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休息

 洞窟から案外近い場所に街はあった。微妙なところで止まってしまっていたらしい。


 「おい、お前大丈夫か?」

 「ああ、問題ない。彼女は仲間だ」


 キャシーが俺に噛み付いているのを見て門番は安否を気にしてくれたみたいだ。


 「そ、それもだが、その女の格好……」

 「え?」


 ハッ!! キャシーは超エロエロな下着姿のままだった!! 何日も見ていたせいか、この状態が普通だと認識してしまっていたらしい。何の疑問も抱かなかった。


 「あ、いやー彼女はちょっと露出狂の気がありましてですね……」


 すまんキャシー。勝手に露出狂設定を付けてしまった。いくらでも俺を食してくれ。


 「そ、そうなのか……ん? もしかしてだが、その女フレッシュ・ゾンビなのではないか?」

 「はい、分かりますか。近くの洞窟で見つけて懐かせることに成功したんです」

 「とすると、あそこの洞窟か。そのスライムと言い、フレッシュ・ゾンビまで連れているところを見るに魔物使いの冒険者のようだな。もう一人変なのもいるが」

 「はい。ただ持ち合わせの金がなくて通行料を払えないのですが、倒した魔物を献上して支払いの代わりとさせてもらえませんか?」

 「まぁ仕方ないな。良いだろう」

 「ありがとうございます」


 いくつか魔物を献上し、何とか街に入れた。


 いやー緊張した。人と接するのは苦手だからな。ホシコは見た目と言動による印象と登場からの勢いですぐ打ち解けられたが、基本まだコミュニケーション能力には乏しいと思う。今のも頭の中で何度もシミュレートした形式的な会話にすぎん。


 「おおー、大きい街っすね」

 「本当だな」


 外から見ても大きさや広さは想像できたが、実際に人々や建物の立ち並ぶ光景を目にすると迫力も増すな。

大きな壁に囲まれた洋風なファンタジーらしい街並みだ。人も様々な種族が混在しているようだし、俺と同じように魔物を引き連れた者をはじめ冒険者らしき人たちや商人、職人、兵士、貴族、一般人などに溢れて活気に満ちている。


 こんな立派そうな所じゃあ物価も高そうだな。初めて立ち寄るような場所じゃないかもしれん。


 まぁとりあえず魔物を売って収入を得よう。







 「またのお越しを」


 スーラの食料分を残して収納袋に入れておいた魔物は全部売り払った。ただ死体そのままだったので解体用の手数料がかかったが、それでも十分な金額を貰えた。結構倒したしな。

 これなら数日はまともな生活が送れそうだ。


 だけど色々と出費はあるし安心は出来ないのが現状だ。まずは俺とホシコとスーラの食費。スーラは普通の食料でも大丈夫だが魔物のほうが魔力が染みていて好きらしい。キャシーは魔力さえあれば生きていけるので実質タダ。空気中にも魔力は漂っているし、足りなさそうなら俺の魔力を与えればいい。そして全員の宿代も必要だ。何人扱いになるのか分からないし、部屋代だけで済むなら全員で一部屋でも良いし節約は可能、と……大方そんな感じか。


 意外とかかりそうだな。たぶんこの街にもギルドはあるだろうし明日行ってみよう。今日はやっと休める場所に着いたのだから、ゆったりまったりタイムにしたい。


 「まずは宿を探しに行こう」

 「了解っす」

 「レロンッ……」

 「あっ、キャシー今は舐めないでくれ……」







 どこも質は言うことなしだが値段が少し高めなので現在は大通りから外れて宿探し中だ。


 しかし、さっきから何だかだいぶ注目されているような気がする。確かに異色は放っているだろうけど。

 下着姿のフレッシュ・ゾンビに噛み付かれ抱き着かれた男に、ピッチリとしたアメコミのコスプレみたいな衣装を着た幼女?(年齢不詳)にスライム。一番まともなのがスライムな四人組。

