表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導機人アルミュナーレ  作者: 凜乃 初
カメントリア奪還戦
89/144

5

 エルドが二人の相手をしている頃、アブノミューレ部隊たちも戦闘を開始していた。

 指揮を執るジェード部隊長は、護衛であるアルミュナーレ隊の機体に同乗させてもらい、戦場の全体を確認する。


「第三部隊は前進! 第四部隊は後方から援護射撃! 第五部隊は迂回しつつ右側面へ向かえ! 戦場は左側に流れているが、エルド隊長たちの攻撃の流れ弾には気を付けるように!」


 ジェードの指示に、各部隊の部隊長から了解の言葉が返ってくる。

 アブノミューレ部隊には、それぞれにまとめ役である部隊長が選出されており、その機体には分かりやすく顔が青色に塗られている。

 彼らは、これまでの先頭の中で活躍してきた優秀な兵士ではあるが、やはり集団指揮と言う物に対しては素人同然だった。

 だからこそ、その指揮を任せられるものがいれば、本来の力を発揮することが出来る。


「第三部隊、俺に続け!」

「第四部隊、撃ち方始め! 第五部隊の援護も忘れるなよ!」

「第五部隊、一気に敵を食い破るぞ。伸びてきた戦線を叩く!」


 本来ならば、部隊の後ろから指揮をしてもらいたいところなのだが、アルミュナーレの騎士を目指していた彼らには後方で構えるということを知らない。

 むしろ、自身の力を信じ、先頭に立って部隊を鼓舞している。

 だがだからこそ、アブノミューレ部隊の士気は驚くほどに高かった。


「部隊長に負けるな!」「俺たちも続くぞ!」

「俺のスナイプは世界一!」「それエルドさんの前でも同じこと言えんの!?」「すんませんでした! 世界二位です!」

「イネス様のために!」「姫様のために!」「イネス姫のために!」

「女だって、舐めるんじゃないわよ!」「男を殺しなさい! 女の強さを見せるのよ!」


 ジェードは、アブノミューレ部隊から漏れ聞こえてくる声にやや引き攣った笑みを浮かべつつも、上手く動けていることにホッと一安心する。

 演説でこそ認めてもらえたが、やはり指示が上手くいくのか不安はあった。

 だが、見たところそれも問題ないようである。後は、今後の展開を予想しながら、分かりやすく指揮を届けなければならない。

 そのためには――


「では私たちもそろそろ向かいましょう」


 通信機がまだ存在しないこの世界で、常に指揮の声を届け続けるのは至難の業だ。

 兵士隊では、太鼓の音や、旗の動きを覚えさせることで次の作戦を伝達していたが、当然アブノミューレ部隊にその知識は存在しない。

 ならばどうするか。

 簡単だ、近くまで言って直接指示を出せばいいのだ。


「しっかり掴まっていてください。いつ流れ弾が飛んでくるとも限りませんから」

「信頼していますよ。隊長」

「期待にお応えしましょう。第十アルミュナーレ隊モゾロフ動くぞ! 周り注意しろ!」


 周りに注意を促しつつ、機体が一歩を踏み出す。

 徐々に加速させつつ、前線へと近づいていくと、遠くでは見えない光景がよく見えるようになってきた。

 ぶつかり合うアブノミューレたちの光景は、ジェードがよく知る歩兵戦のそれだ。

 だが、歩兵戦ではありえない光景もあった。


「これで! しまった!?」


 一機のアブノミューレが敵の胴体を突き刺す。一瞬の歓喜の直後に、操縦士は焦ったように機体を後退させる。

 すると、貫かれた機体が光を纏い突如として爆発したのだ。

 ジェネレーターを破壊されたことによる、魔力液(マギアリキッド)の暴走だ。

 爆発の威力は、アルミュナーレのジェネレーターとは比べ物にならないほど小さなものだが、それでもまともに受ければ無傷では済まない。


「ジェネレーターの爆発には注意しろ! 破壊しても構わないが、爆風を受けるとこちらも大破する危険があるぞ! 最悪盾で受け止めろ! 操縦席を守ることを優先するんだ!」


