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 王都に戻ってきてから、早三日。

 俺は王城内にある寮の庭で剣を振るっていた。

 一日二日目は体の休息も含めて非常にゆっくりした時間を満喫できたのだが、さすがに三日目ともなるとゆっくりした時間を暇に感じるようになってくる。

 そこで体でも動かして暇を潰そうと、剣を振るっていたのだ。


「ふっ、ふっ」


 ルネさんに教えられたとおりのフォームで、何度も剣を振り降ろす。

 しかしどうもイメージと違う気がする。最近ずっと戦場でしっかりと剣を振る機会がなかったからか、微妙に感覚が鈍っているのかもしれないな。


「もっと鋭く、腕は――」


 ルネさんに叩き込まれた動きを思い出しながら、剣を振る。

 何度も続けていくうちに、少しずつ切っ先の動きが洗練されてきた気がしたところで、そろそろ大丈夫だろうかと素振りを止めたとき、寮から拍手が聞こえてきた。そちらを見れば、剣を持ったTシャツ姿のレオンが立っていた。


「前から思っていたが、ずいぶんと綺麗なフォームだな」

「師匠が厳しかったからな」


 レオンは拍手を止めると、庭へと出てきて剣を抜く。


「少し相手してくれないか。俺も暇なんだ」

「レオンは一週間だったか?」

「ああ。正直この程度で済んだことに驚いている」


 レオンは、俺の様にアルミュナーレへの接触を禁止されることはなかった。まあ、もともとあの機体自体レオン自身の物ではないから、接触禁止自体があまり意味がないと判断されたのだろう。

 レオンの使っていた機体もすでに回収されメンテナンスが始まっている。あの機体は他のジェネレーターと同じように、前線にいる副隊長の誰かに回されるらしい。

 さすがに戦果を挙げたとはいえ、勝手に機体を使ったレオンには回してもらえなかったようだ。

 俺はレオンに向けて剣を構え、相手になる意志を示す。

 レオンはそれに笑みを浮かべ、しっかりと剣を構える。


「行くぞ」

「来い」


 ガチンッと剣がぶつかり合い、小さな火花が散った。

 両方とも真剣である。当たれば怪我は免れないが、俺もレオンもそんなヘマをするような技量ではない。

 お互いに剣を押し込み、反動で後方へ下がると、レオンが先に前へと出てきた。俺はレオンの斬り上げを上段からの振り下ろしで受け止める。

 レオンは剣の腹で俺の剣を受け流しながら後方へと抜けた。

 直後、ギュッとこすれる音が聞こえる。

 すぐさま振り返りつつ、水平に剣を薙げば、レオンは剣を立てて攻撃を受け止めていた。

 ただ振り返っていただけなら、この距離だと俺が斬られてたかな。


「相変わらず勘がいいな」

「勘じゃないさ。芝を踏む音で分かる」


 午前中のこの時間、寮にはほとんど人がおらず、周辺も静かなものだ。その中で、俺とレオンの芝生を踏む音はしっかりと聞こえてくるのだ。

 だからレオンが後方へと進んだ瞬間、芝生を踏みしめ草が捩じれる音が聞こえてきたのだ。そこで、威嚇も兼ねて剣を振るっておいたのだ。


「なるほど、ならこれはどうだ」

「むっ」


 レオンの踏み込み、しかし今度は足音がほとんど聞こえなかった。

 しかし、踏み込みが弱いということもない。先ほどと同じ速さで、力強い剣戟が飛んでくる。

 慌てて一撃目をしのぎ、下がりながら二撃目を冷静に受け止める。


「なんだよそれ」

「雨の中での戦闘訓練のためにな。少し練習したんだ」

「それがあの動きか」


 カイレン基地で、やけに動きのよかった理由は、どうやらここにあるらしい。

 体感で如何に地面を優しくとらえ、無駄なく力を発揮させるか。そんな足の動きを練習したのだろう。


「足場が悪いところでの戦闘が相対的に上手くなれた。雨の草原や砂浜ならエルドにも負ける気はしないな」

「俺だって簡単に負けるつもりはないさ!」


 グッと押し込み、レオンを後退させる。

 ここは砂浜でもなければ、雨が降っている訳でもないからな。力で押し込ませてもらう!

