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魔導機人アルミュナーレ  作者: 凜乃 初
エピローグ
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エピローグ

「さあ決勝戦も大詰め! 両者すでに盾を失い、残る武器は剣のみ! これはクリティカル判定が出るのも間近か!」


 フェイタル王都、その郊外に作られた円形闘技場は、客席を埋め尽くした人々の歓声に満たされていた。

 彼らの視線を一身に浴びるのは、中央で戦う二機のアストラーデ。

 アブノミューレの後継機であり、より小型化された汎用型魔動機人である。

 そして今行われているのは、アストラーデを用いた決闘競技。『第一回魔動機人闘技大会』だ。

 各部に仕込まれたセンサーに攻撃を当て、耐久数値を削り切ったほうが勝ちという、安全で誰にでも試合の結果が分かりやすいスポーツである。


 オーバードとの戦争が終結して早二年。周辺諸国はようやく訪れた安寧の時代に魔動機人たちを、戦うための兵器から自分たちの娯楽そして機材としての役目を与えるまでになった。

 今回開かれた第一回魔動機人闘技大会も、それを象徴するものだろう。


 その意味を知ってか知らずか、この大会には多くのエントリーがあった。

 戦争で活躍したアブノミューレの操縦士はもちろん、アカデミーでの競争に敗れ整備士や起動演算機(センスボード)ライターになった者たち、そして現役のアルミュナーレ操縦士までもがこの大会には参加している。

 当然、俺も参加している。

 

「エルド選手! やはり強い! 片腕だけで驚くべき斬撃を繰り出している! バティス選手は必死に防御するが、このまま押し切られてしまうのかぁぁあああ!」

「てめぇエルド! フルマニュアルコントロール使ってんじゃねぇ!」

「勝ちたいんだよ! 最初の大会だぞ! 俺が提案して、俺が根回ししたロボバトルなんだぞ! 勝ちたいに決まってんだろ!」


 決勝にやってくるまでにもいろいろなことがあった。

 予選中は俺の機体が不慮を起こして操作が思うようにいかなくなった。決勝トーナメントでは、初戦にエレクシアさんと当たり、二戦目はログヴェルさんと当たった。準決勝ではレオンとぶつかり死闘を演じた。正直、トーナメント表を見た時は愕然としたぞ。全員知り合いなんだから、戦いにくいったらありゃしない。

 だがそれを勝ち抜き、ようやくたどり着いた決勝戦だ。今更知り合いだからってもう慌てることはない。

 全力でぶつかって、ぶちのめすのだ!


「んにゃろう!」

「おっと! バティス選手強引に反撃に出た! ダメージを食らいながらも、一歩前に出る! 今度は攻守が逆転だぁ!」


 バティスが強引に攻めてきた。被弾は覚悟の上だったのだろう。ダメージが入るのを気にせず、剣を振り下ろしてくる。

 俺は剣で受け止めるも、勢いに負けて一歩下がる。そこからは、バティスの連続攻撃を受ける一方になってしまった。

 だがチャンスはまだある。

 落ち着いて攻撃をさばきつつ、そのタイミングを窺いながら周囲を確認する。その中で、ちらりとモニターに見慣れた顔が映りこんだ。

 

 俺が倒してきた連中だ。


 レオンの隣には来月に結婚が迫った婚約者のシメールさんがいる。エレクシアさんは操縦士の仲間たちと、ログヴェルさんは戦争終結後引退を表明したオレールさんと共に観戦しているし、その横では隊のみんなが声援を飛ばしてくれている。

 そして軍の関係者以外にも――

 今日のために特等席のチケットを両親たちに送っていたが、無事に観戦に来てくれている。

 アンジュと共に最前列の席で、俺の戦いに一喜一憂してくれている姿が見える。

 俺の妹のエミナとアンジュの弟のエンジェは、アストラーデの姿に大興奮のようだ。これは将来が楽しみだな。

 視線を少し別の方向へ向ければ、王族用に用意された貴賓席から姫様をはじめ王族の方々が観戦している。そして姫様の隣に立っている少年は、アルト・リーノ・ウェリア第二皇子だ。

 戦争が終結し、姫様の事務処理があらかた片付いたということで、様子を見にこちらに来たのだ。

 オタク具合が進行し、姫様にコスプレ衣装をプレゼントしていたが、全力で拒絶されてたな。

 まあ、アルド王子自体は読書家ということもあり頭も良く、姫様もオタク談義以外でなら楽しそうに話をしていたので、それほど相性が悪いというわけでもないのだろう。むしろ、姫様の暴走を押さえられる貴重な存在かもしれない。


 さて、そろそろかな?

 回避の中に小さく無駄な動きを入れる。

 大勢が見守る中で、戦局がゆるりと動いた。


「操縦士最強の座は俺がもらったァ!」

「ふっ、まだまだ甘いな」


 形成が逆転したことで、勢いに乗ったバティスが、案の定俺の誘いに乗ってきた。

 わざと作った隙に、あっさりと引っかかってくれる。この辺り、まだまだ駆け引きが足りないな。

 用意された隙目掛けて切り込んできたバティス機の刃を、腕の外側で受け流す。ヒットポイント以外のダメージは、明確な破壊でない限り判定されない!

 

「しまっ!?」

「もう遅い!」


 バティスも俺の考えに気づいたようだが、今更だな。戦場なら死んでるぞ? まあ、もう戦争は終わったが。

 あっさりと、機体が交差し俺の機体の刃がヒットポイントにクリティカルヒットを叩きこむ。

 ブザーによって試合終了の合図が闘技場に響き、審判から俺の勝利が告げられた。


「決まったぁぁぁぁああああ! 第一回魔動機人闘技大会優勝は、やはりこの人、王国最強! 第二王女の近衛騎士! 最強の奥さんを有するエルドだぁぁあああ!」


 歓声に包まれる闘技場で、俺は操縦席から出て機体の肩から手を振る。すると、アンジュが観客席から飛び込んできたので、それを受け止めた。


「おめでとう!」

「ありがと。この光景が見たかったんだ」


 アンジュと共に観客席を見回せば、みんなが笑顔だ。全力でロボット同士の戦いを楽しんでくれていたのだ。

 娯楽としてのロボット、サポートのためのロボット、そして技術を発展させるためのロボット。

 そうだ。やっぱりロボットはこうでなくっちゃいけない。

 戦いは終わった。けど、オーバードが滅んだわけではないし、他の国だって侵略を始めないとは限らない。

 だから俺が守ろう。この笑顔で満たされた世界を。アルミュナーレに乗って。

魔動機人アルミュナーレは、これにて完結となります。

ここまで長い間お付き合いいただき、ありがとうございました。


お楽しみいただけたのなら幸いです。




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[良い点] 最高に面白かったです [一言] 100年後とかでエルドがどう伝わってるか知りたい
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