 歩兵隊にとって何が最も重要か。それは兵士の数だ。

 数多ある陣形や作戦、その数々は歩兵の数がいてこその物である。だからこそ、歩兵隊では自らの命を守る方法も訓練の中で叩き込まれる。

 それが次の作戦を成功させる鍵となるからだ。

 アブノミューレ部隊の操縦士も、訓練の時間を考えれば歩兵よりも遥かに貴重な存在だ。簡単に失われていいものではない。


「モゾロフ隊長、もしこの機体で助けられるものがいれば割って入ってもらって構いません。兵士は貴重な存在ですから」

「分かりました。では私は砲撃部隊を守りましょう。前線にはあの二機もいますしね」


 モゾロフはジェードの提案を受け、さらに自身の機体を前へと進ませる。しかし最前線までは進ませず、砲撃部隊の援護へと回った。


「あの二機――ああ、特殊部隊の」


 モゾロフがモニターの中の二か所をズームする。そこには、アブノミューレを蹂躙する二機のアルミュナーレがいた。バティスとエレクシアの機体である。

 バティスは、正面から突っ込む部隊に同行し、先陣を切って敵部隊へと飛び込んでいた。その戦い方は単純で豪快。

 両腕に持った大剣を振りまわし、周囲の敵を真っ二つにしていくのである。

 しかし、豪快だからと言って敵の攻撃を受けているわけではない。

 振り回す大剣の遠心力を上手く使い、機体を移動させながら敵の攻撃を躱しつつカウンター気味に敵を切り裂く。

 アブノミューレでの訓練が活きた成果だ。

 敵の攻撃を予測しながら、次の攻撃を繰り出すために最適の動きをする。

 対してエレクシアの機体は、横から敵を包囲するための部隊に付いて行動していた。

 バティスが先陣を切ったのに対し、エレクシアはアブノミューレの集団の中で味方を助けながら動いていた。

 敵味方入り乱れる中で駆けまわり、敵の足元を切り裂きバランスを崩す。やられそうな味方機を庇い、敵の武装を破壊するなど、アブノミューレたちを活かす戦い方だ。

 バティスの戦い方は確実に破壊して数を減らしていくものだが、エレクシアの戦い方は味方に撃破を任せて数を稼ぐ方法だった。

 撃破数としては成績を稼げるものではないが、多くの敵を相手にする場合味方の消耗も抑えられる動きである。

 ジェードとしてはエレクシアの動きに感心する。

 あれならば、味方が敵を撃破することで自信を付けつつ、味方の命を守りながら戦うことが出来る。


「どちらも優勢に進められているな。これなら、長くかからず制圧できるはずだ」

「ええ、向うにはアルミュナーレもあまりいないみたいですからね。おそらくけん制なのでしょう」

「それもあるが、やはり彼だ。あの二機を抑えてくれている彼がいることが大きい」


 順調な進軍に一安心しつつ、ジェードはモニターの端に映っている戦闘に目をやる。

 そこでは、二機のアルミュナーレに対して、一機のアルミュナーレが獅子奮迅の健闘をしていた。


「アルミュナーレとはあれほどの動きをするものなのだな」


 ジェードは今まで何度かアルミュナーレ同士の戦闘を間近で見る機会があった。しかし、それのどれもが練習試合であり、本気で戦うアルミュナーレというものを見たことがなかったのだ。

 そのため、エルドの機体の動きに驚かされる。

 敵の斧をさばきつつ、後方から適格に機体を狙ってくる魔法を躱し、躱しきれなければ剣を使って軌道を逸らす。

 左腕の鉄柱を使い、棒高跳びの様に機体を上空へと躍らせたかと思えば、その状態のまま鉄柱が回転し機体を強引に方向転換させる。

 あんな動きが出来るものなのかと感心していると、モロゾフが小さく吹き出した。


「ハハ、あれは彼だけですよ。他の誰もあんな動きは真似できません」

「そうなのですか?」

「ええ、なんでも特殊な操縦方法を使っているとか。自分も試してみましたが、デメリットもあって自分には使いこなせませんでした」


 フルマニュアル、ハーフマニュアル、共にエルドからの情報提供もあって操作方法は今いるアルミュナーレ隊の全操縦士に伝わっている。そこで練習した騎士たちは、大半がこれは無理だと諦め、残った少しはハーフマニュアルを習得した。

