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魔導機人アルミュナーレ  作者: 凜乃 初
副操縦士編
35/144

10

 俺達がパラストへと移動すると、そこには三機のアルミュナーレがいた。

 その三機は、俺達が町へと近づいていくと、町から出てきて警戒した様子でこちらの様子を窺っている。

 俺達は一旦足を止めて、歩兵部隊を先行させた。


「増援が来たのか?」

「あの数はそうなんだろ」

「なら私達は整備に集中できそうだな」


 歩兵部隊がパラストの兵士達と連絡を取り合い、俺達のことが伝わったのか、町にいる機体からの警戒が解かれる。

 俺達はそれを確認してゆっくりと進み、町の中に入っていくと、増援以外にも補給物資が届いているのか、町の中はボロボロになりながらも以前より活気にあふれていた。

 町人たちは別の町へと逃げてしまっているが、サポートメイドや整備士たちが走り回る町の様子は、どことなくアカデミーを思い出すな。

 俺達は兵士の誘導に従って町を進み、少し入ったところで停止させ機体から降りる。バティスたちもそれぞれに機体を停止させて降りてきた。


「では私たちは一度本部に報告に行ってくる」

「分かりました。自分も一度隊のテントに戻ります」


 一度オレールさんたちに顔を合わせて、機体の整備のお願いもしとかないといけないしな。ソーレで受けた整備は本当に最低限で、燃料の補給とかもほとんどしてないし。


「またなエルド」

「おう、またな」


 手を振るバティスに返事して見送っていると、道の向こうから走ってくる金髪のメイドを見つけた。


「エルド君!」

「アンジュ?」


 勢いのままに俺の胸に飛び込んできたアンジュを受け止め、地面に降ろしてやる。


「アンジュもパラストまで出てきたのか!?」


 サポートメイドは本来前線から一歩引いた場所で、怪我人の治療や配給を行うはずだ。今回はパラストが主戦場になっていたのに、ここまで出てきていることに驚いた。本来ならば、パラストの一つか二つ、場合によってはジャカータで待機していても良いぐらいの状態だったのに。


「うん、元々サルサの補助の為に、パラストで配給や治療の手伝いをやることになってたから。それに、私達が出発するときには、パラスト側は一段落してるって情報が入ってたから」

「そうだったのか」

「エルド君は大丈夫? その包帯どうしたの!? 隊長が重傷だって聞いて、ミラージュさんはそっちに向かったけど……」

「ああ、俺はちょっと頭を切った程度でどうってことない。隊長も怪我の具合までは分からないけど、命に別状はないって聞いてる」

「そっか……よかった」


 アンジュがホッとしたところで、兵士の一人がこちらに駆け寄ってくる。


「エルド様、騎士の皆様は臨時本部に集合とのことです」

「了解した」


 ここでも会議か……まあ、増援が来たことを鑑みるに、俺達はジャカータに戻れるかもしれないし、ここが頑張りどころかな? 一応敵兵も撤退したみたいだし。

 それに、騎士が全員集合ってことは、オレールさんたちもそっちに行ってるだろうし、移動する手間が省けるな。バティスたちとは別れたばかりなのにまた会うことになるけど。


「エルド君、行こ」

「ああ」


 俺はアンジュに手を引かれながら、臨時本部を設置してある大きなテントへと移動した。



 警備の兵士に敬礼されながら中へと入る。

 そこにはすでに、三十一隊のメンバーがそろっており、他にも見知った顔がちらほらといる。さらに、全く見たことも無い部隊も何個かあった。

 俺達は、そそくさと自分の部隊が集まっている場所へと移動する。


「エルド、無事だったようじゃな」

「大活躍だったって聞いてるぜ」

「きっちりした整備のおかげですよ。この後も補給頼みます」

「任せておけい。しかし、さすがにこの後の戦闘は無さそうじゃがな」

「彼らですか?」


 俺達の視線の先にはいかにもベテランの雰囲気を漂わせている三つほどの部隊。彼らはジャカータでも見たことが無かったし、王都からの増援なのだろう。

 だとすれば、王都の守護隊か?


