行商人の湯
ダンジョンを抜けるとそこは銭湯だった。
ドラクロアは猫人族の商人だ。
そして自他共に認める守銭奴でもある。
普段、薬を売り歩いているのも、かさばらないわりに儲けが大きいという理由だけで拘りはない。
金に意地汚く、金の為ならどんな商売でもやるという信条があり、その事に誇りを持っていた。
「へっへっへ旦那お久し振りです」
その日、長い行商を終えて、拠点としている宿場町の酒場の卓で食事をしていると、骸骨のように痩せた男がやってきて、断りもなく向かいの席についてきた。
「何にゃ」
「聞きやしたぜ。儲け話があったとか」
彼は顔見知りの男だった。
詐欺紛いな商売を飯の種にしている連中のひとりで、ドラクロアはこういう輩としか縁がない。
「勿論、大儲けだにゃ」
「何をやらかしたんですか?」
「知りたいかにゃ」
「是非とも」
頷くその男の顔つきからは、おこぼれに預かろうという魂胆が見え見えだったので、ドラクロアはわざとふんぞり返って自慢げに教えてやる事にした。
「おにゃーは黒死の霧って知ってるかにゃ?」
「勿論ですとも。巷で話題になっているおっそろしい病気だ。何でも魔物を凶暴化させ、人を死に至らしめるとかで、陽炎の国が酷いことになってるとか」
「成功はそいつのおかげだにゃ」
「疫病と商売と、どんな関係が?」
ドラクロアは荷を積めた風呂敷包みにごそごそ手を入れると、あるものを取り出してみせた。
それは薬包みだ。
外側に小さな猫の手形が印されており、中にはドラクロアが生成した散薬が入っていた。
「陽炎の国の村々で、こいつを売ってきたにゃ」
「成る程。特効薬で儲けたってわけですかい。けれども旦那、そんな都合のいい代物をどこで手に入れたんですかい?」
「お前は馬鹿にゃ? こいつはどこにでもあるただの滋養薬にゃ」
「はあ?」
「わしはこれを『飲めば黒死の霧の病を防げるかもしれない素晴らしい薬』と言って売ったのにゃ」
「成る程、物は言い様ですね」
「勘のいい連中はそれがただの滋養薬だって気づいてたにゃ。でもにゃ意外なことにそういう奴らに限ってこいつを買っていくんだにゃ」
「何故ですかい?」
「人は恐怖に抗えない。真実がどうであれすがれるものにすがる。効き目があるかもしれないものに手を出すにゃ。ないよりましだろう。いいから売ってくれ。さあ売ってくれ。やれ売ってくれ。数が少なくなったと言えば連中は余計に欲しがるにゃ。金なら幾らでも出す。一包みにつき金貨一枚出そう。そう言う者もいたにゃ……くっくっく馬鹿のおかげで丸儲けだったにゃあ」
「……金貨一枚」
骸骨男が喉を鳴らしたのを見逃さなかった。
自分にも同じ事ができないか算段を巡らしているのだろう。同じ悪党であるドラクロアにはそれが分かった。
だがもう遅い。
この手の商売は時期が肝心なのだ。
ドラクロアよりも悪質な業者が、陽炎の国の城下町で薬と偽って毒薬を売って回ったおかげで、取り締まりが厳しくなってしまった。
今頃、関所では荷の検査が厳しくなっているだろうから、下手をすればそのままお縄になる危険もあった。
「……ところで旦那、その子は?」
骸骨男はようやくそいつに気づいたらしい。
卓の隅には皿に盛られた食事を両手を使って貪っている小さな生き物がいた。
貧民窟の住人のような見窄らしい襤褸布をまとい、顔や腕などを炭のように黒く汚したそれは、人間の子供だった。
「病で全滅した村で拾ってきたのにゃ」
「何でまた?」
「勿論、身綺麗にさせて売り飛ばすのにゃ」
そう言うと、骸骨男は口元をひきつらせ「旦那はえげつねえな」とおざなりな愛想笑いを残してその場から離れていった。
ドラクロアの所行に恐れをなしたようだった。