 しかし結局フルマニュアルを習得する物はいなかった。片腕が使えなくなる代償やコントロールの難しさに皆が割に合わないと判断したのだ。


「まあ、だからこそ私たちも彼を信用出来るんですがね」


 自分たちでは諦めた操縦方法。それを平然と使い、あんな起動で戦われたらその実力を認めざるを得ない。


「なるほど、英雄ですな」

「そういう事です」

「では、私たちは凡兵ですが、凡兵らしく堅実に追い詰めるとしましょうか」


 見れば、エレクシアを筆頭としてアブノミューレ部隊が横側に伸びてきていた敵の隊列を食いちぎっていた。


「五番隊! そのまま後方へ進み敵の退路を絶て! 挟撃で殲滅するぞ! 三番隊はそのまま進撃! 火勢に攻め立てよ! 四番隊は撃ち方止め! 三番隊と合流し、近接攻撃に移れ! モロゾフ、私たちも」

「はい、では行きます!」


 一通りの指揮を出し終え、モロゾフたちも戦線を押し上げる。

 アブノミューレたちの戦いは、終わりを告げようとしていた。




「遅漏過ぎる男は嫌われるよ!」

「ハッ、こっちはすでに既婚者だ。嫁との仲も最高なんだよ!」

「ことあたしを差し置いて結婚済みですって!?」

「享楽なんて二つ名つけられといて、結婚願望あるのかよ!」

「結婚だって女の子の楽しみの一つでしょうが!」

「なら国に戻って婚活でもやってろ! 俺は嫁とデートしたいんだよ! 戦争ばっかしかけやがって、こっちはまともにデートもできねぇんだぞ!」

「幸せ自慢はやめろぉぉぉおおお!」


 剣と斧がぶつかり合い、火花が飛び散る。

 どうやら、舌戦では俺の勝ちみたいだな!

 感情が高ぶったのか、リゼットの攻撃が雑になる。ここが好機と攻め込もうとするが、そのタイミングを見計らったかのように魔法の援護が入る。


「落ち着けリゼット。相手の挑発に乗せられるな」

「でも閣下! 最近あたし振られっぱなし!」

「それは……知らん」


 おい、今閣下なんかためらったぞ。もしかして――


「お前、カンザスにも振られたのか」

「ギリッ」


 歯をかみしめる音がここまで聞こえてきた。


「絶対殺してやる」


 先ほどまでよりも、憎しみ二百パーセント増量って感じの声で、宣言された。

 それにしても、やっぱりカンザスの魔法援護が邪魔だな。

 さっきのタイミングも、完璧に好機をつぶされた。この二人、戦闘中にだんだん息が合ってきているみたいだし、なるべく早めに叩きたかったんだが、そのためにはやはりカンザスを先に仕留める必要がありそうだ。


「行き遅れに出来るかな!」

「この野郎!」


 再び、俺とリゼットが激突する。

 今度は完全に斧を受け止め、押し返さない。しかしその間に、カンザスに向けてファイアランスを放った。

 ランスはリゼットの機体の横を通り過ぎ、カンザス機へと直進する。しかし、マジックシールドによって跡形もなくかき消される。

 やはり、マジックシールドの防御力も上がっているとみて間違いない。

 何となくあの機体の特性が見えてきた。

 魔法特化であることは間違いないが、その燃料を支えているのはおそらくあの背中に背負われている二つのタンク。

 あれが俺のアーティフィゴージュ同様、予備のマナタンクとして活用されているのだろう。故に、濃縮魔力液(ハイマギアリキッド)の供給パイプも太く、高威力な魔法を大量に展開してもマナ切れを起こさない。