「第二から第四の王都警備隊の連中じゃ。実力はもちろん折り紙つき。この国の最高戦力と言ってもいいかもしれんのう」

「そんな人たちが出て来たってことは、他のブロックは攻められていないんですね?」


 他のブロックでもここと同様に侵攻されていれば、彼らがまとめてパラストに来る余裕などないはずだ。それぞれ一機ずつが別のブロックに増援されてもおかしくは無い。

 それが全て来たとなれば、攻められたのはここのブロックだけだと考えてもいだろう。まあ、他が問題なく撃退できて、ここの砦だけ被害が出たってことも可能性としてはゼロじゃないだろうけど、限りなくゼロに近いし。

 そんなことを考えているうちに、騎士達が続々と集まってくる。整備士たちまで召集を掛けられたためか、いつの間にかテントの中はかなりの人が集まっていた。それでもまだ余裕があるのは、このテントが相応の広さを有しているからだろう。

 そして、全員が集まったところで最後に入ってきた人物に、全員の視線が向けられる。


「サム司令自らここまで出てきたのか」

「さすがに被害の大きさを気にしたのじゃろう。あ奴が前線まで来ることなど滅多にない」


 それだけ被害が甚大だったということか。まあ、砦一つに大きな町二つに村を数個焼かれているのだ。その上、司令がジャカータを出るころはまだ敵機が国内をうろついていただろうしな。


「よく集まってくれた。これより会議を始める」



 会議の結論から言えば、非常に眠かった……そもそも、少人数の会議ですらあんなにウトウトしていたのに、人数を倍以上にして行う会議なんて、眠くならない訳がない。

 半分以上は、聞き流していた気がするが、まあアンジュがしっかりメモを取ってくれてたから問題ない。

 会議の内容を大まかに説明すれば、増援をサルサに回し、ソーレには補給と人員を送り今ある機体で防衛体制を立て直してもらうという物だ。

 サルサ砦の状態を調査した部隊の報告によれば、あの傭兵の攻撃のせいで外壁はボロボロになっており、門も砕けているという。修復には時間がかかるため、その間の防衛は以前より強化されることとなった。

 砦自体も破壊が酷く、しばらくは野営だというのだから大変だ。その上、建築職人は町の復興もやらなければならないため、大忙しである。

 すでに他の町から建築士の派遣を依頼しているが、軍人ほど身軽に動ける訳でもないので、町の復興には時間がかかるかもしれない。

 その間の町民には、テントや食料の配給が定期的に行われるようになった。これは、普通の兵士達が他の町から物資を届けるようだ。

 そして肝心の俺達の今後だが、バティスの部隊や他の傷を負っている機体たちと一緒にフォートランへ帰投することとなった。

 まあ、三十一隊の機体もモニターは三枚しか残ってないし、操縦席はむき出しだ。非常時だからあのまま動かしたが、一段落した今ならしっかりと直すのが当然だろう。


「大方予想通りですね」

「そうじゃな。これでしっかり修理できるわい」

「帰りに隊長の見舞いできねぇかな? ヒューレンの治療院にいるんだろ?」


 ヒューレンはパラストの一つ前の町で、今回の緊急治療所が設置されている町だ。隊長は、負傷後すぐにそこに運び込まれ、治療を受けた後治療院で入院しているらしい。

 普通の兵士なら野戦病院のようなベッドだけが並べられた場所で寝かされるだけなのだが、アルミュナーレ隊のしかも隊長となれば特別扱いは当然。治療院に個室を用意され、そこで専門の治療を受けているらしい。


「そうですね。今後のことも話し合わないといけませんし」

「会議が終わったら司令に聞いてみるといいじゃろ。もともと、アルミュナーレ隊は部隊ごとに行動するからのう。問題は無いと思うが」

「そうですね」


 会議は進み、主に配備される場所や補給部隊に関して色々なことが決められ、二時間ほどしたところでようやく俺達は解放された。

 正直撤収する部隊は最初にそれだけ説明して帰してくれればいいのに……準備する時間も必要だし。


「じゃあ自分は司令に聞いてきます」

「私も行く」

「ならお主らに頼むぞ。わしらは撤収の準備を進めておく」

「分かりました、お願いします。んじゃアンジュ行くか」

「うん」


 テントを出て、執務用のテントへと戻っていく司令の後を追う。

 声を掛けると、司令は立ち止まり振り返りざまに筋肉を主張する。上着がミチミチ言ってるんですけど、大丈夫なんですかね?


