かぐやルート47
時刻は十七時過ぎ。
重たい身体を引き摺って俺は帰宅した。
「ただいま~」
「あ、お帰り~。ん? 何か疲れてるね」
麻衣のお出迎え。
安堵と疲れで俺は座り込む。
「え、ああ。色々あってね。でもまあ、コンクールは見れたから」
「ふーん。良かったね。楽しかった?」
「コンクールだから楽しいわけじゃないけど、見に行って良かったと思ってるよ」
「へえ。そうなんだ」
麻衣がこちらに視線を合わせてくれない。
ん?
何か拗ねてる?
「不機嫌だね? どうしたの?」
「別に。お姉ちゃんは良いよね、モテモテで」
「モテてる?」
そんなにチヤホヤされた覚えはないが。
「麻衣に冷たくされるとお姉ちゃんは悲しい……」
「冷たくは……してないよ」
「そう? じゃあ立たせて~。お姉ちゃんヘトヘトー」
「……仕方ないなー」
俺が甘えると麻衣が苦笑して腕を引いてくれる。
「ほら、もうすぐご飯だから。あ、先にお風呂入る?」
「最後は、それとも、わ・た・し?」
「え? 何言ってるの?」
……あれ?
このネタって通じないの?
わりと王道じゃなかったっけ?
「変なこと言ってないの。早くお風呂に入ってきなさい! ちゃんと温まってくるんだよ? 着替えは置いておくから」
麻衣が妹というよりオカンだ。
まあ、良いや。
今日は麻衣に甘えよう。
俺はそのまま風呂の脱衣所へ。
走ったから汗で服がびしょびしょだ。
「へ?」
全裸になった瞬間、閉めたはずの脱衣所の扉が開かれる。
「どうしたの?」
麻衣が不思議そうに小首を傾げる。
「え? 何で入ってきたの?」
「何でって、着替え持って来るって言ったでしょ?」
言葉通り、麻衣の手には綺麗に畳まれた下着とジャージ。
「あ、ああ。そうだったね」
麻衣相手に今さら何を。
俺の身体は今、女なんだから驚くことないじゃないか、と浴室への扉に手をかけた。
「……麻衣?」
お腹には麻衣の両腕。
後ろから抱き締められたのだ。
「たまには私にも構ってよ、お姉ちゃん」
何だ。
やっぱり拗ねてたんじゃん。
「麻衣は何してほしい?」
「……お姉ちゃんに甘えたい」
「ふふっ。可愛いね、麻衣」
俺は麻衣の両腕をポンポンと優しく叩く。
「じゃあ一緒に入る?」
「恥ずかしいからそれは遠慮しておきます」
「即答ですか……」
思春期ちゃんめ。
まあ、俺自身、麻衣の裸を直視出来るとは思えないが……
「明日は暇?」
「明日は特に用事ないから家に居るよ」
「じゃあ明日はお姉ちゃんを独り占めするね♪」
「ふふっ。良いよ」
可愛い恋人、可愛い親友、そして可愛い妹が居て俺は幸せだな~。
「じゃあ、お母さんにはご飯待ってもらうから」
「うん。ありがとう」
一人になった俺は一度だけ身体を伸ばして風呂に入った。




