さくらルート1
想いを伝え合った俺とさくらちゃんは関係を修復しつつあった。
俺が記憶喪失の設定で、さくらちゃんも未だに過去の負い目を感じているからか会話はぎこちない。
それでも一緒にいることが増えたので良いことだ。
少し困ったことがあるといえば、さくらちゃんからの"好き好きアピール"が凄い。
毎朝、登校すると遠慮なくハグしてくるし、周りに人が居ないと分かれば、まるで恋人のように腕を絡めてくる。
きっと、今まで別たれていた時間を埋めようとしてくれているのだろう。
だけど俺は相島 立花という女子校生だ。
ユリユリしても良いが、俺としてはギャルゲーのヒロインらしく主人公と付き合って幸せになってほしい。
遺憾だがな!
ええ、そうですとも。
大変に遺憾でありますとも!
でも、さくらちゃんのために我慢我慢。
だというのに未だに主人公らしい人物が現れない。
というか名前を覚えられた男子が隣の席の友野だけ。
でも友野は主人公じゃない。
さくらちゃんとの一件で思い出したが、友野はギャルゲーにおけるお助けキャラだ。
彼に訊けば主人公とヒロインとの好感度が分かる。
ん?
ということは友野に訊けば主人公が誰か分かるんじゃないのか?
「なあ、友野」
「んお?」
休み時間にスマホでゲームをしていた友野。
耳だけ傾けてくる。
「主人公って誰だ?」
「……は? このゲームのか?」
「え? ああ、ゲームの」
もしかして友野はこの世界が元々ギャルゲーだったと知っているのか?
「この特殊部隊の兵士がーー」
「すまん、質問が悪かった」
予想は外れた。
「あーと。何て言えば良いのかな。最近、神崎さんと仲が良い人って居る?」
「相島さん」
即答だし、間違いではないがそうではない。
「男だ、男。神崎さんと、その~何て言うか、お似合いな奴だよ」
「何だ? 俺と恋バナでもするの?」
「ちがーう! 神崎さんを幸せにしてくれるようなBIGな男は居ないか訊いてるんだよ」
「BIGな男、ね。ああ、でも確か少し前まで神崎さんと噂になってた奴が一年に居たな」
「え? 名前は?」
「有名な奴だよ。名前はーー」




