彼方ルート4
夏休みに入った初日。
俺は新幹線とローカル線を乗り継いである場所に来ていた。
「あっちー」
始発から出発し、利用客が誰もいない無人駅を降りた。
空を見上げ、手で影を作る。
今日も太陽が元気だ。
「それにしても田舎だな」
ロータリーの先は田んぼやら森しかない。
遠くに家が疎らに見えるが人影がない。
えらいところに来てしまった。
でも待ち合わせ場所はここで間違いない。
ポケットからスマホを取り出す。
「待ち合わせまであと二十分くらいだな。さて、何するか」
コンビニでもあればそこで涼むのだがここでは期待できないだろう。
「ん? 何だあれ?」
遠くから何かがこちらに近づいてくる。
あれは馬?
いや、馬車まである。
その馬車はロータリーに入ると俺の前に止まった。
馬を操る御者台から降りてきたのは燕尾服の初老の男性。
「どうぞ。お荷物はこちらでお乗せします」
踏み台が置かれ、馬車の扉が開かれる。
「ど、どうも」
荷物を詰めたキャリーバックを預けると馬車に乗る。
「時間通りだね」
「え?」
中にはすでに人がいた。
俺が席に着くと、馬車が動き出す。
「此方先輩、いらしたんですね」
「ああ。君を迎えにね。こんな田舎だと道が分からないだろう?」
「確かに」
二人で微笑む。
「よく来てくれた。ありがとう」
「いえいえいえ! 自分で決めたことですから!」
此方先輩が頭を下げたので頭をあげてもらう。
ここに来ることをさくらちゃんとかぐやは大反対だったが、俺は説得してきたのだ。
第三ヒロインの彼方先輩に会うために。
「そう言ってもらえるとこちらも助かる」
「あはは。それはそうと」
俺は先輩の格好を見る。
「何で巫女服なんですか?」
目の前の席に座る此方先輩は正月に神社で働いてる巫女さんの格好(白衣に緋袴)をしていた。
「私の家はそういう家系ということだよ」
「それって神社ってことですか?」
「半分は合っているが、半分は違う。朱乃宮家は神職の家であり、陰陽師の家でもあるんだよ」
「んん?」
急に話が分からなくなった。
「陰陽師っていうのは妖怪を退治する?」
「ああ、そうだ」
「……妖怪って本当にいるんですか?」
「居るよ。だから君を呼んだんだ」
此方先輩がニコッと笑う。
あらゆるものを隠そうとするように。
「え、私に妖怪と戦えと?」
「いや。君はあくまで姉さんの世話役だ。戦うのは私の仕事」
「な、なんだ~」
戦わなくて済むなんてひと安心…………じゃないよ!?
「マジで妖怪と戦うんですか!?」
「マジだよ」
「えええ!?」
そんな和風ファンタジーだなんて聞いてないぞ!?
設定はどうした!
「相島、頼りにしてるよ」
「嘘でしょ~」
新章の始まり始まり〜