「君は確か、エルド君と言ったかな?」

「はい、第三十一アルミュナーレ隊副操縦士のエルドです」

「同じく、サポートメイドのアンジュです」

「ふむ、それで二人は私に何の用だ?」


 そう言いながら司令は、おもむろに上着を脱ぎだす。


「えっと、撤退の途中で隊長のいる治療院に寄れないかと思いまして」

「ふむ、ボドワンは確かヒューレンの治療院にいるのだったな?」

「はい、今は隊のサポートメイドのミラージュが付いていますが、今後についても話し合わなければならないと思いまして」


 命に別状はない。それは間違いないのだが、問題は別にある。

 隊長の現場復帰がいつごろになるか、そもそも現場復帰できるまでに回復するのかだ。

 隊長の怪我は、左手と左足の複雑骨折である。この世界の治療技術がどの程度の物かは分からないが、複雑骨折の上に肉を潰された手足を完全に復元できるとは思えない。

 となると、隊長の隊への復帰すら怪しい状況なのだ。

 そうなれば、必然的に俺が正操縦士に繰り上がることになるし、オレールさんたちと今後隊長役をどうするのか、それに伴う隊員の補充なども考えなければならない。

 その事を伝えると、司令はシャツを引き千切り見事なサイドチェストを俺達に見せながら答える……そのポーズ必要?

 アンジュはもう少しだけ堪えてね……目元ヒクついてるけど。


「良いだろう。撤退の途中で部隊から離脱することを許可しよう。今回の戦闘でのエルド君の活躍は聞いている。今後のことについてしっかりと話し合って来るといい」

「ありがとうございます」

「司令! なんて格好をしているんですか!」


 俺達が敬礼をして去ろうとしたところで、司令の背後から怒鳴り声が聞こえてきた。

 司令ともどもそちらに視線を向けると、副指令のアーノルドさんが顔を真っ赤にして立っていた。


「どうだ! この筋肉は素晴らしかろう!」

「素晴らしかろうじゃありません! また無意味にシャツを破いて! このシャツも経費から出ているんですよ! それにそんな恰好で兵たちの前に出られては、示しがつきません!」

「上着はちゃんと脱いだぞ」


 あのシャツ、何回も破られてるんだ……と言うか、司令の話からするに、昔は上着ごと破いてたんだろうな……


「そこにいるのはエルド君ですか?」


 副司令は司令の影に隠れていた俺の存在に気づき、こちらに視線を向ける。

 俺は礼儀通り敬礼で挨拶を交わした。


「アーノルド副司令、お久しぶりです」

「ずいぶん活躍したみたいですね。ハーモニカピストレを上手く使ってくれたようで、私としても嬉しいですよ」

「あの武器は非常に使い勝手のいい武器ですね。他の人はまだどのタイミングで使うか把握し切れていないみたいですが、慣れれば強力な武器になると思います」

「そうだね。それは君が今回証明してくれた。君の戦果はすでに報告として上がっているが、敵機四機の撃破に鹵獲が一機は間違いなく勲章の授与がある。フォートランに帰ったら、式典用の衣装の準備をしておくように」


 式典用の服か。一応アルミュナーレ隊の制服も式典に出られるレベルで正装ではあるのだが、王様の前に出て勲章をもらうとなるとそれでも少し見劣りするらしい。

 フォートランに戻ったら、仕立て屋に行かないと。


「分かりました。ご忠告ありがとうございます」

「君の活躍は、国民の励みになる。今後も頑張ってくれ」

「ハッ!」

「さ、司令行きますよ! 着替えは何着も持って来てあるんですからすぐに着替えてもらいます」

「むふぅ……」

「むふぅってなんですか……」


 手を引かれて去っていく司令の姿は、まるで子供のようだったとだけ言っておこう。




 静かな廊下をカツカツと歩く音が響く。

 ここはヒューレンにある治療院。その個室病棟である。

 この病棟に入るのは、貴族や軍部で重要な役目を担う者達だけであり、ここに入ることができるということが、そのまま国にとって重要な人物であることを示していた。

 看護師の案内に従って廊下を進み、俺達は一つの扉の前で止まる。


「こちらです」

「ありがとうございます」


 俺が後ろを振り返ると、三十一隊のメンバーが早く入れと視線で急かしてくる。けど、なんで俺が先頭進んでるんでしょうね? ここは普通副隊長のオレールさんが先に進むべきだと思うんだけどって、これつい最近同じような事考えたな。