 その上、ジェネレーターの出力も最高状態で維持できるため、マジックシールドの能力も高い。

 完全に魔法戦特化の機体だな。なら――

 俺は鍔迫り合いから、相手の斧を弾き後退する。

 リゼットは当然の様に攻め立ててくるが、俺は機体をすばやく前進させて相手の横をすり抜けつつ足を切りつける。しかしその剣は左手の斧で防がれてしまった。

 けど問題ない。


「なに!?」


 すり抜けざま剣を離し、アーティフィゴージュからペルフィリーズィを取り出す。


物理演算器(センスボード)回路正常、濃縮魔力液(ハイマギアリキッド)供給完了、照準システムはフリーコントロールでロックオン」


 もちろん狙うのはカンザスの機体。魔法防御は高くても、実弾防御はどうかな?


「ファイ「やらせないよ!」」


 引き金のボタンを押す直前、ペルフィリーズィの銃身に何かがぶつけられる。

 それは斧だった。


「チッ、回路解除、供給弁閉鎖、緊急パージ」


 バシュッとアーティフィゴージュからペルフィリーズィへと伸びた濃縮魔力液(ハイマギアリキッド)の供給パイプが切断され、チューブ内に残っていた液体が宙へ飛び出す。それは即座に揮発し、光を伴って空気中へと溶けていった。

 そして、今の斧で銃身が破損したペルフィリーズィを即座に投げ捨てる。

 魔力液(マギアリキッド)の入った状態で発射直前に破損したのだ。

 回路内ではすでに火が入っており、破損した魔力液(マギアリキッド)に引火すればどうなるか。

 俺がペルフィリーズィを投げ捨てた一瞬の後、ペルフィリーズィが激しい光を伴って爆発する。それは、アブノミューレの爆発の比ではない威力だ。

 アーティフィゴージュで機体全面を守りつつ、爆風が収まるのを待つ。


「チッ」


 俺は小さく舌打ちをしつつ、その爆発あとを確認した。そこには、小さなクレーターと焼けただれた地面が残るのみだ。

 狙撃は失敗に終わったが、収穫はあった。今までの魔法攻撃に対しては守る素振りの一切なかったリゼットが全力で守りに来た。つまり、あのカンザスの機体物理防御に関しては、普通のアルミュナーレと同等と見ていいだろう。


「あたしがいるうちに、閣下には指一本触れさせないよ!」

「ずいぶんとたくましい宣言なことで!」


 背後から斬りかかってくるリゼットに対し、俺も即座に剣を抜きつつ対応する。

 振り返ったため、カンザスに背中を見せる形になった。当然そこをカンザスは攻め立ててくる。そう思っていたのだが、カメラ越しに確認していたカンザスの機体は、こちら向けて魔法を撃ってこなかった。

