第一章 後編
布籠手を拾い、川を下っていくと、皆で暮らしていた“家”がある。
師範以上は、道場に護衛の依頼があるから、すぐに動けるように、この“家”ですごすようになる。
ちなみに、アレンには道場のところで、しばらく待ってもらっている。
あんまり動かれても迷ってもいけないし、この“家”のことは――道場の皆の憩いの場所だから――、秘密にしないといけないし。
護衛の依頼で、道場の中にいなかった、メンバーもいる。
そうやすやすと、教えるわけには、いかないのだ。
自分の部屋に行き、服を着替え布籠手を右手に填める。
いつでも、依頼があったときに動けるようにまとめてあるバックに手に取り、肩から掛ける。
統帥の部屋に行き、金庫に鍵を入れる。
そこにあるお金少しと、少し大きめの宝石の原石をいくつか手に取り、袋に入れる。
これだけあれば、普通に食事するだけなら、普通に二,三年ぐらいは持つ。
しかし、旅をするなら、いつ何があるか分からないから、これぐらいは必要なのだ。
それでも、金庫の中身の三分の一にも満たない。
お金は護衛の仕事とかではいるけど、そんなに――森の中だから、果物とか七草とかが取れるから――食費がかかるということはないから、たまる一方なのだ。
今、道場の外にいる皆――二.三人いる――が困らないように、金庫の隣に鍵を置く。
そうして、リビングへ向かう。
電話帳をめくり、電話をかける。
「はい、もしもし」
と、初老の男性の声がする。
「お久しぶりです。クリークト国王。
レナード道場のシオンです」
「おぅ、シオンか、無事なのだな。
いやな、ちょっと前に、道場の仕掛けが壊されたのが分かって心配してたのじゃ。
して、他には?」
「……私は、ちょっと道場から、離れた場所にいたので無事です。
しかし、他の人たちは……」
「そうか……
大変だったのぉ……
……しかし、これからどうする気か?」
「……旅にでようかと思っています。
色んな場所で、色んな人に会いたいです」
「そうか。
旅は大変だろう。
そうじゃ、ちょうどあの弓の強化材料が揃ったのじゃ」
「ほ、本当ですか!」
「わしは嘘などいわぬよ」
「なら、お願いします」
「ふむ、急いで用意をする」
「それでは、城に行かせてもらいますね。
あ、そうだ。
多分、一人、連れが居ますけど……大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃろう。
部屋はあまり余っておる」
「……そういう問題じゃない気がしますが…
とりあえず、そちらに向かわせて頂きます」
「ふむ、待っておるぞ」
受話器を置く。
そうして、玄関へいく。
短剣をはずし、少し長めの剣を代わりに差す。
短剣でもいいけど、長剣のほうが力を流せるから、使いやすいんだよね。
とりあえず、アレンのところへ戻ろう。
あんまり待たせたら、悪いし。
*
道場の前まで戻るそこにつったているアレン。
アレンの前に回り込む。
「それじゃ、いこうか」
とアレン。
「うん
あ、ちょっと行きたい場所があるんだけど、いいかな?」
「いいよ。
どこ?」
「クリークト国の王城」
「……なんで?」
「ん、あの国王の趣味が、魔具作りなんだよね〜
それで、さっき、この弓の強化をしてもらえるようにお願いしたの」
「……いや……何で、そんな人と交流があるの?
国王ってそんな簡単に合える人じゃないでしょ?」
「うーん、もともとクリートク国のお抱え道場ってやつがここだから、結構つながり自体はあるんだよ。
で、現国王が若いころ、放浪の旅をしてて、盗賊に絡まれてたところを助けたのが統帥で、それで、統帥と国王仲が良いんだよ」
「……放浪の旅?……」
「放浪の旅っていうよりは、魔術の勉強するためにお城を飛び出したって感じらしいよ。
城での勉強で、武術や魔術はせいぜい護身術程度しかやらないからって」
「良いのか? それで」
「良いんじゃないの。 じゃなきゃ、王位継がしてもらえないでしょ、きっと」
「……」
「まぁ、ずっとここにいってもしょうがないから、先にいこう。
二,三日ぐらい歩かないとクリークト城には、つかないよ。」
とりあえずは、目指せクリークト城!
――後書きというか 反省――
長すぎました。
一応旅物語の筈なんですが、旅してなくてすいません。
第二章からはきちんと旅をします。するはずです。