あっそ、じゃあいっか。これで話が進むのならそれに越したことはないしね。
次に疑問なのは、何故ここにいるのか。
どうして病院にいるのか、ではなく、どうやって病院にいるのか、と言った方が正しいだろうか。
俺の記憶が正しければ、確かに病院で目を覚ます直前、俺はトラックに轢かれかけていた。
かけていた、という表現なのは轢かれた瞬間の記憶がないからである。
ただ間違いなくあの時の状態から、衝突を避けるのは無理であったはずだ。
なんたって目の前までトラックが迫っていた状況である。さらに言えば猛スピードで突っ込んでくるトラックに衝突する寸前、一度時が止まりさえしたのだ。
正しくは止まったように思えるほど、スローモーションになっていた訳だが。
そのまま時が元通り動き出したとするのならば、やはり、結果的に轢かれてしまったと考えるのが妥当である。
問題はここからだ。
正直に言って、轢かれた俺の希望的観測を加味した上でも、助かる確率は絶望的であったと思う。
ほぼ即死確定の事故だったにも関わらず、命に別状はないの一言で片付くことがおかしい。
ーー一一そう、それがおかしいのだ。
仮に、奇跡的に助かったのだとしよう。
だとしたら、自分で言うのもなんだが、五体満足でここにいることが既におかしい。
万が一外傷がないにしても、少なからずなんらかの後遺症なりだって発症していても不思議ではない。
それが、まるでノーダメージ。
加えて、俺のみならずアキラでさえも。
ここまでくると、奇跡だなんだで片づけられる問題ではない。
少なくとも俺は、そこまで能天気に構えることはできなかった。
しかし、この疑問に関しても、アキラは平然とした装いで答えた。
「そのことについても、今、私が知ってる範囲で答えるわ。
といっても、これに関して言えば流石の私も驚きを隠せなかったわよ。そりゃ、入れ替わってしまったことにだって多少の驚きはあったけど、なんせこの話は文字通りスケールが違うから。
にわかには信じられないかもしれないし、受け入れられないかもしれない。私の与太話だってあきれるかもしれない。
でも、本当の話だってことを頭に入れて聞いてちょうだい」
いつになく念を押してくるアキラ。
とはいえ、実際入れ替わった手前、ここまで念を押されなくても、大抵のことは信じてしまうと思う。
そうでなくとも、ここに至るまでが奇妙奇天烈のオンパレードだったんだ。
ちょっとやそっとのことじゃ、もう驚かない自信がある。
というより、さっきも言ったように、自分が思う一番の驚きを体験してしまったのだ。そうそうそれを超えるエピソードなんて出るはずがない。
「この世界は、私たちが住んでいた世界じゃないわ」
思考回路はショート寸前である。
ミラクル・ロマンスってレベルじゃねーぞ。