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第二章 四節 誓い

「まだまだ町まで距離がありそうだから、今日はこの辺で野宿かな」


そういって、野宿の準備をし始める。


木を集めて、少しの火を灯す。

たいていの動物はこうやっとけば、火を嫌い近づかない。


盗賊(とうぞく)の類は、火の明かりを目印にやってくるので、火を小さいくしとけば、見つけられない……らしい。


 *


簡単に晩御飯も済ませ、木に寄りかかり、眠ろうと目を閉じた。


しかし、今日のことが気がかりでなかなか眠れない。


何で、ゴッドハンターの支部長さんが、お姉ちゃんのことを知ってたんだろう。



「シオンさん、まだ起きてますか?」


と、ごくごく小さな声で、アレンがたずねてきた。


「何?」

小さな声で、返答を返す。


「もしよかったら……答えてください。

 弓を手放す気はないんですか?」


「ないよ。何で、そんなこと聞くの?」


「対魔武器って、強力な武器だから普段は使いませんし、それに持っているだけで、今日みたいに、狙われる率が増えてしまいます。

 シオンさんぐらい強かったら、対魔武器が必要ってわけじゃないでしょ?

 魔道関連の事件に首を突っ込まない限り、使うこともないでしょうに」


「うーん、私、自分が弱いって思ってるから、武器は強いほうが良いし、それに……」


「それに……?」


「その言い方だったら、魔道関連の事件にかかわるのだったら、必要なのでしょ?」


「……いや 確かに必要ですけど……。むしろ、なかったら危険ですでしょうけど……

 ……何で、魔道関係に、突っ込む気満々な返答なんです?

 いくら強いって言っても、危ないですよ」


「うーん、お姉ちゃんに会いたいから」


「お姉さんって、さっきのレオンとか言うのが言ってた、セオン・レイス?」

 

「うん、そう。

 お姉ちゃん、魔術師なの。

 だから、“会えるかな?”って思って」


「……ちょっと待って下さい。

 シオンさんのお姉さんでレイス姓ってことは、レナード道場の方なんでしょ?

 それが、何で魔術師をしてるんです?」


「うーん、セオンお姉ちゃん。

 道場で練習してたけど、武術より魔道に向いている人だったからね。

 本格的に勉強し始めたのが私が9歳のときだから、お姉ちゃんが14歳のときかな?

 それよりも前から、ちょくちょく魔道の勉強してたけど、教会に正式に入ったのはそれぐらい」


「なら、お姉さんとは7年近く会ってないんですか?」


「ううん、お姉ちゃんが一通り魔道を覚えて、旅に出るまでの3年半ぐらいの間、ちょこちょこと道場に顔出してくれてたから。

 お姉ちゃんが道場を出てからも、稽古(けいこ)つけてもらったこともあるよ」


「……稽古って……まさか、弓の、ですか?」


「ああ、長剣のだよ。

 小さい頃はよくあんな重いものを扱えるなぁって驚いてた」




「そういえば、道場って、小さな子供とか、いたんですか?」


「いたよ。

 昼間と夕方に分かれてきてたよ」


「え、なら、“あの日”は……

 あ……」


あの日ってのは、きっと初めてあった日の事だろう。

彼の中では、聞いてはけないことになっているらしい。

そんなことはないのに。


「毎日開いてるってわけじゃないよ。

 十日に一日ぐらいは師範クラス以上が練習に専念するために練習生は入れないの」


「そんなものなんだ?」


「うん、たいていどこの道場でもしてるよ。

 そうじゃないと、師範達の練習の時間が満足に取れないからね。

 みんなは日課が潰れないから、大変って。

 あ、けど、小さい頃は嬉しかったなぁ」


「?」


「お姉ちゃんが一日中構ってくれるから」


まだ、幼いと言っても良いほど、小さかった私にとって、“姉”という存在はそれほどまでに大きかったのだ。

いや、今でも大きい。



「そういや、さっきこの弓を売れば良いって言ってたでしょう?」


「あ、うん」


「多分、売れないと思うよ。

 だって、私以外には単なる普通の弓だから」


「……はい?」





弓の中央で光る一つの石を指し、

「この弓、というかこの魔力石が私しか使えないの。

 えーと、気合わせチューニングっていうだっけ? それをお姉ちゃんがしているの。

 『貴方(あなた)専用のお守りよ』って言われた時には、意味が全然分からなかったけどね」


気合わせチューニングしてるって……

 よっぽど、お姉さんは他人に使われたくなかったんですね」


「へぇ、そうなの?」


「そうですよ。

 一定の気にしか反応しないようにするんですからね。かなりの高位魔法です。

 他に、何か魔力込めたんでしょうか?」


「回復魔法と、簡易防御魔法がかけられてるらしいよ」


「そうなんですか。

 やっぱり、その弓調べてみたいです」

駄目ですかと、小声で聞いてくる。


ホント、アレンって、旅魔導師って言うよりは、研究者って感じ。


“やっぱり”と付いてるのは今までにも何回か同じ質問をしたから。

何遍聞かれても私の答えは

「ダメ」


「やっぱり、そうですよね」

と、項垂(うなだ)れるような声。


あー、なんか、ちょっと可哀相な気がしてきた。

けど、大切な弓なんだから簡単に触らせる訳にはいかない。弓が側にないと、怖い。


血のつながりの無い、私たち姉妹を結ぶのは、レイスの名と、この弓だけだから。





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