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前章とのつなぎですが、部類的には新章突入です。
「えっと、つまり君は帝国側の暗殺者で、俺を殺すためにここに来たと?」
「そう、けどお姉さまに叩きのめされた」
何度かアンジュが夜中にベッドを抜け出すことはあったが、まさかそのたびに暗殺者を撃退してたわけじゃないよな?
俺はアンジュに視線を向ければ、アンジュはニコッと笑みを浮かべる。
可愛いな……いや、騙されんぞ!
「アンジュ、俺ってそんなに暗殺の危機にあってたのか?」
「暗殺だと五回かな。他に、既成事実作りたい子が七回来たよ」
「既成事実の方が多いのか……」
「平民出身のサポートメイドにとっては、エルド君は最高の存在だからね」
平民出身で、名誉貴族で、姫様の近衛騎士。手に入れられれば、確かにこれほど将来有望な存在はいないだろう。けどだからって既成事実狙うか? しかもこちらはアンジュと結婚しているんだぞ?
「アンジュとの結婚は抑止力にならなかったのか?」
「なったと思うよ? けどエルド君分類上は貴族だし妾さんもありだと思われたんじゃないかな」
「なるほど。それで毎回撃退してくれていたと」
「それも奥さんの役目だからね!」
「頼もしいよ、ほんと」
アンジュが親指を立ててグッとポーズをとる。それを見て苦笑するしかないのが俺だ。
まあ、それはいいだろう。身内に体を狙われるというのもなかなかの恐怖だが、今の問題は目の前の暗殺者だ。
「んで、君は自分を帝国の暗殺者だと暴露して、今後どうしたいんだ?」
そこが全く分からない。というか、この子が何を考えているのかが根本的に分からない。
暗殺者なら、暗殺に失敗したら情報が洩れないように自害するもんじゃないのか? それとも俺の考えすぎで、失敗したらそのまま逃がしてもらえるとか? いやさすがにそれは無いだろ。
戦争してるんだし。
「ん、私はお姉さまの側にいたい。そのためならなんだってする」
「それはつまり、君の知っている帝国側の情報も全て教えてくれるという事か?」
「可能。けど、私が知っていることは少ない。私は最初から暗殺者を作るために育てられていた。必要な情報は最低限しか教えられていない――と思う」
「それでもかまわない。君の知っていることを全て教えてもらう。その上で、君の処遇は判断する」
「分かった」
エイスは一つ頷き、彼女の生い立ちから知っている情報まで全てを話し始めた。
俺はそれをメモしながら、聞いていく。
エイス自身は元々孤児だったようだ。それを帝国が引き取り、暗殺者として育て上げたらしい。
エイスの所属する部隊は書類上は存在しないが、今のところ十二人の暗殺者がおり、エイスはその八番目。だからエイスと名乗っているようだ。名前を奪い数字で管理するなど、人間性など鼻から考えていないようだ。まあ、暗殺者を作るんだから当然か。
エイスの部隊は、帝国の中でも皇帝にかなり近い位置にある部隊らしく、その命令権は皇帝にしかないのだとか。時には内部の粛清にも使われているらしく、エイス自身も何度か帝国貴族の屋敷に忍び込み、そこの主を殺しているようだ。
そして、今回の任務も当然皇帝からの命令で動いているようで、もしカメントリアが落ちるようなことがあれば捕虜に混じって王国側に侵入。俺を殺害することが目的ということだった。
どうやら俺は皇帝にも目を掛けられているらしいな。
しかし、皇帝は八将騎士もそこまで信用していないのだろうか。帝国最強の八人のうちの一人を出しておいて、その上保険を掛けるとは。
「エイスは八将騎士に関しては何か知っているか?」
「深くは知らない。市民ならば知っていることに毛が生えたぐらい」
「構わない。教えてくれ」
ここで聞き出せる情報は全て得ておきたい。今後、その八将騎士と戦う必要性が出てくるだろうからな。