 実際この街もいろんな層がいるからパッと見が異常に目立っていると言うほどではないが、ジワジワと空間から浮いてる感じが滲み出てしまっている。


 ついでだしキャシーの服を買いながら行くか。対策が簡単だからな。下着姿を拝めなくなるのは寂しさを覚えるが仕方ない。


 てなわけで服屋に来て適当に見繕ってみようと思ったらキャシーは本当に露出狂なのか何も着たがらない。これは困った……。

 なので赤いマントを購入して俺が身に着け、それでキャシーの体を隠す手段でとりあえず行くことにした。

 これで免罪符は得たぞ。キャシーが下着姿なのは決して俺の趣味じゃない。彼女の思いを汲み取った結果なのだ。


 「さてと……お、あそこの宿は質も値段も良心的そうだな。行ってみるか」







 「ふかふかっす!!」

プルルンッ

 「ふぅ~落ち着くな~」

ガブガブ


 予想通り質も値段も丁度良く、部屋も一部屋空いていたのでこの宿に決めた。

 代金も部屋代だけで良いってことで安く済んだ。食事は別代金で食事スペースに行って食べる方式みたいだ。


 それにしても、こう休むための空間ってのはやっぱり精神的にも癒されるな。

 安心感とか単純に過ごし易さの面でも快適だし雰囲気が良い。



 「さてと、今日はもう疲れたから後は休み時間にしよう」

 「そーっすね。歩き疲れたっす」

 「ご苦労様、ホシコ。なんだったらマッサージでもしてやろうか?」

 「そ、そんなっ!! マスターにマッサージさせるなんて駄目っすよ」

 「前にも言ったけど、そんなにキッチリカッチリ上下関係つくらなくて良いから。ホシコには戦闘を任せたりもしたし、何かお礼しないとなって思ってたんだよ」

 「マスター……じゃ、じゃあお願い、するっす」

 「よしきた、お任せあれ。ってことで、ベッドの上でうつ伏せになって」

 「こ、こうっすか?」

 「そうそう。んじゃ、いくぞ……あ」


 と思ったがキャシーがくっ付いたままだと無理だな。


 「キャシーは少~し離れててくれるかな」

 「ギャアウッ……」

 「そんなに怖い顔で睨まないで。ちょっとだけだから」

 「グルル……」


 何とか離れてくれた。少しずつだが最低限の意思疎通はできるようになってきたかもしれない。すごく御不満のようですけど……反動でまた激しく求められそうだ。嫌じゃない。


 「では、気を取り直して。おりゃ」


モミモミ……グリグリ……


 「っん……き、気持ち良いっす……」

 「そうか、もっと良くしてやるぞ」


モミュモミュ……グリングリン……


 「あぁっ……んん……ま、マスター、激しいっす……」

 「……何か、エロいな。この服もよく見たらピッチピチで身体のラインが隅々まで分かるし卑猥だな」

 「ひ、卑猥じゃないっす。最先端技術の結晶で……んあっ……着け心地、通気性、体温調節、身体保護などにっ……優れた衣装っす……んっ」

 「あ、あぁ……分かった」







 「マスター、マッサージ上手すぎっす。肩の凝りも腰の痛みもすっかり解消したっす」

 「なに老けた発言してんだ」


 それにホシコは見た目幼女のくせして艶めかしい声を出し過ぎだ。いやらしい空間なのかと勘違いしそうになったわ。


 「ガァアッ」


ガブリ


 「き、キャシーさん、そんなに乱暴にしないで」


 案の定マッサージを終えた途端キャシーにめちゃくちゃな攻めを受けた。気持ちいい攻撃だ。







 その後、だらだらと過ごしつつ夜になったので食事をとって今はまた部屋に戻ってきたところだ。

 そろそろ風呂に入ろう。部屋に備え付けてあるので何日分ものこびり付いた汚れをしっかり落としたい。


 が、キャシーをどうするかだな……。まあ今さら躊躇することもないか。一緒に入ればいい。デュフ


 まずは服をぬぎぬぎ。キャシーちゃんも脱がせてあげますよー。お、そういえばこの下着は何か魔術的な施しがされているみたいだな。全然汚れてないし分かりやすいとこだとストッキングしか履いてないのに足元も破れたりせずに綺麗なままだ。エロいのにどこか気品も漂っている。

 ま、それは良いとして…………素晴らしい眺めだなぁ。

 全裸のキャシーを隅々まで余すことなく見ることができる。血が通っていなくて青白い肌をしているが体が綺麗だからなのか、どこか神秘的な印象を受ける。そして何より、生の女体。引きこもりキモオタニートだった俺がこんな美人の裸を拝める日が来ようとは…………感慨深いものがある。ゾンビだがこの際そんなこと関係ない。

 下着姿も十分刺激的だったが裸になるとまた違った魅力があるもんだな。


 「さあ、今から風呂に入るぞキャシー」

 「ギャアッ……」


チャポン……


 「ふぅ~。やっぱ風呂って最高の癒しだよな」


 溜まった疲れが一気に抜けていく感じがたまらん。体の芯から温まって全身がほぐされているようだ。

 しかも、美人を侍らせての入浴とはなんと贅沢なことか。転生して本当に良かった。

 俺と向かい合うように抱き着きながら首筋をガブガブ噛んだりレロレロ舐めたりしてくるキャシーのお体を撫でながらそんなことを考える。風呂のおかげでキャシーも温もりを帯びていて普段と違って何だか生々しい。これがリアルな感覚なのか。


 「十分温まったから、お次は体洗いタイムですよ」


 抱き着いたキャシーと浴槽から出て、体を洗うために石鹸を泡立てる。そして、泡を俺とキャシー両方の全身に塗りたくり…………体を擦り合わせてキレイキレイする。


 うん。これです、やってみたかったやつだ。ヌルヌルテュルテュルした感触がクセになりそうだ。

 全身に微量の刺激と心地よさが纏わりついたような感覚と、いかにも変なことをしている感がエロチックで楽しい。

 てな感じで存分に楽しんだ後、結局普通に洗った。あんなのじゃ汚れをしっかり落とせる気がしないからな。勿論キャシーの体を俺のこの自分専用だった手で堪能させてもらった。ソコもアソコもココも全部だ。俺も出世したもんだな……。


 「満足満足。あれ、キャシーさん?」

 「ガァ……」


 何かに見惚れているようなキャシーさんの視線の先をたどってみると……あ、これはマズイ。俺の下半身に宿る野獣が猛々しく唸りをあげている。キャシーさんも興味津々なご様子。


 「そこは駄目だ。ステイ、キャシー」

 「ギャウッ」

 「あっ、ちょっ……駄目だ、ああ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!!」







 何とか貞操は死守した。歯形の残る我が半身を見る俺の瞳にはさぞ哀愁が漂っていることだろう。もしも防御に補正がかかっていなかったらと想像すると色んなものが縮こまる。


 「さて、すっかり長湯しちゃったな。そろそろ出ようかキャシー」


 心なしかキャシーの表情も少し和らいでいるような気がする。癒されてくれたようで良かったよ。







 ホシコもスーラと風呂に入り、全員リラックスできたのか睡魔に襲われ同じように眠りについた。ベッドは二つで、俺とキャシー、ホシコとスーラという組み合わせだ。



 明日からも金を稼ぐために色々と動かないといけないからな、しっかり寝て疲れをとろう。




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