 俺が攻勢をかけると、レオンは後退しながら剣を受け止め、受け流す。

 フェイントを交えるも、なかなか決定打が打ち込めない。


「しぶといな」

「エルドの攻撃が甘いんだ!」


 俺がわずかな焦りを見せた瞬間、隙をついてレオンが攻勢に出てきた。

 反射的に俺は足を止め、レオンの剣を受け止める。そのせいで、完全に攻防が逆転してしまった。

 レオンの攻撃は確かに俺の攻撃よりも鋭い場所を突いてくる。だが俺は攻撃よりも防御を徹底的に叩き込まれたのだ。簡単に隙を突かせるようなことはしない。


「相変わらず、防御は健在か」

「体が覚えてんだよ」


 ルネさんに叩き込まれた戦術は、俺の体がしっかりと覚えている。おかげで、防御だけはレイラにも負けないぐらい上手くなりましたよ。

 ガチンガチンと静かな寮の庭に、剣のぶつかる音だけが響き、ゆっくりと太陽が頂点へ向かって登っていく。


「ふぅ、ふぅ、そろそろやめるか」

「そうだな」


 俺もレオンも息が切れてきたところで、レオンが剣を引いた。

 俺もたぶんレオンも、まだまだやろうと思えばできるだろうが、これ以上は運動の範疇を超えることになるからな。

 互いに持ってきたタオルで汗を拭きつつ、熱くなりすぎた体を冷ましていく。寮の影になっている庭は、冬の到来もあってかなり冷たい。このままだと冷えすぎる可能性もあるか。


「この後どうする?」

「そろそろ昼だ。アンジュさんも誘って食堂にでも行かないか?」

「アンジュは今姫様に呼び出されてるんだよ。姫様も暇してるみたいだし、遊び相手(おもちゃ)にでもされてるんだろう」

「それはご愁傷様だな。なら久しぶりに飲みに行かないか?」

「昼からか? それもいいな!」


 ということで、俺たちは町に出て真昼間っから飲むことにしたのだ。こんなことは基本待機任務の騎士にはできることじゃないからな!


 着替えて町に出ると、昼時とあって多くの人が食堂や酒場に集まっていた。

 酒場も昼は基本的にランチを出しているのだが、頼めば酒も出してくれる。まあ、あまりいい顔はされないだろうが、暴れなければ問題ないだろう。


「どの店にするか」

「どこも混んでるな」


 店の外から中を覗くと、どの店も席がほとんど埋まっている。少し時間をずらして来るべきだったかもしれないと今更後悔しつつ通りを進んでいくと、裏道に入ったところでようやく空いている店を見つけそこに入る。

 さすがに、大通りから離れすぎてここまで休憩の間には人が流れてこないのだろう。

 半分ぐらいしか席の埋まっていない酒場で、俺たちは適当にランチと麦酒を注文する。店員からは仕事は大丈夫なのかと聞かれたが、素直に非番だからと答えると笑顔で注文を受けてくれた。

 こういう時若いっていいね。これたぶんおっさんだったら断られてたわ。

 そしてしばらくして食事と酒がテーブルに運ばれてくる。


「んじゃ、乾杯と行くか」

「何を祝う?」

「もちろんあれだろ」

「まあそうだな」

「では、カイレン基地奪還任務成功を祝して」

『乾杯!』


 木製のカップをぶつけ合い、一息に酒を呷る。

 苦味と炭酸が舌を刺激し、運動で乾いた喉を潤していく。


「ぷはー!」

「ふぅ、運動の後の一杯は格別だな」

「まったくだ」


 おっさんのようなことを言いながら、俺たちは一杯目を飲みほし、追加でそれぞれ好きな酒を注文する。俺はアルコール度数の低めな甘いものが好きだが、レオンはウイスキーのような度数の高い辛めの物が好きなのだ。