ドラクロアは小蠅を追い払うことができた事に満足すると、食事を再開した。
さっさと食べて、これからまた出かけなくてはいけない。
旅先から戻ってきたばかりだったが、これからまだやることが幾つか残っていたのだ。
◆
町外れの枯れ井戸の底に転移の魔法陣があるのは、ドラクロアだけの秘密だった。
あそこへ赴く時は、大抵はそこを利用していた。
怖がる子供を抱きかかえると連絡路を経由して紺色の暖簾をくぐる。
そうするとあっという間に、見果てぬ地の公衆浴場へと到着することができた。
「相変わらずしけた銭湯だにゃあ」
「悪かったなおんぼろで」
「う゛にゃっ。ば、番頭さんっ。い、いや趣があると言いたかったにゃ。い、言い間違えただけにゃ」
ドラクロアは慌てて言い繕った。
聞こえないと思って言ったつもりだったが、しっかり相手の耳に入ってしまったようだ。
番頭台の上からジャージ姿の少女がこちらに睨みをきかせている。
彼女がこの店の実質的権力者である番頭だ。
ハーフリングのように背丈が低いと侮る事なかれ、なめてかかるとひどいめに遭うことは最初に訪れた時に経験済みだ。
ドラクロアは彼女の御機嫌を取るべく早速、背負っていた風呂敷包みのなかに手を入れると、荷物のひとつを恭しく差し出した。
「た、頼まれたブツを持ってきたにゃ」
「おう。幾らだ?」
「値上がりしたのでこれだけにゃ」
「高いから負けろ」
「そ、それはできない相談にゃ。わしも食わねば生きていけんのでこれ以上は負けられないのにゃ」
「いいから負けろ」
「ぜ、絶対に無理にゃ。火竜草も鬼殺しの花も今はすっごく高いのに、原価ぎりぎりの価格なのにゃ」
ちっと舌打ちが聞こえてくる。
番頭が相変わらずもの凄い眼力でこちらを睨んでいる。いわゆる『めんちをきる』というやつだ。彼女がもし道中で食わした山賊の類かなにかであれば、ドラクロアは一目散に逃げ出している事だろう。
だがここは商談の場だ。
ドラクロアも商人のはしくれとして気圧されるわけにはいかなかった。
大体、嘘を言っているわけでも話を盛っているわけでもなく、ここで折れれば路頭に迷う可能性もあったのだ。
「ひ、品質には自信があるにゃ。番頭さんなら匂いでわかるにゃ?」
「ふん……確かに悪い品じゃあなさそうだな」
番頭は包みの品を嗅ぎながらそう言う。
それは生薬の詰め合わせだった。
それはこの銭湯の目玉のひとつである薬湯に使われているものだ。
使われているいくつかの素材の産地は陽炎の国で、疫病騒動の影響のせいもあり市場に出回る数が少なくなっていた。そのせいで手に入れるのに金と時間がかかっていた。
揉み手をしながら待っていると、番頭はやがて諦めたようにこちらの要求通りの代金を渡してくる。
「へへでは毎度ありにゃ」
ドラクロアは札束を取り出しささっと数える。
それからすぐに風呂敷包みのなかに突っ込んだ。
金勘定をもたもたするのは三流の仕事。もらえるものは相手の気が変わらないうちにさっさと貰うのが商売人の秘訣ひとつである。
ドラクロアはほっと小さく溜息をついた後、すぐに次の用件に取りかかる事にした。
もうひとつ大事な用事が残っており、今回はむしろこちらが本命だったのだ。
「ところで番頭さん」
「何だ?」
「異世界人でも入館料は子供ならただのいいにゃ?」
◆
「ひいふうみい。はあ……嫌ににゃる。大して儲かってないにゃ」
ロッカーに風呂敷包みをしまうまえに、改めて紙幣を数えてドラクロアは溜息をついた。
借金を返すことも考えると、自分の手元に残る中間手数料は雀の涙しかない。
せめてもの救いは入浴料が一人分で済んだ事くらいだろう。