「八将騎士……今は一人死んだから七人だけど、カンザス閣下の実力はその中でも一番下。四位まではカンザス閣下とそこまで変わらないみたいだけど、上の三人は別格だって言ってた」
「誰が言ってたんだ?」
「私たちを管理していた人。彼らを怒らせたら、ゴミのように殺されるから極力近づくなって言われていた」
「そうか」
かなり気難しい連中のようだ。
「武装とか分かるか?」
「そこまでは分からない。ただ、カンザス閣下のような特化型ではなかったはず。閣下は八将騎士の中でもかなり特別な戦い方だったから」
カンザスは部下を全面に押し出し、集団の戦闘を得意としていたようだ。
ただ、今回の戦いでは部下が無駄死にになると分かって、少数での戦闘を挑んできていたみたいだな。リゼットっていう相棒がいたのもその理由になるだろう。
「そうか。まあ、とりあえずこれぐらいか?」
一通り聞きたいことは聞けたかと、とったメモを確かめる。
これ以上は、やっぱり専門の連中じゃないと気づけないだろうし、とりあえずは一旦姫様に相談かね。一応協力的だし、発見速処刑ってことにはならないとは思うけど。
俺がチラリとエイスを見れば、エイスは不思議そうに首を傾げる。
深い青色の髪がサラリと揺れた。
「アンジュ、エイスの監視任せていいか。とりあえず俺はこのことを姫様に伝えてくる」
「分かった」
「んじゃよろしく」
俺は自身のテントを出て、姫様のいるテントへと向かった。
「我が騎士、あなたもなかなかトラブルメイカーね」
「いやいや、姫様ほどではないですよ」
フッフッフと笑みを浮かべつつ、お互いに牽制する。夜更けまで仕事をしていた姫様は、早朝にたたき起こされて結構機嫌が悪い。急いで服装を整えたのか、髪の一部に寝癖が残っていた。
「とりあえず事情は分かったわ。その暗殺者、実力的にはどうなの?」
「アンジュが言うには、普通のサポートメイドだと少しきついかもしれないとのことです。上位陣になれば対処は可能かと。首席卒業レベルであれば、即座に鎮圧できると自慢してましたが」
「まあ、アンジュができたってことはそうなんでしょうね」
「問題は彼女の扱いです。一応暗殺者として送り込まれてきてますし」
「彼女自身は協力的なのよね?」
「ええ」
「なら亡命扱いってのも可能よね」
その手があったか。帝国側からの亡命扱いにすれば、情報を渡すだけ渡して後はある程度の監視を付ける程度でいい。そこまで行動を束縛することはしないだろう。
その監視はたぶん俺とアンジュになるのだろうか。まあ、エイスがアンジュにべったりだし、その可能性が高いだろう。
「そのように処理しますか?」
「待って。さすがにいきなり亡命扱いにすることは無理よ。一応暗殺者なんだし、本当に改心しているかの判断もできない。しばらくは牢屋で生活してもらうことになるわね」
「まあ、仕方がないですね」
与えられた情報が嘘とも限らない。真実の確認が取れるまではこちらで拘束させてもらうのがベストだろう。けど今使える牢屋なんてあっただろうか?
「牢屋はどこを使うんですか? カメントリアのところはさすがに無理ですよ?」
エイスたちが収容されていた牢屋も、建物自体がボロボロでいつ崩落するか分からない。さすがにそんな場所には入れておけないし、かと言ってテントでは警備の面で柔すぎる。実際簡単に抜け出されているしな。
「δブロックの基地に渡すしかないわね。それまではアンジュたちで監視をお願い。その分のサポートも回すわ」
「分かりました。休暇が遠のきそうですね」
「あら、連れて行ってもいいわよ。あなたたちが信頼できると判断したならね」
「また難しいことを……」
相手の真意の確かめなんて、時間かけてじっくり調べるしかないのに。
そもそも監視しながらバカンスなんてできるのか? いや、エイスはアンジュにべったりだったし、俺たちが移動したら勝手に付いてくるか。けどそれじゃアンジュと二人っきにりなれない。家族サービスの意味がない!?