 わざわざ同じものを飲む必要もなし、とりあえず一杯目だけ合わせて後は勝手に頼むのが俺たちの流儀だった。


「しかし、とうとうエルドも貴族か」

「俺自身驚きだよ。正直貴族になれる制度なんてあったんだな」

「ほとんど知られていないことだがな。まあ、知られたらそれはそれで面倒なことになることは容易に想像できる」

「確かに」


 権力欲があるのは、貴族だけじゃないからな。少しでも上にのし上がりたい奴が、命令無視してでも活躍しようとすれば、軍の規律がめちゃくちゃになってしまう。その点で言えば、俺も結構ギリギリだったんだけどな。まあ、俺の場合は姫様の命令があったからギリギリセーフだったのだろう。


「ただ貴族社会に入るとなると、色々と面倒そうなんだよな」

「確かに慣れないうちは大変かもな。貴族は皆狡猾だ。少しでも甘い汁をすするために、すぐに近寄ってくるぞ」

「世襲できなくてもそうなるのかね?」


 騎士爵は世襲のできない一代限りの貴族位だ。それなら、あまり関わり合いになっても次に続かず旨みは薄くなるんじゃないだろうか?

 そんな甘い希望を打ち砕くように、レオンが答える。


「エルドは今何歳だ? 死ぬまで何年あると思っている」

「最低でも六十までは生きるつもりだ」

「なら四十年以上あるんだぞ。それだけあれば十分すぎる。それに魔法の素質や操縦士としての技術を子供が受け継いだとなれば、その子供を欲しがる貴族も多いだろうしな」

「優秀な遺伝子ってやつか」

「正直、アンジュさんとの結婚は急いだほうがいいぞ。じゃないと、この子を嫁になんて貴族が溢れてくる」

「面倒過ぎて貴位騎士勲章を断りたい気分だ」

「諦めろ。活躍しすぎたお前が悪い」

「はぁ」


 ため息をつき、追加で届けられた酒を一気に呷る。甘い酒は、今の疲れた俺の心をいやすのにはちょうどいいな。もう少し飲もう。


「すみません! 同じもの追加で!」

「はーい」

「まあ、幸いエルドには俺やバティスがいる。面倒な貴族が来たのなら、俺たちが後ろ盾になって守ってやるさ」

「久しぶりに、レオンたちが貴族であることに感謝してるよ」


 軍に所属していると、二人が高位貴族であることを忘れそうになるんだよな。軍の中じゃほとんど平等だし扱いも変わらないから、貴族の地位ってほとんど意味をなさないし。

 まあ、それは二人が威張り散らさないだけかもしれないが、今後は嫌な貴族って連中も出てくるんだろうな。


「フッ、その分俺たちは美味しい思いをさせてもらうさ」

「やっぱ今の発言取り消すわ」


 レオンたちもやっぱり貴族だった。


「お待たせしました」

「ありがと」


 俺はウェイトレスが持ってきたカップを受け取り、空いたカップを渡す。


「あの、お二人はもしかして騎士様なのでしょうか?」

「ん? ああ、そうだけど」


 カイレン基地の奪還とか貴族のこととか話してれば、俺たちが騎士である可能性なんて簡単に予想できるか。もう少し小さな声で話してたほうがよかったかな? 昼時だと確かに騒がしいけど、夜の酒が入った騒がしさとはまた違うから、結構隣のテーブルの会話内容とか聞こえてきちゃうのかも。