だがまあいい。今のところこの銭湯への降ろしには競合がいない。
あの番頭からはいつかたんまりふんだくってやるつもりだった。
「……ねこちゃん」
「ドラクロア様と呼ぶにゃ」
先ほどから衣類と格闘していた子供がようやく顔を出すと、こちらを見上げてくる。
着ていたぼろ布のような服は捨て、もっとまともな服を新調する必要があるだろう。
だがそこでまた金がかかるかと思うと憂鬱になってくる。
「もうかってないの?」
「お陰様でちっともにゃ。……でも儲かってないことは誰にも言っちゃ駄目だからにゃ?」
「ひみつなの?」
「そうにゃ。きぎょう秘密ににゃぞ?」
ドラクロアが人さし指を口元にあてると、子供はきょとんとした顔をしたが、すぐに頷いてくる。
何故なら儲かってないのが、バレたら途端に足元を見られることになるからだ。足元を見られたら一巻の終わり。安く買い叩かれて顎で使われる事になるだろう。
商人とは常に見栄を張っていなくてはいけない。
いつでも誰にも弱みを見せず、ふんぞり返って虚勢を張りながら、もみ手をするのが正しい生きざまなのだ。
◆
子供の手を引いて浴室へと連れて行った。
そして洗い場の前にやってくると、蛇口と石鹸の使い方を大ざっぱに教えてやる。
「こっちにゃ。こいつを捻るとお湯がでる。それからこいつを身体につけると泡が出て汚れが落ちるにゃ」
すると子供は言われるままに身体を洗い始めた。
元々口数は少ないが、頭も要領も悪くはないようだ。
手の掛からないのは良いことだと思いながら、ドラクロアも適当に身体を洗った後、湯船へと向かった。
今回の目的は煤だらけで垢まみれの子供を綺麗にすることだったが、折角だからのんびり湯に浸かることにしよう。
大きな泉程もある浴槽にはいつもの年老いた人間がいた。
常連の松爺だ。
「御老体、失礼するにゃ」
そう断りを入れてから湯に入る。
種族は違えど年輩への敬意を忘れてはいけない。
勿論、それこそが商売の秘訣だ。
それだけで周囲の心証がよくなるし、いつか媚びへつらった分だけ大きな見返りが得られるかもしれないからである。
「あんたあ関取取りさんかね?」
「いんや薬売りにゃ」
「そうかいそうかい。わしも昔は蝦蟇油を売って歩いたもんだよ」
松爺はよく分からない事を呟きながら頷いてくる。
呆けているのかどうかは定かではなかったがこの老人と会うと、いつもこの会話をするのがお約束だった。
猫人族のなかでもかなり巨体な部類に入るドラクロアなので、肩まで浸かるとざばーと風呂の湯が溢れかえり、外で洪水が起きた。
洗い場のほうでは子供が小波にさらわれ尻餅をついているのを見て、にゃははと笑う。
それから浴槽の壁を背もたれにしてふはーと一息つくと、ようやく人心地ついた気がした。
「……ふう」
今回はさんざんな結果だった。
一銭の特にもならない旅になってしまったのだ。
確かに疫病のおかげで薬は飛ぶように売れた。
気休め程度と知りながら、誰も彼もが争うように薬を買い求めたからだ。
だからドラクロアも商品を揃えると何度も村へと足を運んだ。
当初の目論見とは違い、薬を売っている時に騙しているという気はしなかった。寧ろ自分のおかげで彼らは病を防げているのだという気にすならなっていた。
あちこちで喜ばれ、もてなされ、感謝されたせいで、正直悪い気分ではなかった。
だがある日を境に商品は全く売れなくなってしまった。
買い手たちが皆死んだからだ。
訪れた村は黒死の霧に襲われ、廃村と化していた。薬を買えなかった者たちも買えた者たちも誰も彼もが、疫病に冒され死んでいた。
あちこちに転がっている死体を目の当たりにして、ドラクロワはようやく自分が売っていたのは所詮、滋養薬でしかない事を思い知らされた。
