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京都四神事件巡り  作者: 雪仲 響


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6/9

羅城門の戦い

 停電で電気の止まった京都は闇に覆われ、建物すら闇と同化していて何処に何が建っているのかさえ見分けがつかない。

 唯一、車のヘッドライトからの明かりが道路を照らし出していて、今まで見たことのない不思議な雰囲気を醸し出している。

「ううっ、怖いです」

 彩夏が俺の腕にしがみついて震えていた、俺も呆然と車のライトに照らし出されている街中を見ているだけだった。

 まだ時間帯は夕方なのに厚く黒い雲の所為で真夜中のように暗く、光の当たらない場所は黒一色になって、奥行きの感覚がないシルエットの世界に、まるで現実からアニメの世界へと入ってしまったように感じる。

 大雨の所為で外に出られない車の搭乗者達も町に明かりが点くの待っているようで、静まりかえった京の町は雨音と雷だけが支配していた。

「響さん!」

「大丈夫、停電しただけだよ、直ぐに復旧するはずだ」

 俺は青龍石を口に入れて空を見上げると、朱と白の光が雲の中で絡み合って光っているのが見えた。

「……白虎が朱雀と戦ってる」

 俺がそういうと彩夏も指輪を口に含んで空を仰いだ。

「あれが?」

 二つの光の中にもう一つ青い光が東の空から飛んできて、その中に加わると三つの光がぐるぐると戯れてるように見える。

「青龍だ……やっと来たか、あの青いのが青龍だよ」

「遠くて光の球にしか見えないですね」

 三匹が集まった事でより一層の轟音が響き渡り、雷が近くにでも落ちたのか離れた建物から出火の赤い炎が立ち昇った。

「ガソリンスタンドに落ちたら大変だし移動しよう」

 俺が彩夏の手を引っ張って羅城門跡の公園まで連れて行くと、公園中央に囲いで守られてる石碑の上に青龍が落ちてきた。

「うわっ……青龍!」

 ふわりと着物をはためかせて舞い降りてきた青龍が、振り返ってこちらを見た。

(響か、よう白虎を連れてきたな、だが状況は芳しくないぞ、ん……その小娘はなんぞ)

「白虎を連れてきてくれた彩夏さんだ」

「……綺麗な人」

(たわけが、妾は人などではないわ)

 冷たい目で青龍が一喝した。

「あっ……すみません」

「おい、折角の協力者に怒鳴るなよ」

(ふんっ)

 じろりと俺を睨んだ青龍が空を見た。

(朱雀の奴は正気でおらぬ、今の朱雀では白虎と二人でもちと辛いかもしれぬ、玄武爺もここに向かってきておるが、鈍亀じゃて其れまで持ち堪えられるかのぅ)

「朱雀を止める事が出来ないのか?」

(正気を取り戻せればそれに越した事はないが……出来ねば、仕様があるまいな)

「俺達に何か出来る事は無いのか?」

(もうお主達の出番はないぞ、この先は妾達の戦いじゃ、そこでよく見て……それならばこれを使うがよい)

 青龍は手にしていた刀を投げると、俺の足元の地面に突き立てて来て驚いた。

(それでこの辺りの物の怪を少しでも退治しておるがいい)

「……俺が?」

(手伝うと言ったのはお主じゃないかえ、妾は朱雀の相手で物の怪どもは相手に出来ぬ、放っておけば町が壊されていくぞ、いいのかえ)

「俺に出来るのか……」

(それはそちの働き次第じゃ、せいぜい頑張るんじゃな)

