かぐやルート21
約束の放課後。
さくらちゃんは委員会、麻衣は部活だからちょうど良かった。
空き教室で友野と二人っきり。
普通ならここから恋が始まりそうなもんだが。
「来てくれったってことは、思い当たることがあるんだよね?」
緊張した声音を隠して俺は友野に問う。
実は結構ガチガチだ。
友野から発せられているオーラがいつもと違う。
危ない何かを俺は感じていた。
「まずは謝罪しておくよ。二階堂を抑えられなくてごめん」
おちゃらけた感じのない恭しい謝罪。
まるで燕尾服でも着た紳士が頭を下げているみたいだった。
「どういうこと? お前も関係者なのか?」
「ちょっと待って」
手で制される。
「相島さんは覚悟があるの? 今なら引き返せるよ?」
「そんなにヤバいのか?」
「う~ん。関わらない方が平和だとだけ言っておこう」
覚悟。
それは何のだ?
「私はすでに被害にあってるんだけど? 死でも覚悟した方が良いの?」
「うん」
うんってあっさり言うなよ。
メチャクチャ怖いじゃんか。
だけど、俺がここで逃げて大切な人にも被害が及ぶというのなら。
「死ぬ覚悟はない。だけど戦う覚悟はあるよ。その結果が死なら悔いはない」
死ぬことに悔いがないのは嘘だけどな。
だって俺が死んだら相島 立花を救えない。
それに大切な人たちを泣かせてしまう。
「そうか」
友野は目を閉じて何かを考え込む。
そして頷いた。
「良いよ。味方は多い方が良い」
開かれて露になった両目。
そこには丸の中に逆三角形のマーク。
「俺の能力は『蒐集の瞳』。《絆の結晶》を取り出して宝石に出来る力」
「宝石?」
「うん。《絆の結晶》は普段、目に見えないし、触ることも出来ない。だけど俺の能力で本物の宝石のように見たり触ったり出来るようになる」
そういえば神様は《絆の結晶》を宝石に例えていた。
「《絆の結晶》に金銭的価値があるの?」
「うん。種類にもよるけど、俺たちの知っている宝石並みには。中には貴重すぎて土地とかと交換されることもある」
「す、凄いな」
土地とか言われても感覚が分からないが、とてつもなく莫大な金額なのだろう。
いや、待てよ。
「絆を取るって、二階堂と変わんないじゃん」
危うく騙されるところだった。
「いやいや一緒にしないでよ。こっちは相手に影響がないほどの小さな欠片しか貰ってないから。二階堂みたいに乱暴に奪ったりしてないよ」
心外だとでも言うように友野は首を振る。
「だとしても。《絆の結晶》にはその人の人生が記録されてるはず。私からしたら友野も悪い人に思えるけど?」
「確かに《絆の結晶》は"記録"だ。だけど"記憶"からなくなるわけじゃない。だから平気なんだよ」
身体の方の相島 立花に教えてもらったから理屈は分かる。だけどだからといって納得することは出来ない。
影響はないと言われても、人と関わって生きて成長した《絆の結晶》を僅かでも取られるのは嫌な気分だ。
「ちゃんとルールはあるんだろうな?」
無法ならそれこそ天と変わらない。
「あるよ。他人から乱獲出来ないように制限が。まあ、ここで証明は出来ないから相島さんに信じてもらうしかないけどね」