飲めば少なからず予防効果があるだろうと高をくくっていた。
だが黒死の霧の病の前には、ただの塵屑同然だったのだ。
ドラクロアは死んだ者たちに、責め立てるように追いかけまわされた。
それこそが黒死の霧の恐ろしさ。
魔物をより凶暴化させ、人々を死に追いやった末魔物に変えてしまう病なのだ。
それはさながら地獄のような光景だった。
ドラクロアは死に物狂いでその場から逃げた。
飲まず食わずで何里も駆け、途中いくつかの集落に出くわしたが、どこもかしこも墓場同然となっていた。
最後にだとりついたその村はまだ無事だった。
すでに黒死の霧に侵されている者たちもいたが、健康な者たちも残っていたのだ。
彼らは村や家族を捨てることができず、だがそれでも必死で何とか生き延びようとしていた。
だからドラクロワが薬を持っていると知るや、それを強く求めた。
どれだけ薬に滋養の効果しかない事、それでも病の前には無力である事を説明しようと無駄だった。
彼らは金などいくらでも出すから売れ。隠しているんだろう。さあ出せ。さもなくば殺すぞ。
そうやって農具を武器に脅してきた。
疫病の恐怖は彼らを狂気に駆り立てていたのだ。
ドラクロアはありったけの薬をばらまき、彼らがそれに群がっている隙に逃げた。私財を投入しただけではなく借金までして仕入れた薬だったが命を捨てるよりはましだと思った。
おかげで命だけは救われた。
そして手元に残ったのは僅かな金。
それから、洗い場で石鹸の泡に包まれ羊ようになって笑っているあの子供だけだった。
これを大損と言わずしてなんと言うべきだろうか。
◆
風呂から上がったドラクロアは、ぼんやりしながらいつもの場所に向かった。
乾燥機椅子だ。
革張りの椅子に兜を括りつけてある一見珍妙な代物である椅子が、ドラクロアのお気に入りだった。
こちらの世界の銅貨を二枚入れるだけで、兜から温風が吹き出してたちまち頭部の毛を乾かしてくれる仕組みになっていた。
猫人族にとって毛並みは非常に重要なステータスだった。
簡単言えば湿ってぺっしょりしている奴は不細工でださく、ふわふわもこもしている奴は美しく格好いい。
どちらかと言えば、湿気を吸いやすく、寝やすい毛並みの持ち主であるドラクロアだったが、この椅子のおかげで丁度いい案配のふわふわのもこもこになる事ができた。
ドライヤーで乾かし終わると、未だにバスタオルと格闘している子供を見つける。
頑張ってはいるが所詮は子供だ。背中も頭も全然拭けていなかった。
このまま放っておいて風邪でもひかれたら、品質が落ちるだろうと思い、バスタオルを奪い取ると代わりに拭いてやる。
「ねこちゃん、ふわふわ」
「びしょびしょはみっともないにゃ。身体くらいちゃんと拭けるようになるにゃ」
ドラクロワは自らを守銭奴だと思っていた。
金さえ儲かればそれでいい。薬を売りつけた者たちの健康が、命がどうであろうが興味がない。
常々そう思って商売をしていた。
だがあの日、あの廃村で、絶望してしまった。
結果的に誰一人として助けることができなかった事実に打ちのめされてしまった。
あまつさえ『所詮、自分が売りさばいたのは滋養強壮の薬。病に抵抗できないのは当然の事』と居直る事ができず、自らを呪ってしまう始末だった。
気がつくと屍者に追われながらも、村を駆けずり回って生きている人間を一人でも探そうとしていた。
そして見つけた時には、普段祈りもしない神に感謝してしまっていた。
子供は暖炉のなかに隠れていた。
煤まみれになったその足下には、村じゅうからかき集めてきたらしいドラクロワが売った滋養薬の包み紙が散らばっていた。