 青龍は手から新しく出した刀を一振りすると上空へと飛び上がり、白虎達の元へと戻っていった。

「青龍って女の人だったんですね」

「いや、本当の姿はどうか分からないよ、前に白虎がいってたんだよ、人の姿でなにをしてるんだってね、だから青龍の本当の姿はあれじゃないかも」

「青龍ってあんなにきつい性格だったんですね、怖かった」

「……さて、俺もやるしか無いか」

 地面に刺さった刀は青い煙に包まれ、恐る恐る抜いて手に取ってみると、重さを感じないほどの軽さに驚いた。

 龍の刻印を施した鍔に刀身はすらりと一メートルはあろうかという位に長い。

「凄く軽いし空気の抵抗も感じない、こんなので斬れるのか……」

 焦げ臭い匂いが雨の中漂ってくる、何処かで起きた落雷による火事だろうか、一向に復旧しない停電と渋滞でパトカーも消防車もやって来られないのだろう。

 空が建物の燃える火事で赤く染まり出して、時折何かの崩れる音が遠くから聞こえてくる。

 今の京都は火災と大雨、雷で町は混乱している、それも羅城門に集まってくる物の怪達が暴れているせいだ。

「国道の事故みたいに物の怪が暴れると何かしらの災害が起きるんだよな……」

 俺は彩夏を雨宿りの出来る場所で待機させて置いて、その間に周囲の物の怪を少しでも片付けておこうと思った。

「ここにいて、戻ってくるから」

 近くのお店の軒先まで彩夏を連れて行くと周囲を窺った。

 暗闇の中にうごめく青白い大小様々な物の怪が、家々の屋根や壁を叩いたり踊っていたりして、火事をバックに祭りでもしているように騒いでいる。

 俺はまずこの刀がどの位強いのかが知りたかったので、近くで走り回っていた小さな物の怪めがけて斬りつけた。

 黒い影の物の怪は叫び声を上げる余裕すら無く、一刀両断の下、霧散して消えてしまった。

 まるで切ったという手応えがない、空を切るように物の怪を真っ二つにしてしまいまるでゲーム感覚のようだった。

「……これなら」

 羅城門を中心に走り回り、物の怪を見つけては刀で斬り掛かっていく、とは云っても何十、何百の物の怪を斬り殺しても焼け石に水で、其れこそ空を埋め尽くすぐらいの数の物の怪がこの京都に入り込んできているのだ。

 一人で出来る事は微々たるものだったが、それでも町を守りたいという気持ちがあり、今京都で物の怪を相手に出来る人間は俺しかいないのだと思うと刀に力が入る。

 中には人の大きさ程の物の怪や家の高さの者もいたが、俺が見えていないと油断していたのか抵抗される前に倒す事が出来たが、大きな物の怪となると斬った感覚が手に伝わる。

 順調良く物の怪を減らしていくと、公園裏にある幼稚園の門前に明らかに他の物とは一線を画す物の怪を見つけた。

 半透明で青白い猿のような毛むくじゃらの物の怪がうずくまっていて、大岩ぐらいの大きな毛だまりは太く長い腕を地面に着けて、蛇みたいな二本の尻尾を揺らしながら座って園内を覗いていた。

 座っていても背は見上げるほど高く、肩幅も俺の倍以上はあるその大猿は俺の存在には気付いていない。

(こいつも倒してやる)

