限界時間
-(VASTY-SYSTEM)-
LIMIT TIME—5:00—
ARE YOU READY?
覚えているだろうか?
鋼鉄丸は、ソハンの家族が何代にも渡って建造してきたものだということを...
そこに現れた文字。その一番上の文字にソハンは微かに見覚えがあった。
「ヴァスティ...?まさか...」
ヴァスティ。それは、鋼鉄丸の初期設計を行った人物。彼の世代で作られた部分は、誰も触ることは無かった。何故なら、彼が建造した部分は完璧すぎたからだ。
そのため、そこに何があるのかを全て把握している人は誰もいなかった。
リミットタイム...限界時間は、五分。
ただ、タイマーはまだ動いていない。
「準備できてるかって...?勿論、出来てるよっ!」
そう叫んだ瞬間、正面の文字が隅っこの方に移動して小さい文字になった。そして、タイマーを刻み始める。
それを見たヒューリーが、軋みをあげながら震え、こちらに突っ込んでくる。
鋼鉄丸は残った全てのシールドファングを射出し、先行させる。
それは、ヒューリーのアームと激しく打ち合い、ヒューリーの速度を激減させた。
「凄い...こんなに早くは動かせないのに...」
ヒューリーに接近すると同時に、シールドファングを下がらせ、残った右側のアームの内側にある武装を出す。
ほぼゼロ距離の魔導砲。ヒューリーはよろめく。しかし、自らのアームで体勢を立て直す。
「まだ、あるんだよ!」
バシュッという音が響くと同時に、ヒューリーの体から棒のようなものが生える。パイルバンカーだ。
そのままヒューリーは、ゆっくりと倒れ二度と立ち上がることは無かった。
限界時間、残り三分半。
ちょうどヴァスティシステムが発動した頃。リアンを連れ去った男は、少し離れた場所でレファレン側の受け取り主を待っていた。
「お、来た来た。」
やって来たのは、男が使っている機体と似ている機体だった。
機体名、ファンスル。レファレンの量産型の機体だ。
男は仕事用にこのファンスルを一機、レファレンから貰い受けた。
それをカスタムし、塗装も変えて使っている。
やって来たのはファンスルのノーマル機だ。着陸しハッチから防護用兼顔バレ防止ヘルメットを付けた男が出てきた。
「引き取りに来た。こちらまで連れて来い。」
傭兵の男は疑い深かった。
「用済みとか言って、撃ち殺したりしないよな?」
返事は無言だった。
「おいおい!それじゃ渡せねぇ...だが、渡さなかったらそれはそれで殺されちまう。...しょうがねぇ...」
そう言うと、操縦席の後ろに乗せていたリアンに向かって言う。
「あー...悪いが歩いて行ってくれないか?あちらさんが殺すって言うんだからよ...悪いな。」
リアンは小さく頷く。
機体から出て、ゆっくりとファンスルの方へと向かう。心の中では、一人の少年の名を思い浮かべながら。
相手側にたどり着いた時だった。
「何の音だ?」
傭兵の男がぼそっと呟いた。そして、似たような音を出していたもの思い出す。
「へぇ...アレを倒すとは、なかなかいい腕じゃなねぇか。」
リアンは、バッと振り向き、その名を叫んだ。
「ソハン!」
勢いよく現れたのは、満身創痍の鋼鉄丸だった。
ヴァスティシステム限界時間まで残り二分半。
そして...
来週は更新出来ないです。なので、再来週ぐらいに更新します。多分!