それだけで何日も食いつなぎ、生き延びていたのだという。
「ふわふわ、ぎゅうってしていい?」
「服をひとりでちゃんと着れたらにゃ」
最初に見つけた時、この子供は黒ずみの固まりのような生き物だった。
だが今は違う。
身体を被っていた汚れは綺麗さっぱりにとれていた。
人間だったのでその皮膚には毛並みなどなく哀れなほどつるつるとしていたが、頭部にある栗色の長い髪の毛だけはなかなかのふわふわ具合だと思った。
子供は苦心の末、上着を後ろ前に身につけると、にっこりと笑って「きれたよ」と嬉しそうに報告してきた。
◆
松の湯から古井戸に戻ってくると、すでに夕暮れ時だった。
橙色に染まった小道を歩いて、ひとまず宿へと戻る。
歩きながらドラクロアは次の商売について考えていた。
これから何を売り歩くべきだろうか。
まず滋養薬はもう駄目だ。
黒死の疫病にはどんな薬も効き目がないという噂が広まっていたし、取り締まりが厳しい。
危険を冒してまで得られるものも少なかったし、何よりあんな思いは二度としたくなかった。
噂では、木馬の国の周辺で、武器が飛ぶように売れると聞いている。
黒死の霧の影響のせいで、魔物による被害が大きくなっているのが原因だったが、それだけではなくあちこちで焦臭い噂が飛び交っているせいだ。
多分、戦争が近いのだろう。
「……」
ならば先を読んで傷薬や非常食を売るのが正解かもしれない。
戦争が起きるかもという噂で人々を煽れば飛ぶように売れるだろう。
いっそ木馬の国の軍あたりに直接売り込みに行くのも良いかもしれない。だがその為にはまず伝手を作らないといといけない。
それから更に考える。
道中、黒死の霧の病に効果のありそうな薬を探してみるのもいいかもしれないと思った。
そう簡単には見つかるとは思えないが、見つからないとも限らない。
勿論、それは誰かを救いたいとかいう浅ましい考えからでは断じてない。
もしそんな薬が手には入れば、誰も彼もが欲しがる肉球印の特効薬が完成し、その時こそドラクロアの商人としての名声が広まり、大儲けできるに違いないからだ。
「……ねこちゃん」
「ドラクロア様と呼ぶにゃ」
ドラクロアの肩の上にいる子供が話しかけてくる。
「これ、あまくておいしい」
「風呂上がりの珈琲牛乳は格別なのにゃ。有り難く飲むにゃ」
いい加減、この子供の事も考えないといけない。
勿論、簡単に金に変えるつもりはない。
大切な商品だ。ゆくゆくは大金に変わる金の卵であると思っている。
手に入れた品に何もせずに売るのは馬鹿の仕事だ。
右から左に流すだけでは大した儲けなど得られるわけがないというのがドラクロアの持論だ。
自分が取り扱っている滋養薬がいい例である。
あれは元は道ばたに群生する薬草だ。
それを煮詰めて煎じて粉にした後、肉球印の薬包紙に入れているから、そこそこの値で売れるのだ、
つまりどんなものでも、付加価値をつけ外装を施してこそ商品となりうる。
幸いこの子供は頭が良さそうだった。
器量も悪くないだろう。
身ぎれいにさせて、商売についてのいろはを仕込んだ上でやれば、ドラクロアの商売に色々と役立つに違いなかった。
「さあ行くにゃ。食い扶持が二人になったから頑張ってかせがにゃきゃならないにゃ」
「あい」
そうしてドラクロアは新しい商売に胸を膨らませるのだった。
松の湯豆知識その④
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番頭さんはこれに座りながら二本目を空けるそうです。
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