 仕方ないので、俺はドアをノックする。


「第三十一アルミュナーレ隊のエルドです。他のメンバーとお見舞いに来ました」

「どうぞ」


 中から聞こえてきたのは女性の声。ミラージュさんだろう。

 俺はドアを開いて室内へと入る。他のメンバーも後に続いて部屋へと入ってきた。

 部屋は白を基調とした前世の病室とあまり変わらない内装だ。さすがに機械的な物は少ないが、中央にベッドが置かれ、周りをカーテンで囲めるようになっている。

 南側には大きな窓があり、そこから町がよく見えた。

 ベッドには左腕と左足にギプスを付けた隊長が、上体を起こした状態で横になっており、その横にミラージュさんがいる。


「皆か、わざわざすまないな」

「いえ、こちらもひと段落しまして、フォートランに撤退するところですので」

「隊長、お見舞いに花をお持ちしたんですけど、花瓶ってありますか?」

「ここにあります。水を汲んでついでに活けてしまいましょうか」

「はい」


 アンジュが道中に買った花束を見せると、ミラージュさんが立ち上がり戸棚の中から大き目の花瓶を取り出す。

 二人は水を汲みに行くために病室から出て行った。


「お主の調子はどうじゃ? 復帰できそうなのか?」


 オレールさんがさっそく本題に入る。

 するとボドワン隊長は顔を顰めながら答えた。


「正直難しいだろうな。斬り落とすことこそ無かったが、元のように動くことは無いと言われたよ。リハビリすれば日常生活には支障が無いが、アルミュナーレを操縦するのは無理だそうだ」

「そうか、なら規定通りエルドを三十一隊の暫定隊長として話を進めるぞ」

「ちょっと待ってください! 暫定隊長ってなんですか!? 順当に考えて、オレールさんが隊長になるんじゃ」


 俺が慌てて口を挟めば、ボドワン隊長が説明してくれた。


「アルミュナーレ隊の隊長は操縦士しかなれない。指揮系統は操縦士が持つことで統一されているのだ。だから、私が操縦士に復帰できない以上、副操縦士から繰り上がるエルドが隊長となる。正式に認められるのは、任命式を終えてからだがね」

「そんな無理ですよ! いきなり隊長なんて! だって――」


 まだ斥候役だってまともに一人ではできないのだ。皆の仕事をしっかりと理解していないのに、指示を出す立場になれるはずがない。

 そう言おうとして、俺の言葉をブノワさんが遮った。


「そんなことないと思うよ? エルド君は隊長が運ばれた後立派にリーダーしてたじゃないか」

「だよな。俺達にきっちり指示出してたし」

「私も特に問題ないと思ったわよ」

「と言っとるようじゃが?」

「そうなんでしょうか? あの時はただ必死だったし、アルミュナーレを操縦できるのが嬉しくて」


 気付いたら自分が動かせるように周囲を整えていた。


「それでいいんだ。隊長の命令なんてそんなものさ。自分が動きやすいようにするのがアルミュナーレ隊の隊長の役目だ。まあ、あまりに我が儘だと嫌われてしまうがね」

「…………分かりました。自分が隊長を継ぎます」

「期待しているぞ」


 ボドワン隊長はそう言って、近くにあった引き出しの中から何かを取り出し俺に差し出す。それは、アルミュナーレ隊の隊長を示すバッチだ。

 俺はそれを受け取り、自分の制服の胸へと付ける。


「お前たちも、エルドのサポートを頼むぞ。エルドの操縦技術ならば、国を代表する操縦士となれるはずだ」

「任せておけ。と言うよりエルドはすでにお主より活躍しておるよ。お主が運ばれた後に、お主の機体を修理して戦果を上げおった」

「そうなのか!?」


 どうやら隊長には俺の戦果がまだ届けられていないらしい。まあ、優先は司令とかだし、ここに情報が回ってくるのはまだだいぶ先になるのだろう。


「こいつ、操縦席の正面装甲取っ払った機体で、四機撃破して一機鹵獲してるんですよ」

「なんという……」


 リッツさんが自慢げに俺の戦果を発表すると、ボドワン隊長は目を丸くして驚いていた。


「もう一機で一度に双頭獅子勲章に行けたんですけどね。敵に撤退されちゃいまして」


 あれは本当に残念だったな。


「こういう奴じゃ、お主が心配することは何も無いじゃろ。しっかり休んで怪我を治すことじゃな」

「そうさせてもらおう」


 雰囲気も良くなったところでアンジュ達が戻ってきた。

 俺達は隊長がいなくなった後でどんなことをしていたか報告し、一時間ほどの面会を終えてフォートランへと戻るのだった。


副操縦士編終了です

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