 と、後ろから近付くと一気に頭上から刀を振り下ろした……が、刀身が当たる瞬間に大猿がこちらに目を向け、振り向きざまに薙ぎ払うように腕を振り回した。

 突風のような空気の塊が横っ腹に入り、俺は後ろに吹っ飛ばされてた、呼吸が出来ず込み上げてくる嘔吐感で地面に吐いてしまう。

「うげえ……、あっああぁ……」

 一瞬意識が飛んで、自分が地面に落ちた時の痛みすら覚えが無く、気がついたら地面を見つめて吐いていた。

 呼吸を大きくすると胸が痛く、もしかしたら肋骨をやられたかも知れないと思うぐらいに苦しかった。

 半透明だった大猿の姿がはっきりと可視化していく。

 顔はマントヒヒのように突き出ていて口からはみ出した長い牙が見える、目の下には緑色の隈があり顔全体は真っ赤だった。

 まるで夜店のカラフルなお面を被ったような顔で俺の方をじっと見ていた。

 青龍の刀の気に反応したのか、大猿は俺が倒れている事が不思議に思い、訝しんでいて追撃もしてこずに観察していた。

 そのお陰で殺されずに済んだが、動けずにいる俺の危機は微塵も変わらない。

 突然、大猿はその場で飛び跳ねて地面を揺らし始めると、周りにいた物の怪達にも伝播していき一斉に祭りのような騒ぎになった。

 辺りの物の怪達が一斉に飛び跳ねると振動が呼応し地面が揺れ始めた。

「地震!」

 地面から伝わる突き上げられる揺れは正に地震そのものだった。

 家々が軋み埃が立ち昇った、暗い雨の中、こんな時に地震かと外に飛び出してくる人々の姿がシルエットで見えた。

 人の悲鳴に興奮したのか大猿の動きも激しく大きくなっていく。

「……ふうっ」

 俺は立ち上がって大きくゆっくりと深呼吸をすると、刀を構え直して大猿に向き合った。

「もうやるしかないよな……」

 飛び跳ねている大猿に走り込んで足を斬りつけると、大声を上げて両腕を振り回してきた。

 後ろに下がり攻撃を避けた俺は、再度隙を狙って間合いに飛び込んだ。

 ピュっと風の切る音と共に相手の脇腹に刀をめり込ませたが、固い木材を切りつけたような音がして刀が抜けなくなってしまった。

 引き抜こうともがいてる間に大猿の腕が頭上から飛んできて、俺は背中を殴りつけられ地面に倒れ込んだ。

 なんて力だ、丸太のような堅い腕を振り下ろされただけなのに、車に轢かれた衝撃が全身に流れた。

 殴られた拍子で抜けた刀と一緒に屈伏した俺は、口から血を流しながら歪んだ景色を見ていた。

(ああっ駄目だ……息が出来ない、避けないとやられる)

 と巡る思考に体は命令を受け付けず、倒れ込んだまま地面を見つめていた。

 そこに大猿の攻撃までの時間がもの凄く長く感じられた、まだかまだかと思って横目で頭上を見ると大猿が苦悶の表情を浮かべている。

 何があったのか大猿は苦悶の声を上げながら霧散して消えていった。

(なにが……起きたんだ)

 倒れた俺の頭上から甲高い男の声が聞こえてきた。

「お兄ちゃん大丈夫?」

 子供の声だった、入らない力をどうにか込めて上体を起こすと、そこには傘を差した男の子が立っていた。

「あっ……」

 細長い笛を咥えた男の子の後ろには、大きなシルエットとなった玄武がいた。

「玄武様やっと来てくれたんだ、この子が連れてきてくれたのか……そうか」

(生きとるか……人の身であの様な物の怪を相手にしてよう生きとったの)

「青龍から受け取った刀なら倒せると思ったんだけど、力の差がありすぎた」

 口元の血を袖で拭いて答えた。

(無理はせんで良い、ここに来る間にいた物の怪共は退治しておいたが、さすがにこの辺りは仰山群れておるのぅ)

「で、この子は?」

 地面にへたりこんだ俺が、玄武に聞くと男の子から返事があった。

「僕は桜田一樹、十二歳」

 はっきりとした元気な声で男の子が答えた。

「そうか一樹君か、わざわざこんなに遠いとこまで来てくれて……もう一人紹介する人がいるから俺とそっちに行こう、玄武様、青龍達はあそこに」

 俺が空に指を差して教えると、

(見えとる見えとる、儂も合流するとしよう、ぼんやその者に付いておれ、何もせんで待っておれば良いからのぅ)

「うん」

(では頼んだぞ)