「まあどっちにしろ、しばらくは基地の確認とかで移動もできないし、我が騎士たちに見てもらうしかないわ」
「仕方がないですね。とりあえず監視する方向で話を付けます」
「お願いね。じゃあ私はもうひと眠りするわ」
「朝早くにすみません」
「さすがに暗殺未遂じゃ仕方ないわよ」
姫様は、手をふらふらと振りながら着替えるためか奥の布で仕切られた空間へと入っていく。
俺は側付きの人たちに促され、早々にテントを後にするのだった。
自身のテントへと戻って来た俺は、姫様との話し合いの結果を二人に伝える。
アンジュとしてはやや不服そうだ。まあ、俺を殺そうとした相手が常に側にいることになるのだ。不服にもなるだろう。その上、休暇を潰されかねないからな。
逆にエイスは機嫌が良さそうだ。暗殺者の訓練に表情を出さないものがあるのか、笑顔にはなっていないのだが、その雰囲気から幸せオーラがあふれ出している。
尻尾が付いてたらブンブン振り回してるだろうな。
「サポートは明日には来ると思う。とりあえずはそんなところだな」
「はぁ、仕方ないよね」
「大丈夫。お姉さまたちに迷惑はかけない。常にお姉さまの側にいるから」
エイスは隣にいたアンジュの腕をギュッと握る。
アンジュは疲れ切った表情でそれを受け入れていた。
「抵抗しないんだな」
「疲れるだけだもん。というか、さっきからずっと抱き付いて来ようとするんだよ!? どこか妥協点出さないと、疲れそうで」
「ああ、なるほど」
暗殺者として育てられた技術の全てをもって抱き付いて来ようとするわけね。
スゲー惚れられてんな。
けどなんでそこまで惚れられた?
「エイス」
「なに?」
「アンジュのどこが気に入ったんだ?」
「お姉さまは美しかった。私を倒した時の姿がすごく綺麗で、格好良かった。あの姿を見せられて、惚れない者はいない」
「そ、そうか」
俺の理解の及ばない世界がそこにはあるらしい。
「とりあえず決まったことはそれだけだ。エイスは亡命者として俺とアンジュが監視することになる。多少は窮屈もあると思うが、協力的だと判断されればじきに移動制限や監視もなくなるから」
「構わない。むしろ、お姉さまになら全てを見せられる。なんならここで脱ぐことも」
「ダメ!」
エイスが自らの服に手を掛けた時点で、アンジュがそれを抑え込む。
そして俺を睨み付けた。
「エルド君」
「そこで俺を睨まれても……エイスも、そんなことは頼まないから、普通に過ごしてくれ」
「分かった」
エイスは少し残念そうに服から手を離した。それを見てアンジュはホッと息を吐く。
これはアンジュの疲労が大変なことになりそうだな。早めにエイスとのかかわり方を決めて気持ちを切り替えないと。
「こんなところか。んじゃエイス用の道具とかテントに運び込んで、その後はオレールさんたちに事情を説明しにいかないとな。俺は手配してくるから、アンジュは朝飯頼む」
俺たちが監視役になるってことは、オレールさんたちも会う機会が多くなるはずだしな。ある程度のことは説明しておかないと。
「分かったよ」
「お姉さま私も手伝う」
「いや、一応暗殺者なんだから、じっとしててね。エルド君のご飯を作るのは私の仕事なの!」
「仕方ない」
こちら側に溶け込む気満々のエイスを見て、俺は大きくため息を吐くのだった。
◇
カメントリアから東へ進み、二国の緩衝地帯を抜けて帝国領に入って一日。そこに傷だらけになった帝国の部隊がいた。その足取りは、非常に重い。
当然だろう。基地を廃棄し、背水の陣で飛び出した部隊は、王国軍の猛攻に合い最初の半分近くまで減っていた。
これでも、決死隊のおかげで守られた方だろう。
その事実が、余計に帝国兵たちの足取りを重くさせていた。
そんな隊列の最後尾に、リゼットの傭兵団がいた。
