立花ルート33
西村さんの大失敗から時間は経って夕方。
車で三十分ほどの朱乃宮では一番大きなスーパーで買い出しをして、今はその帰りだった。
「今日はごめんね。うちのお姉ちゃんが」
「いえいえ。ちょうどレンタカー借りてましたし」
「そう言ってくれて良かったよ。もう! あとで説教しなくちゃ!」
「ほ、ほどほどに」
プンプンと怒る瀬名さんに苦笑するしかない。
こりゃ西村さんしばらくはお酒控えた方が良いかも。
「それにしても暗くなりましたね」
もうすぐ六月になるが、すでに車の外は闇になり、ヘッドライトを遠目にしないと先が分からない。
「田舎だからね。そこらじゅうに街灯があったり、家があったりないし。やっぱり羽澄さんが住んでた場所って夜でも明るいの?」
「そうですね。私が住んでたところも都会ってわけじゃないですが、真っ暗にはならなかったです。コンビニとかも二十四時間やってますし」
「本当に! 羨ましいな〜。うちはコンビニ遠いし、二十四時間やってないし。やっぱり都会だな〜」
その後も田舎と都会のあるあるで盛りあがった。
瀬名さんは話しやすくて楽しい。
「……ねえ、羽澄さん」
「ん? なんですか?」
「このままどっか逃げちゃおっか? 二人で遠くに」
チラリと横目で瀬名さんを見る。
クスッとした小悪魔的な笑み。
「……明日にはレンタカー返さなくちゃいけないんで無理ですね〜」
「酷〜い。羽澄さんってロマンなーい」
「愛の逃避行なんて今どき流行らないですよ」
「へえ〜」
なんかまた瀬名さんがニマニマしている気がする。
「なんですか?」
「羽澄さんは私にLOVEなんだ〜。えっち」
「……ここで降ろしますよ?」
「冗談だって! それにこんなところで降ろされたらクマに食べられちゃう!」
「え、ここってクマ出るんですか?」
「うん。たまにだけど。あ、そっちはクマなんて普通出ないもんね」
「こ、怖〜」
こんな暗い道にクマなんて出たらと思うと戦慄する。
最近クマ被害多いからな〜。
連日テレビでニュースやってるし。
結局、去年のクマは冬眠しなかったって騒がれてたし。
「……研究所にクマ入って来ないですよね?」
「まあ、塀が高いし大丈夫かな? 門も守護者が管理してくれてるから勝手に開いたりしないし。でもまあ、絶対はないけどね」
「田舎って怖いですね……」
「大丈夫大丈夫! いざとなったらスタンガンでバッチバチだから!」
「スタンガン? スタンガンなんて持ってるんですか?」
「うん。守護者が。本来は侵入者用のだけど、クマにも効くんだって〜」
「クマに効くって。それ人間にやって大丈夫なんですか?」
「さあ〜」
「さあ、って」
守護者の機嫌を損ねないようにしよう




