#001「ハモり、ハモられ」
@源家
タイラ「急いで鞄を持って出かけたら、実は取り違えてて、中に妹のスクール水着が入ってたって話はしたか?」
サクラ「お姉ちゃんが僕のお弁当を持って行ったから、これからコンビニに行かなきゃって話をしたときに聞いた気がする」
タイラ「そういえば、そんな話を聞いたことがあったな」
サクラ「ねぇ、それで何の話なの? 妹さんが関係するの?」
タイラ「あぁ、そうなんだ。ちょっと前にクレープ屋に行っただろう? あのことで妹になじられてさ」
サクラ「言わなきゃ良いのに。羨ましがるに決まってるよ」
タイラ「俺の口からは言ってないって。どうもクラスの女子から聞いたらしくてさ。何で知ってるんだって訊いたら、公立女子中学生の地元ネットワークを甘く見てはいけないって言われたぜ」
サクラ「侮れない情報網だね」
タイラ「自分には三笠や外郎くらいしか買ってくれないだの、橘が兄なら良かっただの、不満爆発でさ。あまりにもグチグチ言い続けるものだから、今度の休みに奢ってやることにしたんだ」
サクラ「お疲れさま。元を糺すと僕の発案でもあるし、半分負担しようか?」
サクラ、掛けてある上着の懐を探ろうとする。タイラ、それを止める。
タイラ「いや、気持ちだけで結構だ。発端はともかく、妹のワガママに過ぎないんだからさ」
ナルミ「ワガママとは失礼ね。――粗茶ですが」
ナルミ、片足で襖を開け、湯飲みの載った盆を持って登場。
サクラ「ありがとう」
タイラ「事実だろうが。違うっていうのか? それより、立ち聞きするなよ」
ナルミ「聞く気は無かったわよ。それに、事実なら何でも言って良いってものじゃないわよ。もしそういうものなら、あたしも言わせてもらうわ。この前、理科のテスト勉強をしてたとき、あたしの質問に全然答えられなかったじゃない。よく高校に受かったものだわ」
サクラ「妹さんの勉強を手伝ったら、逆に勉強を教えられた訳だ」
タイラ「まったく。一の文句を十倍で返す奴だな、ナルミは。十の注意は一しか聞かないくせに」
ナルミ「大きなお世話よ。あぁあ。何でこんな馬鹿でガサツな人間が、あたしのお兄ちゃんなのかしら」
サクラ「それについては、コメントを差し控えようかな」
タイラ「フォローしてくれよ。――えぇい、小生意気な口をきく奴だな。口論するのも洒落臭い。愛刀の錆にしてくれるわ」
タイラ、押入れから模造刀を出す。
ナルミ「もう。すぐ、そうやって力で抑えようとするんだから。大体その模造刀だって、ふざけて仔鹿に向けたら親鹿に追いかけられた曰く付きじゃない」
サクラ「奈良公園で買ったの、タイラくん?」
タイラ「中学の時にな。――余計なことを言うな」
ナルミ「それは、こっちの台詞よ」
サクラ「まぁまぁ、二人とも落ち着こうよ。フフッ」
タイラ「何で、そこで笑うんだ?」
ナルミ「何にも可笑しなことないと思うけど?」
サクラ「うぅん。ただ、似た者兄妹だなって思ってね」
二人「似てない」
サクラ「息、ピッタリ」