 カンザスの機体が俺たちとは別の方向を向いているのだ。

 とっさにカメラをずらし、カンザスが見ている方向を確認する。そこには、敵を挟撃するために、横から突破した王国のアブノミューレたちがいた。


「エレクシア! 部隊を下がらせろ! 魔法が来るぞ!」


 俺は咄嗟に声を上げながら、カンザスの足元目がけて魔法を放とうとするが、リゼットがその妨害をしてくる。


「邪魔だ!」

「邪魔してるのさ! 閣下、そろそろ撤退かい?」

「隻腕の情報はある程度収集を終えた。部隊の損耗もこれ以上は厳しいだろう。撤退するぞ」


 そう言いながら魔法を放つ。

 放たれた魔法は、アブノミューレたちを飲み込み、一瞬にして十数機のアブノミューレが鉄くずと化した。


「エレクシア!」

「私は大丈夫だ!」

「そのまま下がれ。敵機の部隊を盾にしろ!」

「分かった」

「お前たち、エルド隊長の指示が聞こえたな。エレクシア隊長に続いて下がるぞ」

『了解』


 アブノミューレ部隊がゆっくりと後退していく中、リゼットの機体もゆっくりと俺から距離を取り始めていた。

 だが、ここまでやって収穫無しは悲しいよな。


「お前だけでも、潰していく」

「ハハ、悪いけど今日は時間切れだ。また楽しませておくれよ」

「俺は一期一会を大事にするタイプなんだよ」

「ならラストダンスだよ」


 リゼットの機体が両手に構えた斧を投げつけてくる。

 俺は剣で斧を弾きつつ前へと進む。しかし、リゼットは即座に背中から新たな斧を取り出し、こちらに向けて投げつける。

 リゼットとの距離が近づけば、着弾までの時間も相対的に短くなる。

 さらに合わせて、カンザスから魔法が撃たれ、足止めを喰らった。そのせいで、リゼットとの距離がさらに開いてしまう。

 ここまで開いてしまうと、さすがに後を追うのは危険だろう。アブノミューレだけならばなんとでもなるが、カンザスとリゼットがそれに合わせて動くとなれば、さすがに対処がしきれない。


「ではまた会おう、隻腕の戦士よ」

「またね」


 相手はすでに逃げ切った気でいるようだ。けど言ったよな? 俺は一期一会を大切にするタイプなんだ。

 せめて一太刀、入れさせてもらう。

 俺は両足を大きく開き、がっちりと機体を大地に安定させる。

 そしてアーティフィゴージュをカンザスの機体に向けた。


「ひっさしぶりの最終奥義」


 残りの剣は四本と、威力としては少し少なめだがまあ仕方ない。


「トータリテ・イピリレーション発動」


 操縦席にある、ガラス板に守られたボタンを押し込めば、アーティフィゴージュの装甲が自動で展開され、巨大な砲台の様に変形する。

 予備タンク内にある濃縮魔力液(ハイマギアリキッド)が供給され、アーティフィゴージュ内でペルフィリーズィと同様の爆発が残った四本の剣を勢いよく射出した。


「なっ!?」


 それにいち早く気付いたのは、俺を警戒し続けていたリゼットだ。

 爆発によって加速した剣をとっさに斧で弾く。しかし二本しかない腕は、四本の内の二本を落としただけだ。残りの二本がカンザスの機体へと迫る。


「閣下!」

「むっ!」


 リゼットの声で、アブノミューレ側を指揮していたカンザスもこちらの攻撃に気づき慌てて対処しようと機体を動かす。けどもう遅い。

 カンザスの機体が身じろぎする間に、二本の剣が飛来した。

 一本は顔の横を通り過ぎ後方へと通り抜けてしまった。しかし、もう一本がカンザスの機体が背負っていたタンクを貫いた。

 とたん、タンクからまばゆいばかりの光があふれ出す。それは間違いなく、濃縮魔力液(ハイマギアリキッド)が蒸発するときの現象だ。

 つまり、俺の予想通り、あのタンクは濃縮魔力液(ハイマギアリキッド)のタンクだったわけか。あれ二つが両方とも満たされていたとすれば、確かに魔力切れなんて気にせずバカスカ連発できるわけだ。

 こっちもきっちり情報はもらったぞ。

 カンザスはすばやくタンクをパージし、その場から撤退していく。

 リゼットも、俺を注意したまま後退で退路を進んでいった。

 俺もそれを警戒したまま見送る。


「エルド、大丈夫か?」

「エルド隊長、無事か?」

「ああ、こっちは問題ない」


 警戒したままの状態で敵の姿が見えなくなるころ、バティスとエレクシアがこちらへと寄ってきた。

 二人のいた部隊は、撤退の準備を進めつつ、この場で破損した機体や回収できるパーツを拾い集めている。


「にしても、相変わらずお前は化け物かよ。なんであの二人と相手して、五体満足なんだ?」


 俺の機体は、表面に傷が焦げ付きこそ大量にあるが、機体自体の破損はほとんどない。

 装甲を取り換えて、無茶をさせた関節の調整をすれば、すぐにでも出撃できるだろう。


「実力だな。つっても結構ギリギリだ。次はきっちり対策組まないと、こっちがやられる」


 カンザスは俺のデータの収集を終えたと言った。ならば次戦うときは確実に俺の動きを研究した状態で魔法を放ってくるはずだ。となれば、今日躱せていた魔法が躱せなくなる可能性がある。

 ホッと一息つきながら、俺は操縦席の中で次あの二人と戦う時のことを考えるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