かぐやルート74
かぐやには帰ってくれと言われてしまったので、俺は自分の家に帰り着く。
「ただいま~」
「おか、え、何でジャージ?」
迎えてくれた麻衣が目を丸くする。
「ちょっと運動を」
「運動ね~。それよりも」
ずいっと麻衣が顔を寄せてくる。
「さく姉がカンカンだったんだけど。喧嘩でもしたの?」
「あッ!」
さくらちゃんのことをすっかり忘れていた。
やべえ。
「さくらちゃんは?」
「帰ったよ。てか帰らせた。お姉ちゃんの下着漁ってたから」
「さくらちゃん……」
もう清純派って言えないよ。
まあ、清純派なのにエッチなのが良いところなんだけど。
……俺の下着の匂いとか嗅いでないよな?
メッチャ恥ずいんだけど。
「シャワー浴びてきなよ。お姉ちゃん汗臭い」
麻衣が俺を嗅いで顔をしかめる。
「あー。確かに臭い。あッ!」
もう一つ忘れていた。
「今度は何?」
「公園に自転車置いてきたまんまだ!? 取ってくる!」
「ちょっ、お姉ちゃん!? もう暗いから明日にしたら?」
「平気平気。行ってくるね!」
俺は玄関を飛び出して公園に向かった。
そして何事もなく自転車は公園で見つかる。
鍵をつけっぱだったから持ってかれたかもしれないと思っていたが、大丈夫だったみたいだ。
「さて、今度こそ帰るか」
俺は自転車に跨がり、陽の沈んでしまった街灯だけの道を進む。
「…………」
夏の暗がりのせいか、得体の知れないものが居る感じがした。
だが、気を張っているうちに家に着く。
誰かに見られていた気もしたが自意識過剰だったのかもしれない。
「ただいま~。ん?」
玄関を開けると、靴が一足増えていた。
「この靴はーー」
「あー、私を置いていったりっちゃんだ」
不機嫌そうなさくらちゃんが目の前に居た。
「他の子のところで浮気してたりっちゃんだ~」
明らかに拗ねてるし。
でも何も言わずに飛び出したのは俺だしな。
「今日はごめんね! 急ぎの用事があったから」
素直に謝るしかない。
「キスしてくれたら許してあげる」
両手を伸ばして俺にぎゅーっと抱き着くさくらちゃん。
「いや、私が許さないけど」
さくらちゃんの後ろで麻衣がジト目で見てくる。
「ほら、前科者はお姉ちゃんから離れて」
「やーん。麻衣ちゃんの鬼~」
「はいはい。鬼で結構ですよ」
麻衣によってさくらちゃんが引き剥がされる。
何か、コメディだな。
「それでさくらちゃんは何しに来たの?」
「えっ!? 今日お泊まりしようって約束したよ!」
「………………そうだっけ?」
俺が呆けると、さくらちゃんの盛大な溜め息。
「やっぱり聞いてなかった。良いもん。準備しちゃったから」
スタスタとさくらちゃんが二階に上がっていてしまう。
「喧嘩だけはしないでよね?」
やれやれと肩を竦めた麻衣はリビングへ。
「まだまだ疲れそうだな。とりあえず、さくらちゃんのご機嫌を取らないと」
俺も溜め息を吐いて二階に上がった。




