ進む。

「朱乃宮家は平安時代から由緒ある一族だ。貴族の方たちの祭事などを取り仕切っていた。まあ、今では廃れているけどね」

 悲しげに苦笑すると、此方先輩は語り出した。

 

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