「隊長、すっごく暗いですね」
「ま、当然だね。こんだけボロ負けしたんだ。あいつらの自信もプライドもボロボロだろうよ」
話しかけてきた団員に、リゼットはやや疲れた声音で返答する。
脱出時リゼットも必死に戦い部下を守ったのだ。戦闘の疲労を引きずったままの行軍は非常に疲れる。
だが、リゼットの心は基地にいた時よりも少しだけ軽かった。
「団長、そろそろですよ」
「分かってるよ。あんたらも本当にいいんだね」
副団長テレセナの言葉に、リゼットは一つ頷き部下たちに最後の確認をとる。
部下たちはリゼットの問いに笑顔でうなずいた。
「当然ですよ」
「私たちの団長が決めたんですから」
「信じてますよ!」
「男がいるならどこにでもついていきますよ!」
「まったく馬鹿どもが」
これほど頼もしい部下たちを持ったのだ。
ならば、自分は彼女たちを存分に楽しませつつ、自分もやりたいことをやろう。
そう決めたあの夜から、リゼットの心は軽くなっていたのだ。そして、王国の追ってが来ないここで、その計画を始める。
「んじゃ行くよ。あたしたちは、享楽のために生きるんだからね!」
機体を操作し、行軍から外れる。
部下の乗っていた馬車もそれに合わせて隊列から外れた。
すると、最後尾を同じように警戒しながら進んでいたアルミュナーレの一機がその動きに気づく。
「おい、どこへ行く気だ」
「この部隊から抜けさせてもらうのさ。あたしたちの仕事は終わったからね」
「そんなことが許されると思っているのか!?」
「許されるさ。傭兵の部隊からの離脱に関して、帝国側は戦闘時以外であれば自由を認める。契約時にちゃんと書かれてるよ」
「だが……」
契約である以上、騎士が強く出ることは出来ない。傭兵の契約は帝国との直接契約だ。それに異を唱えることは、そのまま帝国の考えに反発することになる。
「なに、今回の報酬を後から強請るとかは無いから安心してくれよ。それに王国側に付くつもりもない。あいつらはあたしの復讐相手だからね」
「ならばなぜ離れる。部隊にいたほうが勝率は高いだろう」
アルミュナーレが一機で戦うのはそれ何のリスクを伴う。燃料、弾薬、装甲の予備、例を上げればキリがない。それをサポートするからこそ、帝国側に傭兵が付くのだ。
「そうかもしれない。けどね、あたしはあたしの気持ちに素直に戦いたいんだよ。それに、今回の戦闘でカメントリアはほぼぶっ壊したじゃないか。となれば、次に王国が来るとすれば、それはここじゃない」
「まさか、別の方面から攻めてくるとでも? 王国はここ数十年緩衝地帯を超えて我が国に戦闘を仕掛けたことは無いんだぞ?」
「昔は昔。今は今。向うは王様も死んでんだろ? トップが変われば考えも変わる。それにね、あいつがここで止まるとは思えないんだよ」
思い浮かぶのは、片腕のアルミュナーレ。あれだけの対策をとったにも関わらず、カンザスが自爆しながらギリギリ倒すことのできた相手。しかし、操縦士は死んでいないことを確認している。
あの相手が、ここで止まるとは思えない。
「隻腕を殺すのはあたしさ」
「ふん、好きにしろ」
騎士は、リゼットの説得を諦め、隊列に戻っていく。
リゼットは、それをモニターで眺めながら、街道を進み続けた。
部隊を外れて一日。リゼットたちは順調に街道を進んでいた。
目的地は後一日ほどのところにある町イノシシレード。大規模や基地や補給拠点こそないものの、大きな町であり食糧の補充などならば十分に可能な町だ。
そして何よりも重要なのが、緩衝地帯へと入り口に続く町でもあるということだ。
リゼットは、ここでしばらく待機し、王国側の攻撃に合わせて出撃するつもりだった。
「隊長、止まってください!」
そう言ったのは、偵察のために馬を走らせていた部下だ。
