旧い敵
街に降ってきたロボットとは別に、街から視認不可能なエリアから街の様子を観察している機体があった。
「シュミレーションよりも遅いな...」
操縦席に座っている男がボソッと呟いた。
街をじっくり眺めて行くと、とあるものを見つけた。
それを見た男は、ハッとした。
「あれは...確か...」
そして、どこかへと連絡を取る。
「例の機体を発見。介入行動の許可を。それと、悪魔を送り込んで欲しい。」
男はそう言うと、自らの機体を静かに動かし始めた。
バンダーにロボットが、入ってきてから約三十分。鋼鉄丸と紅蓮丸は、宿から出た後別行動に入り、ロボットを片っ端から切り刻み、撃ち抜き倒していっていた。
ボルカニカも、無事に機体に辿り着けたらしい。先程、その機体の影を偶然見かけたのだ。
「レーダーの反応は、残り少しだよ!」
リアンが手元の計器を見ながら言う。
「なんとかなりそうだな...」
ソハンがそう呟いた。しかし、バンダーの街は半分以上が火災に遭っている。消火の作業にかかっている住民もチラホラ見え始めている。
こういう場合大抵、事態が落ち着いてきたタイミングで、状況を悪化させる何かがやってくる。
そして、ここにもその『何か』がやってきた。
「ソハン!レーダーに新しい機影が二つ!」
その反応の一つは、ほぼ真上だった。
「後退する!」
咄嗟に、鋼鉄丸を下がらせる。
そこに、降ってくる機体。激しく舞う土埃。
「ここに来て...新手が...」
そう言いいながら、土埃に浮かぶシルエットに見覚えがある気がしてくるソハン。
「ちょっと...なんで...やめてよ...」
リアンも心当たりがあったらしく、顔が青ざめている。
その機体は、あちこちが欠け、胸に大きな穴が空き...六本あったアームは、つぎはぎになっていた。
「なんで...フューリーが...いるんだよ...」
それは、他のロボット同様に禍々しい魔力を放つ、六年前に倒した筈の大型兵器フューリーだった。
それを上空から見下ろす機体。その操縦者の男が、不敵な笑みを浮かべながら言う。
「六年前の...亡霊さ。前のようにはいかない...」
ぎこちない動きで、こちらを向くヒューリー。
次の瞬間、六年前よりも速いスピードで、鋼鉄丸に向かって加速してきた。
「シールドファング!」
リアンが叫び、ヒューリーの攻撃を防ごうとする。
しかし、フューリーのアームの一振りでシールドファング二機が破壊される。
「リアン!魔導弾をっ!」
ソハンが叫ぶ。六年前は、人数が多く一斉攻撃ができたから倒せたのだ。今、ソハン達しかいない。単機では、倒せるかどうか怪しい。
魔導弾が放たれる。しかし...
「ダメだよ!速すぎて当たらない!」
「アームを使う!」
ソハンが、鋼鉄丸の両サイドのアームを展開し、そのシールドで攻撃を流して行く。
「ガドリング!」
ガドリングを乱射する。効果があるかは全くわからない。
「ソハンっ!」
ヒューリーは、ガドリングの弾をなんとも無いように避け...
ガドリングのついたアームを、その周辺のパーツごと機体から根こそぎとった。
側面から火花が散る。ソハンの手元の計器も損傷甚大の警告を発する。
「もう武装は...シールドファングがたったの八機...でも、魔力切れ...使えるのは右側のシールドだけ...」
ソハンが考え込む。しかし、そんな隙は与えないとばかりにヒューリーが、向きを変えてこちらに向かってくる。
「あ...」
鋼鉄丸はアームの直撃を受け、前面装甲を切り刻まれ、地面を滑って行く。
少し、滑った後建物にぶつかりようやく止まった。
「まずい...」
機体からの警告は、真っ赤な状態までになっていた。
ヒューリーが、ゆっくりと近づいてくる。
もうダメだと、そう二人が考えてしまった時、事態が変わる。
ヒューリーが突然、機能停止状態になったのだ。
「えっ...助かった...のか?」
ソハンがイマイチ現実味のない事態に戸惑う。
「ソハン!あれ!」
リアンが上空を指差す。そこには...
「遺跡の時の...」
それは、ウェイク遺跡で襲撃してきたあの機体だった。
その機体は、上空で旋回をしていた。すると、パーツが稼働し、半分人型になった。
そのまま、鋼鉄丸の方に向かって突っ込んでくる。
「やばい...避けなきゃ...」
ソハンは、慌てて動かそうとするが、間に合わなかった。
その機体の先端に付いているアームのようなものにがっちり捕まれ、引きずられて行く。そして、壁に激突しようやく止まった。
そのまま半分人型になっていた機体は、完全な人型になってこう言ってきた。
『さぁ返してもらおう。レファレンにとって必要なものを。』
ツイッターにて、新しく出てきた機体のイメージデザインを公開しています!
次回の更新は来週の予定です!




