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俺はお前で、お前も俺で。  作者: むむ
第1章 〜混ぜるな危険? いいえ、混ぜたら奇険です〜
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ねぇ、もう入れ替わってるし、転生もしてるんだけど?早くない?

 

「おや、顔色が優れないみたいだねぇ。それも鏡で自分の顔を見た瞬間。

 なにか不都合なことでもあったかい? それともまだ、充分に体調が回復してなかったかな?

 それならば悪いことをした。

 ゆっくりと出来ないのは事実だが、それ以前に私は医者だ。患者の容態をまず、第一に考えなければねぇ。

 辛いなら、もう少し休んでくれてても構わんよ?」


「イ、イエ……。オカマイナク……。」


 パニックにはならないとは言ったものの、少なからず動揺は顔に出てしまっていたらしい。


  そりゃそうだ、起きたら病院にいたってだけでもびっくりな話なのに、自分の顔を見たらそれが幼馴染の顔だったなんて、素直に受け入れろという方が無理な話だ。

 先生の言葉は有り難かったが、今はゆっくりと休んでる場合じゃない。

 実際のところ、優しい言葉を長々とかけてくれてたようだが、おや、ぐらいまでしか聞き取れなかったし。

 後はほとんど、右から左に受け流してる状態だったし。

 だからこそ、ここで、こんなところでくっちゃべってる……は言い過ぎか。

 お話をしている場合ではない、と俺は判断した。


「あの、ホントにもう大丈夫なんで……。

 ところで、その、俺……、じゃなくて私を助けてくれた彼は、今どこに?」


「ふむ、君がそういうのなら、君の意思を尊重しよう。

 それで、彼がどこにいるかだね。

 君よりも酷い怪我、というのに、不思議なもので、回復に関して言えば、彼の方が圧倒的に早い。それはもう、不思議なことにねぇ。

 今は自分の病室でゆっくりしているんじゃないかい?

 そうそう、彼の病室はこの部屋の丁度真下だ。まぁ、焦らずに尋ねに行くといい。」


  怪訝な顔をしつつも、先生は言葉を返してくれた。

 知りたいことがわかった俺は、きちんと先生にお礼をしてから、横になっていたベッドから腰を上げた。

 他に何か質問があるかい?と先生は気遣ってくれたが、特に今はないと伝え、そのまま自分の病室から出た。






 さて、このままあいつの病室に向かうのも良いんだが、その前に確認しなければ。

 ん、何をかって?

 ふふふ、そんなものは言わずもがなですよ。

 ならば逆に聞こう。もし自分がある日、異性の体と入れ替わったとして、入れ替わった先の体で、自意識は変わらず、即ち自我は元のままだったとして。

 さぁ、あなたならどうする?

 そう、つまりはそうゆうことだ。これから誰もが思いつく、所謂ベタという行動を取るが、それは誰だってそうではないだろうか。

 誰だってそうするし、無論、俺だってそうする。



 いかんせん、気持ちの切り替えが早いようにも思えるが、そこはなんてゆーか、さっきも言ったように不思議とパニック状態にはなってないから、とゆーか。

 どこかこれが正しいことのような、以前からこの状態が当たり前だったかのような、そんな気持ちで落ち着いている。

 だからこそ、自分がこんな姿になってしまったというのに関わらず、ここまで平静を保っていられる訳だが。

 今の俺のしようとしている行為を、客観的に判断して平静と受け取ってもらえるかは人それぞれだとは思うけども……。

 まぁ、だとしてもここまで気持ちと行動を振り切れる奴なんて中々いないと思う。

 無論、俺を別として、ね。


 いやいや、大体なぁ。仮にも自分が好きだった相手の体と入れ替わってる訳だよ?

 これが何もしないなんて出来るはずがあろうか、いや出来るはずがない。

 そもそも俺がずっと好きだったのに、何も言わなかったのは、善意だとか相手を思ってだとか、そーゆー良い子ちゃんじみた理由では断じてない!


 ただ単純に、相手に好きと伝える勇気のない臆病者だったから。

 伝えることによって、それまでの関係性が崩れてしまうことを恐れ、何もアクションを起こすことが出来なかった、小心者だったから。

 それが今!なんのデメリットを犯すことなく、美味しい蜜を吸うことのできる境遇にいる。

 ならば取る行動なんて一つしかないではないか。

 逆にこの状況にまで陥ってまで、倫理がどうとか、相手のことを思ったらなんちゃらとか言い出す奴がいるとすれば、俺はあえて言いたい。

 お前には、ち〇こ、付いているのか、と。インポテンツの恐れがあるのではないでしょうか、と。


 だらだらと前置きが長くなったが、つまり今俺は、起こしてしまっても仕方がないという、当たり前の選択をしようとしているだけのこと。

 そう、それだけのことだ、間違ってもこれは、自分に言い聞かせている言い訳などでは断じてない。

 では。

 いざ行かん、桃源郷の彼方へ――。




「こちら、早乙女、ただいま女子トイレの個室に潜入することが出来た、どうぞ。

 ……了解した、あとは俺の好きにやらせてもらう。なぁに、心配ないさ、こんな仕事とっとと片づけて、またいつものように朝まで酒でも飲みながらのんびりしようや。

 んじゃ、また後でな。」


 ここが本当の戦場ならば、次のページで俺は間違いなくgo to hellしているのだろう。

 しかし、今の俺に怖いものなんてない。死亡フラグだろうが何だろうが、華麗に避ける自信がある。


 落ち着け、落ち着け俺……。まだ試合は始まったばかりだ。

 ウォーミングアップで全力を出すなど、所詮三流のやること。

 俺ほどの強者になれば、スタートダッシュと同時にフルパワーで駆け抜けるなんて造作もないこと。

 よし、そろそろ良い頃合いだろう。そうだろう。

 ふっふっふ……、堪能しまくってやるぜ、ぐへへへへ……。


 それでは!いただきまs――


「お楽しみのところ悪いんだけどねぇ、これでも一応病院なんだ。

 そういったことは、時と場所を改めてやってくれると助かるんだけどねぇ」


 ついさっきまで聞いていた声が、女子トイレにこだました。


 うん、その、なんだ。

 色々と言いたいことはあるんだが、一つだけ言わせてくれ。


 どうみても完璧に華麗に見事にフラグ回収成功です。

 本当にありがとうございました。





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