「不躾で申し訳ないのですが、カッソ村をご存知でしょうか? 私その村の出身なのですが、今どうなっているのか分からなくて心配で」


 なるほど、出稼ぎで来ている子なのか。

 しかしカッソ村と言う村の名前は聞いたことがない。レオンのほうを見ても、首を横に振っていた。


「どのあたりにある村なんだ?」

「カイレンの町から王都側に向かったところの街道沿いです。ウォーレランの町との間なんですが」

「カイレンとウォーレラン……」


 カイレンは俺たちが奪還した基地だ。そしてウォーレランは第二防衛線になっていた町である。

 つまり、彼女の村がある場所は、つい先日まで戦場の真っただ中だったということだ。

 他の助け出してきた村の様子を鑑みても、絶望的かもしれない。

 どう伝えたものかと悩み、レオンの様子を窺う。レオンもこればかりはかなり悩んでいるようだ。


「あの……」


 黙ってしまった俺たちの様子から何かを察したのか、ウェイトレスは不安げな今にも泣きだしそうな表情で訪ねてくる。

 と、レオンが口を開いた。


「カイレンはつい先日奪還されました。なので、生き残っていれば、もう心配はいらないと思います。ただ、それまでは攻め込まれていたので、その村がどうなっているかは私たちにはちょっと分かりかねます。自分たちがカイレンに行ったときは、北からの奇襲でしたので」

「そうですか……すみません、お休みなのにこんなことを聞いてしまって」

「いえいえ、不安なのは理解できますから。村の人たちが無事であることを祈りますよ」

「ありがとうございます」


 ウェイトレスは一つお辞儀をして仕事へと戻っていく。

 それを見送った俺は、少し気分が暗くなってしまう。なにせ、戦争の裏事情を姫様から聞かされてしまったのだ。

 意図的に行われている戦争で、こうして不安になっている人たちがいる。当然、戦場で見てきたように殺されてしまった多くの人たちもいる。

 それでも戦争を起こさせ、国としての繁栄に利用しようとしている陛下のやり方には、やはり賛同できそうにない。現場を知っているからこそ、余計にそう思えてしまう。


「俺たちが前線に出られればな」

「俺たちは兵士だ。上に逆らうなんてことは、そうそうできる物じゃ無い」

「それもそうだけどさ」


 やはり納得できないものはある。そう思っていると、テーブルに皿が置かれた。そこにはソーセージとチーズの盛り合わせが乗っている。

 驚いて顔を上げると、先ほどのウェイトレスとは別の、恰幅のいいおばちゃんがいた。


「さっきは悪かったね。あの子、ずっと両親のこと心配しててね」

「いえいえ、自分たちがしっかり守れれば、こんな心配をさせずに済むんですが」

「それは仕方ないさ。戦争なんざ、どうなるか分からないもんなんだからね。あんたらが頑張ってくれてるのは、この町の皆分かってるんだ。気にする必要ないよ」

「ありがとうございます」

「こいつはさっきの詫びだよ。雰囲気悪くさせちゃったみたいだからね」

「ありがたくいただきます」


 それらを摘みに再び酒を呷れば、少しだけ気分が楽になったきがした。



 店を出たのは、完全に昼を過ぎたころ。時間的には三時ごろだった。

 出されたソーセージがことのほか美味く、レオンも俺も思わず飲み過ぎ、ほろ酔いどころか完全に酔ってしまっていた。ただ騎士の矜持として泥酔までいかないようにセーブできたのは、日ごろのトレーニングのおかげだと思いたい。