傭兵団とはいえ、その動きはアルミュナーレ隊とそれほど変わらない。当然その中にはアルミュナーレに先行して情報を集める偵察役がいる。
「どうしたんだい?」
偵察役が止まれというのならば、先に何かがあるということだ。
リゼットは機体を停止させる。
「少し行ったところに二機アルミュナーレを確認しました」
「二機も? こんなところで?」
「ええ、機体が黒かったので別の傭兵だと思うんですけど、二機もあるってことは、合同で動いてるってことですよね? なんだか面倒ごとの匂いがするんですけど」
「なるほどね」
傭兵団とて、仕事によっては何個かの合同で行うこともある。しかし、この街道でアルミュナーレが二機必要になる仕事があるとは到底思えない。
もしそれがあるのだとすれば、相当な厄介ごとだ。かかわった時点で、こちらの計画すら変更を余儀なくされる可能性もある。
「どうしますか、進路変えます?」
「そうだね……いや、残念ながら間に合わなかったみたいだ」
偵察担当の意見に賛同しようとして、リゼットはため息を吐き諦める。
そしてモニターを拡大し、街道の先を見た。
「つけられたかねぇ」
「うそっ!? 気づかれなかったはずなのに」
「先に向こうの偵察にバレてたんだろ」
「うう、ごめんなさい
「仕方ないさ。さて、相手はどこの傭兵団だい?」
拡大したモニターを見て、リゼットは相手の機体を確かめる。
傭兵団の機体は、国の物と違って統一されていない。ジャンク品や改造パーツを多く装備しているため、独特のシルエットが多いのだ。
だからこそ、機体や武装を見ればある程度の健闘が付くのだが――
「あの機体」
リゼットは二機のアルミュナーレのうち一機に見覚えがあった。
そして、その機体から声が聞こえてくる。
「やあ、久しぶりだね。享楽のリゼット」
「戦闘狂フォルツェ」
過剰な装備もなく、装甲も多少手を加えた程度で大きな改装後の無いシンプルな機体。
しかし、その機体から感じる気配は、とてつもなく危険なものだ。
「ってことは、その隣が」
「初めまして。レイラよ」
「あんたが噂の裏切り姫かい」
「その呼ばれ方は嫌いよ」
「ぴったりだと思うけどね」
「喧嘩売ってるなら買うわよ?」
レイラの機体がその手を剣の柄に掛ける。リゼットも剣へと手を伸ばそうとして、それをフォルツェが止めた。
「ここには戦いに来たわけじゃないだろ。隊長に怒られるよ」
「仕方がないわね」
「それで、あんたたちがこんなところで何してるんだい? カメントリアでの戦闘なら、帝国の負けで終わっちまったよ」
「知ってるよ。僕たちはそのことで享楽に提案があるんだ」
「提案?」
「隻腕に負けたんだよね?」
「随分と情報が早いじゃないか」
まだ部隊は撤退の最中であり、到底末端の傭兵部隊に情報がいくようなタイミングではない。なら何故そんなことを知っているのかとリゼットはいぶかしむ。
「そりゃ知ってるよ。僕たちは隻腕の情報は最優先で仕入れているしね。彼がクロイツルにいる時から、ずっと情報だけは追っていた。だから、君が負けたことも、カンザスが死んだことも知っている」
フォルツェの言葉に、リゼットは無意識に操縦桿を握り込む。
「隻腕は僕の獲物だよ。だけど、享楽のも復讐したいんだよね? 僕が戦うと、そのチャンスは無くなっちゃうからさ。だから提案。僕たちと一緒に来ない? そうすれば、僕が戦う前に彼と戦えるよ?」
「それは……」
「そのために部隊を抜けてこっちに来たんだろ?」
「そこまで分かってるのかい」
リゼットは一瞬だけ悩んだ後、答えを出す。
「いいよ、あんたらと一緒に行動してあげる。エルシャルドのところに案内しな」
「そう言うと思ってたよ」
操縦席の中、リゼットの答えを受けフォルツェはニヤリと笑みを浮かべるのだった。




