立花ルート34
研究所について守護者に門を開けてもらう。
そして駐車場にレンタカーを停める。
「あれ? 買い物行ってたの?」
車から降りると喫茶店のメイドさん……じゃない! メイド服じゃなくて私服の、えとーー
「そういえば名前なんですか?」
私の言葉に喫茶店のメイドさん(私服バージョン)は目を丸くする。
だけどすぐにクスリと笑う。
「自己紹介してなかったね。喫茶店《朱》のメイドの白崎 日向だよ。よろしくね、電車乗り過ごしの羽澄さん♡」
メイドさん改めて日向さんの可愛いウインクにドキッとしてしまう。
横からは瀬名さんのジトっとした視線。
「へえ〜。羽澄さん、日向先輩と仲良しさんなんだ。へえ〜」
「な、なんですか。日向さんには喫茶店でお世話になっただけで」
「ふーん」
ムスッとする瀬名さんも可愛いな。
じゃなくて。
「機嫌直してくださいよ〜」
「おい、日向。お前も荷物をーー」
車の陰から大きな身体が出て来る。
それはマスターの裕二さんだった。
「あ、裕二くん。久しぶり〜」
「あっ、ご、ご無沙汰してます」
瀬名さんが声をかけると態度が一変。
裕二さんがペコペコ頭を下げる。
もしかしてーー
「裕二は瀬名が好きなんだよ」
クスクスと日向さんが私に耳打ちする。
やっぱりそうなんだ。
でも恋人のようには見えない。
「ああ見えて、裕二さん奥手なんですか?」
私もヒソヒソ返す。
それに日向さんは悲しげに苦笑する。
「もうコクってるんだけどね。だけど恋のライバルが強過ぎて。未だにOKが貰えてない」
それはもう叶わぬ恋のように日向さんの表情から窺えた。
だけどそうか。
瀬名さんには想い人が居るんだ。
じゃあメチャクチャ揶揄われているじゃん、私!
酷いな、もう!
「二人とも早く行くよ〜!」
すでに遠くで瀬名さんと裕二さんが居た。
私たちも買い物を荷物を持つ。
「そういえば日向さんと裕二さんはどうしてここに?」
「どうしてって。羽澄さんの歓迎会に誘われたからだよ? あれ? 何も聞いてない?」
「聞いてないですよ? でもそっか。日向さんたちも知り合いなんですもんね」
学生時代からもう十数年以上経っているだろうが、それでもこうして集まるなんて皆仲良しなんだな。
想像してしまう。
この人たちが学生だった頃のことを。
きっと眩しい青春を送ってたんだろう。
「…………」
いややめよう。
他人の青春を羨ましがるなんて
もう何年も経ってるんだ。
忘れて今は、ここで新しい生活を送ろう。