 玄武がふわりと青龍達の元に飛んでいく、痛む体で立ち上がった俺は一樹と手をつないで彩夏がいる所へと歩いていった。

「こっちだよ」

 一樹の傘に入れて貰いながら彩夏と合流すると、

「怪我してるじゃないですか!」

 と、よたよたする俺を見て声を上げてきた。

「ちょっと大物と戦ってしまってね、手も足も出なかったよ、胸をかなり痛めつけられた」

 服についた血を見て彩夏の顔が青ざめる。

「何処を怪我したんですか、見せて」

「切り傷じゃない、腹と背中をね……はぁはぁ」

 店の軒先に座り込んで鳩尾を見てみると打撲で大きなアザが出来ていた、触ると鈍痛が全身に駆け巡り一瞬息が出来ず硬直するように痛かった。

「内出血してますね、病院に行かないと……骨が折れてると大変ですよ」

「いや、今はまだ……」

 青龍達の戦いの終わりを見届けないと、それに今の町の状況では病院に行くまでの方が大変だろうと思った。

「この子は桜田一樹君、玄武様を連れてきてくれたんだ、お陰で助かったよ」

「今晩はお姉ちゃん、桜田一樹です」

 彩夏が一樹を見てにこりと笑った。

「どうも今晩は西ノ森彩夏です、こんな夜遅くに出歩いてて大丈夫なの?」

「いや、暗いけど時間的にはまだ夕方だよ、けど町がこんな状況だと早く家に帰らせないと親御さんが心配するだろうね」

「大丈夫だよ、僕ん家お父さんもお母さんも仕事だからいつも遅いの」

「まぁそれでも大雨に停電だし……いててっ」

 お腹を押さえた瞬間、ドンッという大きな音が公園からした。

「うわぁ」

「きゃあ……また地震」

「違う、あそこだ」

 公園の中に青龍、白虎、玄武そして朱雀がいた。

 初めて見た朱雀の姿は、広げれば十メートルはあるかも知れない朱い翼と、人一人は飲み込めるかも知れないほど大きな嘴に青い目が、青龍達を威嚇しながら翼をばたつかせていた。

 青龍や白虎の身体には幾つもの羽根が突き刺さっており、顔には疲労が窺え息を切らしていた。

(これほどとは……朱雀やいい加減にせぬか)

 玄武が朱雀に言葉を掛けるが、返事はケェーと鳴くだけであった。

(玄武爺、こやつに妾達の言葉は届かぬ)

(ならばいっそ食ってしまうか)

 白虎が舌なめずりをした。

(馬鹿を言うでない)

(ではどうする、このまま手加減していては町が壊されていくだけではないか、物の怪共も始末せにゃならんのだぞ)

 白虎が反論して唸った。

(……大池……大池……妾の大池は何処じゃあぁぁ、妾は守らねばならぬ、与えられた使命を守らねば……何処じゃ何故ない、大路も見えぬ朱雀大路も見つからぬ何処に消えたぁぁ)

 朱雀の一鳴きは全身が震えるほどに腹に響いてくる、周りの家も震えて軋み、落ちてくる雨も一瞬動きが止まりそうなほど甲高い音で鼓膜が破れそうだった。

(くっ、なんじゃ此奴のこの力は……おっとりとして何事にも忠実で優しかったお主がどうしたというのじゃ)

 青龍は叫んだが相手に届いている感じはしなかった。

「今ここに四神が集まっている……」

 ぼそりと俺は呟いた。

 四神が羅城門跡で相まみえている風景は、幻想的で目を奪われそうであった。

「こんなの……俺達が入り込める余地なんてないな……」

 体の痛みも忘れて四神を見つめた、どの四神も気品と威厳、優雅と力強さが感じられ頼もしくもあり怖くもあった。

(妾は早う大池を見つけねば……守れと云われたのじゃ、果たさねば……果たさねばならぬ)

 またもやケェーと一鳴きすると、上空に羽ばたいていく。

(待たぬか!)

 青龍達も続いて後を追って飛んでいく。

「お兄ちゃん今の凄かったね、かっけえ」

「みんなどれも凄く綺麗で気品に満ち溢れていましたね」

「そうだね、朱雀を初めて間近で見たよ、まさしく怪鳥だな」

 思い描いていた四神、絵画やアニメなどで見ていた物とはかけ離れた美しさに、俺達は顔を見合わせ興奮ぎみに言葉を交わしていた。

 羅城門跡周辺にいた物の怪達は四神に恐れをなして逃げていったのか、しんと静まり返っていた。

 代わりに遠くでは家屋の崩れる音や火災が拡大しているようで、消防車のサイレンが四方八方から聞こえていたが、京都の細い路地に入る事が出来ないのか渋滞で進む事が出来ないのか、サイレンは同じ方向からずっと鳴り続けている。

「物の怪が火事や地震を起こしてるんだ、青龍達もまだ朱雀相手に時間がかかりそうだから俺達で何とか物の怪の相手をしないと……」

「駄目ですよ、じっとしておかないと」

 彩夏が立ち上がろうとする俺を押さえ込んで、立たせてくれなかった。

「けど物の怪が見えるのは俺達だけだ、野放しには出来ないよ」

「じゃあ僕が行ってやっつけてくる!」

 一樹が元気一杯に言ってくれたが俺が首を振った。

「駄目だよ、子供に行かせる訳にいかないよ」

(その必要はない)