「いい店だったな」

「ああ、今度はバティスやアンジュさんも誘って来よう」

「だな。そういえば、二人には恋人っていないのか? 貴族ならもう婚約者ぐらいいてもよさそうなもんだけど」

「僕には一応そう呼べる人がいる。バティスはあんな性格だから、両親が申し込みを止めているようだがな」


 まあ、そりゃそうか。アカデミーの時代からかなりの子と付き合いまくってたもんな。二股三股余裕だったし、そんな奴と婚約とかいくら貴族の義務とはいえ嫌だろう。

 その辺りをバティスの両親が酌んでくれているらしい。

 だが、レオンに婚約者がいるのは初耳だ。


「なんで紹介してくれないんだよ」

「つい先日決まったところだからな。僕だってまだ顔合わせもしていないんだ」


 なんだ、そう言うことか。


「なら謹慎中に会うのか?」

「たぶんそうなるだろうな」

「ならその後に紹介してくれよ。俺もアンジュもまだ当分暇だからな」


 何せ後数か月は暇になるかもしれないのだ。暇つぶしの種は少しでも欲しい。


「ま、会わせられる人柄ならな。貴族同士の結婚だ。碌でもないのが来る可能性もある」

「そうなったらどうするんだ?」

「どうすると思う?」


 そう言って怪しく笑みを浮かべるレオンに、思わず背筋がゾクリとした。まさか事故に見せかける気じゃ? レオンなら平気でやりかねない。


「殺すのはどうかと……」

「馬鹿言え、碌でもないとはいえこちらの格に合った家の女性だぞ、簡単にそんなことが出来るわけないだろう」

「ならどうする――いや、聞かないほうがいいな」

「そういうことだ」


 レオンの婚約者がいい人であることを願うよ。

 そんなことを話しているうちに、俺たちは寮へと戻ってきた。

 玄関先でレオンと別れ、俺は部屋へと戻る。


「ただいま」

「あ、お帰りエルド君」


 俺が部屋に入ると、奥からアンジュの声が返ってきた。

 すでに帰ってきてたのか。姫様の呼び出しだから、夕方ぐらいまでかかると思ってたんだけど、悪いことしたかな?

 そう思いつつ部屋の奥へ進むと、そこにはドレス姿のアンジュがいた。


「そのドレスどうしたんだ?」

「イネス様が貸してくださったの。似合ってるから、エルド君に見せて来いって」

「そうだったのか。よく似合ってるぞ」


 スマートな印象のドレスは、薄い水色で肩に複雑な結びの装飾が施されている。

 パーティーに出るような派手な物ではないが、貴族が普段着で着るようなものだろうか。しかし、姫様が見せて来いと言ったことに一抹の不安が残る。

 アンジュは俺に褒められたのが嬉しかったのか、頬をうっすらと染めながら、嬉しそうにほほ笑むと俺の下に駆け寄ってきた。


「それでね、姫様からエルド君に伝言で、このドレスのこの紐を引っ張るようにだって」

「この紐を?」


 アンジュが差し出した紐を受け取り、それの繋がっている先を見る。

 どうやら脇ばら付近につながっているようで、特に怪しいギミックは見られない。けど絶対に何かあるだろこれ……


「どうしたの?」

「いや、姫様の指示だろ? 嫌な予感が」

「大丈夫だよ。イネス様も同じ服着て紐を側付きの人に引っ張らせてたけど、簡単な変化があるだけだったから」

「知ってるのか?」

「秘密だけどね」


 どうやらアンジュは、そのギミックを使ったときの自分の様子を俺に見せたいらしい。

 まあ姫様自身も使って、その様子をアンジュも見てたんなら心配はないか?


「強く引いても大丈夫か?」

「うん、一気にグイッとやっちゃって」

「分かった。行くぞ!」


 俺はアンジュに言われるまま、その紐を引っ張る。

 すると紐はスルスルと伸びて、そのままドレスから抜けてしまった。と同時に、肩の装飾結びが外れ、ドレスがストンと下に落ちる。


「へっ?」

「えっ?」


 その状態はどうやらアンジュにも予想外の事態だったようだ。

 俺の前に、これも姫様から借りたのか綺麗なレースの下着姿を晒しながら、ぽかんとしている。そして徐々に状況を理解したのか、顔を真っ赤に染め始めた。

 まあ、不意打ちで脱がされれば彼氏の前とはいえ恥ずかしいよな。

 けど、酔った状態の俺には、そんなアンジュの姿がものすごく可愛く見え――


 その日俺は、男は狼どころか猿になれるのだと知ったわけだ。


E-7まで甲略できました。掘り? 知らない子ですね……

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