 言葉が頭上から投げかけられた。

 目線を上空にやると、空中に幾つもの人が浮かんでいた。

 皆それぞれ変わった形の武器を手にして、甲冑のような鎧を着ている。

「……誰なんだ」

(我は箕星みぼし、青龍様に使える者だ、我ら四神二十八士これより我らが物の怪どもの掃討に取りかかる故、其方らは手出し無用)

「えっ……誰だって? 聞いた事がないぞ」

 俺はもう一度聞いてみた。

(我らは四神様にお仕えする星宿せいしゅくである、ここにいるは青龍様、玄武様、白虎様にお仕えする星宿達である)

「そんなのがいたのか……」

(安心せい、じきに黄龍様も動き出されるであろう、此度の事でかなりご立腹されておられる、青龍様のお供ご苦労であった、お主らは其処で休んでおれ……では)

 星宿という者達が流星みたいに四方八方に散らばっていった。

「お供って……」

「今のはなんでしょう」

「さぁ、青龍に部下みたいなのが居たって事だろう、俺も知らなかったけどこれで俺達の出番も終わりみたいだ、あとは行く末を見守るだけか」

「私達の町は本当に白虎達に守られていたんですね、人は白虎達の守っていた物を壊していく事しかしなかったのに、それでもずっとずっと長い年月守り続けていたんですね」

 彩夏が感慨深そうに言ってきた。

「青龍も言ってたよ、いつかは守るべき物が無くなるだろう、それまで自分達は守り続けるだけだ、とね」

「寂しいですね」

「それは昔の施政者やそこに生きた人達には、こんな風に町が変わるなんて思いも付かなかった事だろうし、良くは成ると感じてはいてもそこにあった物が消えてなくなるなんて想像も付かなかっただろうね、俺だって巨椋池みたいに湖といってもいい位の大きな池があったなんて知らなかったし、それを無くしてしまうだけの人の技術が発展してしまったんだ、たった百年やそこらでね、急激な変化で朱雀が戸惑い狂ってしまうのも分かる気がするよ」

「発展、進歩という名の下で何をしても良いと思うのは人のエゴですね」

「その上に俺達は生きているんだ、俺達も同罪だ」

「…………ええ」

「あの朱い鳥が悪いやつなの?」

 一樹が何の話か理解出来ない様子で聞いてきた。

「悪くはないよ、あれは人間が長い時間を掛けて作り出した罪の結果なんだ、悪いのは人間だよ、罰を受けなければいけない俺達を守ろうと青龍達が頑張ってくれている」

「ふうん」

「一樹君が大きくなれば町は今よりも綺麗になってもいくだろうが、昔からあるものは大切に大事にしてくれよ、必ず何か理由があるはずだ」

「そうですね、古都京都もいずれは……あはっ、何だか考えると泣けてくる」

 彩夏は涙を拭くが、次から次へと溢れてくる涙を押し留める事が出来ずに、ポタポタと大粒の涙が流れ落ちる。

「京都だけではない日本という国自体、古いものを排除していこうとする傾向にあるからね、それは自分に関係が無い必要としていないから、古い物に興味がない現代思考だ、俺達は青龍達が存在している事を知ってしまったから昔からある物、由来のある物を大事にしようと考えを改めただけなんだけどね」

「信仰も薄れてしまって、今じゃ人が神社に行くのはお正月か七五三、祈願するときぐらいなものですよね」

「そういえばそうだね、昔なら何かしらあればすぐに神社にお参りだった気がするよ」

「じゃあ僕が友達に教えてあげる、公園に大っきい亀がいるんだって、僕らを守ってくれているんだって」

 一樹が頼もしく言う。

「それは一樹君だけしか見えない事だから皆に言っても信じてくれないよ、けどこれから一樹君だけでも公園に行った時は玄武様にお祈りでもしてあげれば良いよ、きっと喜ぶと思うよ」

「じゃあ毎日お祈りしに行くよ」

「少なくとも俺達だけはこれからは信じる事にしよう」

「ですね」

「うん」

 取りあえず俺達は青龍達がいる場所を探す事にして、その場から離れていった。

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